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福岡伸一博士のおかげで、今さら『ドリトル先生』に出会う。

今、『ドリトル先生』シリーズを読んでいる。
岩波少年文庫。対象は小学生中級以上と書いてある。
小学生の頃は、この本の存在すら知らなかった。
大人の今になって、児童書を読んでいますというつまらないお話です。

ドリトル先生は人間の医師だが、お金や人付き合いに全く興味がない。
動物が大好きで、色々な動物の言葉を話すことができる。
変人とみなされて人間の患者は寄り付かなくなり、代わりに沢山の動物が先生の診察や治療を望んで列をなす。
ドリトル先生は動物達をとても大切に扱うので、その名前は世界中の様々な種類の動物に知れ渡っており、大きな尊敬を集めている。

動物のことをもっと知るために、または動物の求めに応じて、大航海や大冒険の旅もする。
自分の損得に全く関心はなく、動物を大切にすることが最優先だ。
行く先々で先生は動物達のために行動するし、現地の動物達は憧れのドリトル先生に会えて大喜びし、先生の苦境を救うために協力を惜しまない。
ただ、お金には無頓着なので、家計を預かる家族(アヒル)はいつも大変だ。

全部で13冊あるシリーズのうちの6冊目を読み終えた。
今後は月へも旅行するらしく、展開が楽しみだ。
そして、月から帰ったドリトル先生は、その内面が少しずつ変化するらしい。
何が起こるのだろうか。

『ドリトル先生』シリーズを知ったきっかけは、生物学者の福岡伸一博士の著作を数冊読んだことだ。
バリバリの理系研究者であった福岡博士は、当時最先端だったDNA解析に没頭し、未知のDNAもいくつか発見している。

人体の設計図とも言えるDNAが明らかになれば、子供頃から追い求めてきた「生命の秘密」も分かるはず。そんな期待を抱いていた福岡博士は、ヒトのDNAの全貌が解明されても、「生命」については何も分からなかったことに衝撃を受ける。
そして、自ら理系の看板を下ろして、文系の研究者に転身した。
その思い切った決断に博士の本気度を感じる。

「生命」は部品を組み立てたメカニズムではない。
全ての「生命」は、最終的にはエントロピーの増大に押し倒されて死んでしまう。
それまでの間、「生命」は常に変化しながら絶妙なバランスを保っている。
増大するエントロピーに押し倒される前に、自らを破壊して再生する作業を連続的に行っている。
福岡博士はこれを「動的平衡」と呼んでいる。

私は福岡博士のこの考え方や捉え方がとても好きだ。
私は研究者ではないので、博士の理論を批判的に検証する必要はなく、博士のアツい語り口にただ圧倒されたのだ。

その福岡博士が子供頃から好きなのが『ドリトル先生』シリーズなのだ。
あまりにも好きで、「ドリトル先生航海記」は博士自ら翻訳本も出すほどだ。
ドリトル先生は、福岡博士の血肉となっているはずだ。

「生命とはなんだろう」

これを真剣に突き詰めようとされている福岡博士に大いに興味をそそられた。
そして、おそらくその原動力の一つとなっている『ドリトル先生』シリーズを読んでみたくなったのだ。

小学生向けの作品だから随分遅くなったが、ここで『ドリトル先生』に出会えて幸運だったとしみじみ思う。
福岡博士、ありがとうございます!

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