ベル・エポックの花束
「ベル・エポック」ってよく聞く言葉だと思いますが、これはフランス語で「良き時代」という意味です。では何が「良い」のかというと、19世紀末から第一次世界大戦の始まった1914年まで、華やかに繁栄したフランス・パリの都が「良かった」のです。
この時代は伝統的な良さと現代的な発想とが融合することで稀に見る豊かな文化を誇っていて、それは音楽の世界においても例外ではありませんでした。
特にこの時代、木管楽器やハープなどが今に近い形で完成され、それによってまさに時代に相応しい、格段に豊かな色彩を帯びた作品が数多く作り出されました。
このコンサートはその中でも選りすぐった作品を集めています。
どの作品もなかなか実演で聞く機会のない作品ばかりですが、その中でも最もレアなものは、ロラン=マニュエルの「弦楽三重奏曲」です。
そもそもロラン=マニュエルをご存知の方自体が少ないのですが、彼はかのラヴェルの弟子であり同時に親友でした。またサティとも親しく、有名なジムノペディ、第一番、第三番はドビュッシーがオーケストレーションしていますが、第二番はこのロラン=マニュエルがドビュッシーに劣らず美しくオーケストレーションしています。
そんな彼は、多くの場合、音楽評論家、音楽学者と称されますが、それとともに歴とした作曲家でした。
彼の「弦楽三重奏曲」は師匠のラヴェルに捧げられていて、曲名を知らずに聴いたらまさにラヴェルの作品と間違ってしまうかもしれません。それほど、先に述べたような木管楽器やハープなどを使わなくとも、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのみで色彩感豊かな美しい音楽を作り出しているのです。
恐らくは日本初演と思われます。今後も演奏される機会はほとんどないと思いますので、私としてはこの曲だけでも聴いていただきたいとさえ思っています。
とはいえ、他の作品もどれも甲乙つけ難い、色とりどりの美しい音楽ばかりです。
比較的演奏機会の多いサン=サーンス「幻想曲」ほもちろん、「音色と楽器の魔術師」フランセによる「スカルラッティの5つのソナタ」、明快なドビュッシーといった感もあるクラ「パンのフルート」、そして自身もハープ奏者であっただけあってこの楽器の魅力を最大限に引き出したトゥルニエの五重奏曲「組曲」。
聴き終わった時、あなたは間違いなくベル・エポックのパリの華やかな雰囲気を自らに纏っていることでしょう。そして目に映るもの全てが色鮮やかに変化しているに違いありません。
ぜひいらしてくださいね!