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十牛図「得牛」牛を捕まえるプロセス
廓庵禅師の開発された「十牛図(じゅうぎゅうず)」は、禅の教えで、悟りに至るまでを10段階のプロセスで表現したものです。
以下の10の項目から成り立っています。
尋牛(じんぎゅう)
見跡(けんせき)
見牛(けんぎゅう)
得牛(とくぎゅう)
牧牛(ぼくぎゅう)
騎牛帰家(きぎゅうきか)
忘牛存人(ぼうぎゅうぞんにん)
人牛倶忘(じんぎゅうぐぼう)
返本還源(へんぽんげんげん)
入鄽垂手(にってんすいしゅ)
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今度は牛を捕らえるプロセスです。
牛を捕まえるには、自分が綱になりきり、全身全霊を働かせます。
相手を観ながら捕まえるという波動を自分と牛に送ります。
自分と牛を一体化して、「念、定、慧」の3段階のプロセスで進めます。
・念は想いが集中した状態
・定は静まった心
・智慧は真理を映し出す心
プロセスには3つの意味があります。
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集中して、想いが呼吸になりきるようにします。
「念」によって集中します。
集中できたら、落ち着きが出てきます。
これが安定の「定」の状態です。
結合の準備をして、ヨーガでは、さらに結合を進めて「真理」、「究極的な真理」を求めます。これが智慧の「慧」の状態です。
牧人は「念、定、慧」を働かせて「得牛」したのです。
私たちに問われているのは、自分が自分と一体になるには、綱である「止、観」と綱を使って行動するプロセス「念、定、慧」を実践なさいということだと解釈したのです。
つまり「なりきって、なりきって、なりきる」行程です。
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では具体的にどのようにして「得牛」したか、説明します。
4番目の絵「得牛」は、逃げ出した牛(分離してざわついている波)をヨーガの心を使って捕まえました。
私たちは目標が大きいと比例して力が入って執着してしまいます。
牧人も同じでしたが、念じて、自分と対象(牛)そして綱と捕獲のプロセスになりきりました。
このことを、注意深く考えて、行動できるようにしたいと思います。
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牧人が牛を見つけるまで時間がかかりました。
でも本当は近くいたのではないかと思います。
ただ気づかなかっただけです。
なぜでしょう。
牧人は、自分と対象(牛)になりきることを忘れていたのです。
あるいは、その重要を知らなかったのです。
そのまま牛と対峙したら、おそらく捕まえることはできなかったと思います。
なにより見つけることすらできなかったでしょう。
元々、牛になりきっていなかったので、逃げられたのです。
だから気がついた段階で、牛の側にいたのです。
対象が欲しいと思えば思うほど、持っていないことを思い知らされ、執着が強くなるほど、どんどん離れていきます。でも、持っていると思うと、対象との差が縮まります。
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盃に注いだ酒が静まって、満月を映し込んでいる。
それを一気に飲み干す。
月になりきる
・・・・なんともお洒落な楽しみ方ですね。
妻の私になりきる。
子どもの私になりきる。
あなたの私になりきる。
生徒の先生になりきる。
・・・・・・・
なりきって、なりきって、なりきって、生きる・・・
大人なら、お洒落にまとめる力を持ちたいですね。
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