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注文の多い料理店
「自利」と「利他」は分別できないことを、世界に広めた「自利利他」は、二分化法的思考脱却の上に立っています。
二分化法的思考とは白黒思考ともいい、白か黒か、右か左か、自分かあなたか、というように両極端で判断する思考のこと。
完璧主義の裏返しと言われています。
「中道」を説くブッダの教えとは遠く、分別できない、分別しない「自利利他」にはそぐわない考え方です。
「二分化法的思考」を嫌い成功したビジネスマンの言葉をご紹介しておきます。
私は「80%の男」を自認している。スポーツでも活動でも、熟練度が80%になるまでは没頭する。そこから先に進むには取りつかれたような情熱で専門性を高めなければならないが、それは性に合わない。だから80%くらいに達すると未練もなくやめ、まったく違うなにかを始めてしまう。
──イヴォン・シュイナード(『パタゴニア』創業者)
中道を説く禅では、「無分別智」といい分別の心を一切もたない智慧を尊んでいます。
花はきれいに咲こうと思わずに咲いています。鳥も上手に鳴こうと思わず鳴いています。
なにごとも、いいことしょうとか、悪いことをしょうとか、分別を考えずにただ生きています。
二分化法的思考では、対立軸で考えますが、無分別智では、対立を嫌います。
なぜなら自我こそ元凶だと考えるからです。
グローバリゼーション、①平等化②理性化③多様化④世俗化⑤個人化の5つの社会変革すべてに「自我」つまり「自己執着心」が影響しています。
反対にSDGsの達成には、自己執着心からの自由、開放が必要になります。
「注文の多い料理店」では、経済的な損失という面でのみ動物を捉えている都会人が登場します。彼らには、犬に対する愛情の気持ちは見られない。
世界はいやでも自我を捨てる価値観、在り方をダイナミックに変革する必要に迫られています。
ダイナミックに変革するとは、執着を根本から手放すことです。執着を根本から手放すとは、日常のひとこま、ひとこまに「慈悲、慈愛」の心を植え付けることです。
そこでは人目を気にして親切をためらったとか、あるがままの気持ちを抑えたなど、固定観念から離れるライフスタイルが重要になります。
つまり利他行によって自我を強めてしまう危険、愚かさを回避するには、分別しない智慧を徹頭徹尾、使い切るしかないのです。
私のモノはあなたのモノ、あなたのモノはあなたのモノというほどの割り切りが「無分別智」を現実にします。
では、私はどうなるの?
答えは宮澤賢治の詩「雨ニモマケズ」にあります。
雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ
野原ノ松ノ林ノ䕃ノ
小サナ萱ブキノ小屋ニヰテ
東ニ病気ノコドモアレバ
行ッテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ッテソノ稲ノ束ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ
北ニケンクヮヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒデリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ
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