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十牛図#8 人牛倶忘

私たち一人ひとりが140億光年の宇宙の果てで、2億の精子の内、たったひとつの精子が卵子に選ばれた末に、37兆の細胞ネットワークを使って生きていることに覚醒しましよう。

前回7枚目の「忘牛存人(ぼうぎゅうぞんじん/ぼうぎゅうそんにん)」では牛が消えましたが、「人牛倶忘」では、うたた寝をしていた牧人も突然いなくなりました。真っ白い丸の一円だけになりました。

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あるのは、ただ空白だけ。牧人になにが起こったのでしょうか。

「人牛倶忘」の問いは、空白とはなにかです。
一緒に答えを探りましょう。

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「空一円相」の図は、よく見かけるので、有名ですよね。
「人牛倶忘」では、仏教が説く、おなじみの「空」という究極の真理に到達しました。

牛(真の自己)を牛小屋に入れて、物語は、終わったように思いますが、ここで「空一円相」になるとは、重要な意味がありそうです。

3大

自分と自分以外のすべて、宇宙と一体であるという「一人一宇宙」の意識に目覚めて、空一円相になりきることです。

空は一切は因縁によって生じたものだから実体と称すべきものがなく、「あるようでないようであるといえばあり、ないといえばない」
円相は、始まりも終わりもなく角に引っ掛かる事もない円の流れ続ける動きを描いていて、捉われのない心、執着から解放された心を表わしています。

偽りの自分も、真の自分も、新しい自分もない、それらはどこをどういじくってっも、実体としてあるものではなく、すべては自身が心の鏡に投影したものにすぎない。

もし、「人牛倶忘」で、まどろんでいた牧人が「おれは真の自己になりきった」と自慢気に語れば、その途端に牛を見失い、いちばん最初の絵である「尋牛」の図に戻ってしまいます。

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仏道をならふというふは、自己をならふなり。
自己をならふといふは、自己をわするるなり。
自己をわするるといふは、万法に証せらるるなり。
万法に証せらるるといふは、自己の身心および他己の身心をして脱落せしむるなり。

「仏道をならう」ことは、「自己を究明する」ことです。
ここでいう「自己」は真の自分です。
そのためには、「自己を忘れれ」ばいい。
この「自己」とは、自意識的自我です。
「自己を忘れる」ためには、「万法に証せられれ」ばいい。

「万法に証せられる」ためには、「自己の身心及び他己の身心を脱落させれれ」ばいい、ということになります。
「身心脱落」の「脱」は解脱の意味で、すべての束縛から解放された空の状態です。
「落」は酒落(しゃらく)の意味で、物事に頓着せず、さっぱり、わだかまりの無いことです。従って、「身心脱落」とは、身も心も一切の束縛から解き放たれた、わだかまりのない空の境地のことです。

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仏教では「あらゆる存在(自分・事物・自然・宇宙)は存在しない」と説きます。

釈尊は、「神が創り給うた」とするキリストの教えすら否定したのです。

空とは、言葉で表現できない摩訶不思議なものを意味します。

その真意は、「空になれ」「空を悟れ」という釈尊の励ましだと受け取れば(少なくとも私の場合)合点がいきます。

仏道では言葉、知識ではなく、実践を尊びます。

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マズローの欲求五段階説を引き合いに出すまでもなく、私たちは、なんごとも努力の末に上位の欲求が達成できると考えます。このような考えに束縛されると上位にたどり着けずに我慢します。このような発想はやめましょう。いきなり最高位の願望が達成できてはいけなのでしょうか?「階段があるようでもあり、ないようでもある」と解き放ってみませんか?

悪いことばかりではない、苦しい時、辛い時にも、良いことがあるはずだ。
良いことに気づくことができれば、苦しいことも、辛いことも「苦痛」が消えていきます。つまり苦痛は幻だったと知ることができます。

悩みは空っぽだったと理解できます。足るを知ることで不安が吹き飛びます。
空っぽ、足るを知ることだけでは、知識です。
「人牛倶忘」没頭することで実践に変わります。
辛い時に実践できるのは、努力でなるからではなく、すでになっているからです。
すでになっていることに気づくために、「空一円相」を悟るのです。大切なのは知ることではなく実践。つまり智慧として知って価値あるのです、

すべては縁があって生起します。

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私はおにぎり禅を毎日しています。

「ごはんがおいしい」と感じるはじまりは、数粒の米から始まり、舌、神経、脳、60兆のの細胞が縁(ネットワーク)とつながっています。

さらにお米には、お米になるために、農家の方々、水、太陽、大地、地球の縁があります。

お米がごはんになるには、火、ごはんに変わる場所、大地、地球、星、140億光年の宇宙の果てという全宇宙との縁でつながっています。

すごいですね、ごはん一粒が、一粒を食べる自分が、こんなにも膨大な縁でつながっているのです。

私たち一人ひとりが140億光年の宇宙の果てで、2億の精子の内、たったひとつの精子が卵子に選ばれた末に、37兆の細胞ネットワークを使って生きていることに覚醒しましよう。

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