嵐の中を突き進む力 #私とランサーズ
2019年12月16日、ランサーズが東証マザーズに上場した。ランサーズの皆さん、秋好さん、上場、本当におめでとうございます。
元社員として夢に見ていた日、そして新たな航海の始まりとなる日に、私自身も、ランサーズ時代の思い出を振り返ってみようと思う。
#経営戦略がない ?!
2015年、私がランサーズに入社して一番最初に戸惑ったのが「経営戦略がない」ということだった(この言葉だけはかなり語弊があるので以下補足する)。
新卒から外資のPR代理店で仕事をしていた私。ロレアルやケロッグなど、いわゆる海外の大手企業のPR戦略に携わらせてもらっていた。そしてそのような企業には必ず、グローバルの年間経営戦略とPR戦略があり、私の仕事はそれを見ながら国内の動きを考えることだった。
つまり一年の航海図や役割表が用意されているという環境だった。
しかし、私が入社したランサーズはまだ社員数30名ぐらいのベンチャー企業。
海外のグローバル企業のように、年間の経営戦略というものがしっかりと用意されているはずもない。だからこそ、動き方としては、次半年の外的要因を見ながら、「ここいくんだー、おー!」と嵐の中をみんなで突っ込むというもの。
しかし、地図のない環境での動き方を知らなかった27歳の私は、
「なぜ突っ込めるのか?」
「年間の経営戦略はどこなのか?」
「周りから隠されているのではないのか?」
そんな被害妄想を抱えては、うんうんと悩みながら、近くの神社でコーヒーを飲んでいた。
今振り返ると笑い話だが、IT業界の技術進化のスピードに慣れない私は、
当時、周りを疑うことで自分を守っていた。
今の私なら絶対一緒に働きたくないーと叫びたくなるほど、めんどくさいやつだった。
つよい想いはあるのに、動けない。空回りばかり。
もっと器用に立ち回れなかったものかと思うが、27歳の私は、いっぱいいっぱいだった。そんなを半年続けながら、私は、外資系企業からベンチャー業界への通過儀礼を経験させてもらった。
#圧倒的な実力不足 、数字を作れない私
2014年に、消滅可能性都市で有名な増田レポートが発表された。そしてその翌年2015年から、色々な自治体やメディアで「地域に仕事がない」「でも、ITがあれば仕事は創れる」そんなことを言われ始めた。
世の中の期待に応えるように、ランサーズは、2015年から2018年まで23地域と提携して新しい働き方の講座を開催してきた。地方創生事業を通じて、そして私自身6,000人以上の受講生に出会う機会をもらった。
しかしこの3年間は、ランサーズ自体がパブリックカンパニーになるために、事業数値との連動を求められた時期でもあった。
地域課題を解決したいという熱意しかない私と、数字を伴う事業成長に迫られる経営陣。そんな中で私は、数字もなく熱意だけでよくぶつかりにいっていた。
地域貢献と数字を創る事業化が両立できなければ、想いがあっても地域事業はランサーズとしてできない。
世の中に必要とされている事業がある。
それは、ランサーズのミッションとも一致している。
しかし、それを実現する事業を私自身が創ることができない。
圧倒的な実力不足に、悩みもがき続けた時間だった。
#めんどくさいやつ 、カフェで号泣
「新しい働き方を地方から」目指している方向性は間違っていないと自分は確信しているのに、ゴール地点が見えない。事業に向けて何から始めたらいいかがわからない。
色々な方面から「地方創生は事業にならない」「地域からお金は取れない」「蓑口は事業を創ったことがない」と言われつづけた。
誰も教えてくれないし、社内の説得もうまく行かない。
別の案件で仲間の誤解を生むメールが飛んできたこともあり、なにかの糸が切れて、ホテルのカフェラウンジでひとり号泣したことがある。
そんなときに、なぜか秋好さんから電話がかかってきた。
色々話しをしたけど、その内容はほとんど覚えていない。
でも、一言だけ覚えているのは
「みのぐち、悔しーよな。でも、その場から進むには、成長するしかないから」
という秋好さんの言葉。
私は、それを「うぅーーーっ」と唸りながら聞いていた。
その時、カフェで泣きながら周りへの文句や、
できない自分を慰めている自身は、決してかっこよいものではなかった。
鏡で見ても、ひどい顔だった。
もう今後一切、こんな状況になるのは嫌だと思った。
だからこそ、ただこの日決めたのは、
誰かに教えてもらうのを待つのではなく。
誰よりも動いて、学んで、失敗しても、前に進もうということ。
嵐の中を航海する乗組員の役割は、
自分自身が小さなボートでも、嵐の中を航海できる人になることなんだと。
冷めたコーヒーを飲み干しながら、腹をくくったのを覚えている。
(この日から、いろいろな方に助けてもらいながら進んだ3年!その話は卒業エントリーにあるので割愛しますm(_ _)m)
#悔しさは 、前進のための糧にする
今、経済、企業組織、個人のキャリアにいたるまで、ありとあらゆるものを取り巻く環境が複雑さを増し、将来の予測が困難な時代がきたと言われている(VUCA時代)。
(あくまでも私がかつて仕事をしていた外資と比較してという意味だが)今、思うと年間戦略がないベンチャー企業は、ずっとそんな嵐の中を航海しているようなものだったのだ。
”新しい”未来をつくるというのは、未知の中を進みつづけるということ。
その道半で周りがついてきてくれない、協力してくれない境遇になることも多々ある。
しかし、そんな悔しさや逆境も、
笑顔で飲み込んで、推進の糧にすることでしか嵐の中は進めない。
不満を言っている時間なんてない。
そんなことを、私はランサーズで教えてもらった。
#上場の日に思うこと
私は上場の日、ランサーズの社員ではなかった。鐘を鳴らす戦友たちを見ながら、嬉しい想いと、少し切ない想いが同時にこみ上げてきた。
私以外にも、上場までの航海半ばで船を降りる決断をした戦友も少なくない。言葉にはしないけど、きっと彼らも同じ想いなのではと思っている。
しかし、私自身は過去の決断を後悔していない。「価値が育つ環境をつくる」というライフミッションに向け前に前に進むのみと腹をくくれている。
どんな状況でも、ランサーズで過ごした時間は、今でも私にとって宝物だ。卒業を決めた後も、次の挑戦を応援してくれた社内のメンバーや、ランサーさんには本当に感謝している。
これから新しい船出を始めるランサーズ。
株式上場をきっかけに、キャピタル(資本)だけでなく、フリーランスの想いや希望などのソーシャル・キャピタル(つながり資本)も集め、進んでいってほしい。
途中で船を降りると決意した卒業生はいろいろな場所で活躍している。
間違いなく、ランサーズの卒業生やランサーさんは、彼らの新しい航海をそれぞれがいる場所から応援するはずだ。
「世界で誰よりもフリーランスという新しい働き方のことを本気で考えている集団」として、更に素敵な未来を見せてくれることを、楽しみにしている。
そして、私自身身、ランサーズ卒業生として胸を張れるよう。
彼らと美味しいお酒を飲みながら語り合えるよう。
今いる場所で次の未来を創っていきたいと思う。
チームランサーズ、そして秋好さん、上場。
本当におめでとう!
仕事の受発注、専門人材増やす ランサーズが上場:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53417870W9A211C1TJ1000/