花咲かじいさん。
いつだったか・・・
旅先で山の中を走るバスに酔ってしまい
休憩に、カフェに立ち寄った
気分が悪くて、ずっと下を向いたまま席に座り
コーヒーを注文した
しばらくして、おじいさんがドリップしたコーヒーを運んできた
「はい、どうぞ。」
その一言と同時に、コーヒーのいい香り・・・
その香りにつられて、顔を上げたら
おじいさんがニッコリ笑顔で窓の外を指さした
そこには、満開の桜で薄桃色に染まった山があった
あまりにキレイなその景色に
気分の悪さなんて吹き飛んだ
おじいさんは、カウンターに戻り
また、コーヒーを淹れている
私はただ黙って、コーヒーの香りと桜を楽しんだ
旅から戻り、街の中でカフェに入る
疲れた時はいつもコーヒーを頼む
疲れたなーと、うつむいていたら
コーヒーの香りが漂ってくる
ふと、顔を上げる
もちろん、そこは町中のカフェだ
おじいさんはいない
でも
私の頭の中には、あの山が見えるのだ
おじいさんの笑顔と、満開の桜の山が
コーヒーの香りは
いつどこにいても、桜の花を運んでくれる
あのおじいさんは、花咲かじいさんだ
コーヒーの香りで、いつどこにだって
花を咲かせる