理解しておきたい『海スイム』と『プールスイム』の違い
こんにちは!
競泳出身のトライアスロンコーチ、MihoCです!Vol.1の自己紹介でも書きましたが、”競泳選手”として約20年のキャリアを積んできました。しかも、専門種目は自由形50m/100m・・・典型的なスプリンター!
プールで25秒間に全てを出し切る!そんな競技で戦って来た人魚さんは陸に上がり、なんとトライアスロンに転向。
その流動的な水との順応方法や、潮の流れに逆らう事なく自分が最低限の負荷で進むための推進層(進む時に通る水の深さ)をコントロールする能力を養って来ました。
舞台がプールと海でも違うし、同じ海で泳ぐ中でも、OWS(オープンウォータースイム)と泳いだ後にバイクパートが待っているトライアスロンスイムも泳ぎ方が変わる。
ライフセービング競技にも関わって来た経験がありながらも、トライアスロンのスイムには深く深く考え、メソッドを築き上げて来ました。
のべ5000人以上のトライアスリートのデータと、自らの手記で残したスイムフォームのフィードバックにより生まれた”MihoCメソッド”を、この『MihoCの読むトライアスロンレッスン』に記していきたいと思います。
毎回スイムレッスン後に動画解析を行いTRIMING FAMILYにフィードバックして来た手記。ノートの数は数えきれない。
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プールと海の違いの理解を深めるために、水深5mのプール環境で海を想定し、テクニックにコミットしたレッスンも行っています。
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1.『海スイム』と『プールスイム』の違い
①1軸と2軸
まず、大きな違いとして、軸の作り方が変わって来ます。この軸作り、今一度ご自身のスイムフォームを思い返してみてくださいね!
競泳の舞台はプール。競泳競技は、無風・静水・一定の水温室温・そして一人1コース与えられ、いつも同じ環境が与えられます。
一方のトライアスロンスイムはコースロープもない大海原。波も潮の流れもあり、おまけにバトルもあります。(ここで言うバトルは、大人数が一斉に泳ぐことによりぶつかってしまったりする”ボディコンタクト”を意味しており、実際に戦うバトルではありません!トライアスロン はそんなスポーツじゃないのよ♪)
舞台が変われば、その環境に順応する必要があります。
ズバリ!プールは1軸!海は2軸です!
プールは波やバトルがないので、外部から受ける影響が少なく、1軸でどんなにローリングを高めたとしてもひっくり返ることなく姿勢を維持することが出来ます。スイムにおける1軸とは、泳ぐ姿勢で鼻とヘソを結んだ延長線上が軸となり、つまり軸は1本と言うことです。
プールでは、頭のテッペンからお尻の穴に向かって1本の串を刺し、焼き鳥のようになります。焼き鳥屋の大将は、串を回しながら焼き加減を調整し、美味しく仕上げますよね!くるくる。
よって、プールでは1軸の「焼き鳥泳法」と言えます。**←ここ、テスト出まーす! **
プールには波もバトルもない、だから1軸で良いのです。
一方の海はどうでしょうか。
上記でも記した通り、海には波もバトルも潮の流れもあり、常に不安定な中を泳がなければなりません。なので、海で「焼き鳥泳法」をすると、姿勢を支えることが出来ずにひっくり返ってしまいます。
よって、海では2軸で泳ぎます。つまり「蒲焼き泳法」です。鰻屋さんの大将は、2本の串をわざわざひっくり返して両面焼きますよね!2軸にすることで、波やバトルでも姿勢を支えられる様になります。
2軸の幅は、「顔幅」です。
「え?肩幅じゃないの?」そう思う人もいるかもしれません。実際に両手を肩幅に上げてみてください。肩幅と思って腕を伸ばすと、指先は外を向いていることが多いです。「顔幅2軸」で腕を伸ばすと、あら不思議♪ちょうど肩幅くらいになっているはずです。鏡の前で確認してやってみてね!
スイムにおける指先は、舵取りの役割をしています。指先が向いている方向に、体は進んでいきます。指先が内側や外側を向いていると蛇行の原因になる可能性があります。海で最短距離を進むためにも、指先の方向に気を付けようねっ!
顔幅2軸をみんなでかくに〜ん♫(実際のMihoCレッスン)
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2.『海スイム』と『プールスイム』の違い
②初動負荷とクレッシェンド
水泳教室に通っている方なら一度はコーチに言われたことがあるであろうこの言葉「○○さん、キャッチです!キャッチ!」。
この言葉をコーチから頂いたら、「キャッチを頑張ったら進むのかな、頑張れば頑張る程加速するのかな」そう思いますよね!
競泳ならキャッチで加速します。というより、キャッチから水を掻き始めなければ加速が間に合わないし、タッチまでに力を出し切れないでしょう。しっかりキャッチで初動負荷を高めて水を掻く(以後ストローク)必要があります。
しかし、トライアスロンはスイムで”出し切ってはいけない”のです。
キャッチは三角筋や胸筋を多く使います。泳ぎが慣れない方は僧帽筋(あ〜肩凝った〜って揉み解すところ)も使ってしまうかもしれません。
スイムでこの肩胸周辺の筋肉を使うと、バイクパートに首や肩の力みを残してしまい、IRONMANなどロングディスタンスであれば、肩凝りからくる頭痛でバイクパートの後半は苦しむかもしれません。ランでは、三角筋や僧帽筋はただのお荷物です。(悲しい現実…)
さらに、キャッチ動作を行う区間(スイム姿勢で腕が前に伸びているところから、肘を固定して掻き始め、肘90度くらいまで)は、自分の身体(胴体)から離れているところで行う作業であり、海ではいろんな方向から波や潮の流れが入り乱れてい流ため、自分の身体から離れたところでは安易に力を使いたくありません。
つまり「キャッチは100%加速に繋がるとは限らない」ということが挙げられます。100%加速につながらないところで一生懸命頑張っても、体力を消耗してしまいますよね。
では、トライアスロンスイムはどの様に水を掻けば良いのでしょうか。
それを表しているのが「クレッシェンド」です。
※crescendo (cresc.) − クレッシェンド − だんだん強く
音楽の授業で習ったことがあるかな?
「だんだん強く掻く」これが海でのストロークのポイントです。
つまりキャッチは抜いてよくて、キャッチが終わってからだんだん強く後方に”ボールを投げる様に”水を送ります。
投げたいボールが手から離れる瞬間「加速」は、反対の手が前に伸びているタイミング「伸びれば伸びるほど胸板が横を向いてローリングが深まり低抵抗となる」と同時なので、「加速」と「低抵抗」のタイミングを合わせれば更に加速が生まれます。
※前に伸びれば伸びるほどローリングが深まる→また他の回で詳しく解説するね!
もし、スイムクラスで「Hard!」(速く泳ぐ)というメニューがあったらどの様に加速を生むかというと、クレッシェンドをキープしたまま、後ろに投げるボールの球速を速めることで加速をコントロールします。
このクレッシェンドでのストロークは、三角筋や胸筋ではなく、もっと大きな広背筋という背中の筋肉を使います。
この筋肉、私生活であまり使わないので、「3・2・1・力入れて!」てことが難しいかもしれません。普段使っていない筋肉は、神経が行き届いていないので筋肉のON/OFFがしにくい。なので、いざ水中で広背筋を使いたい、と言う時のために陸上で広背筋を見付け、神経をたくさん行き届かせて感覚を育てておきましょう!
ちなみに、広背筋の見付け方→立位で「気を付け!」をして、手の平と中指を太腿の体側にピタッと貼り付ける。思いっ切り脇の下をギューっと締めながら、締めながら、締めながら、中指を下に下に下に伸ばしていくと広背筋が見付かると思います!
見付けたいのは広背筋上部(赤枠の中)
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トライアスロンスイムのストロークのポイントは、『スイムパートで消耗し切らないこと』『温存すること』そして『バイクランに影響を残さないこと』です!
初動で負荷を高めず、クレッシェンドで後方に水を送れるように広背筋を使いこなそうね!
3.最後に・・・
TRIMING FAMILYの海のレッスンでは、「海を聴く時間」を必ず最初と最後に行っています。
「泳力はあるのに海が怖い」
「泳力も泳速もあるのに、海で人の水しぶきを見ると過呼吸になる」
「トラウマがある」
・・・たくさん練習しているトライアスリートでも、悩みは一人一人違う。
そんな海への恐怖心や緊張感は、「海を聴く時間」で心を落ち着かせ高揚を沈めます。
YOGAでいう「シャバアーサナ」と言ったところでしょうか。
TRIMING FAMILYで手を繋いで円を描き、仲間とウェットスーツを信じて、空を仰ぎ、力を抜いて海の一部になる。そして海の音を聴き、海に感謝する。
仲間と繋がることで、恐怖心を分け合い、海に浮かぶ心地良さも分け合えます。
大切なのは、海に立ち向かうのではなく、海に順応すること。
※一人ではやらないでくださいね!流されてしまいます!
TRIMING代表
トライアスロンコーチ
MihoC
※MihoCの『読むトライアスロンレッスン』スイスイ水曜日に毎週配信です♩
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