レイマー、ブルーと直島の箱【国立新美術館 テート美術館展】
9月3日、開幕前から楽しみにしていた国立新美術館「テート美術館展 光」鑑賞。
新美はいつ行ってもため息が出るほどかっこいい。今回は初めて夜間開館の新美へ。昼間は光が差し込むガラスに、夜は光が映ってる。閉室した展示室、エスカレーターまで、ずっと見ていられそう、このままずっとぼーっとしてたいなと思った。
建物のことはさておき。テート美術館展。
「光」をテーマにターナーやコンスタブルから、印象派、現代の作家まで、200年を巡る創作の軌跡を辿る展覧会。
来てみて分かったのはやっぱり近代、現代すき!ってこと。マーク・ロスコの抽象画やリヒターのアブストラクトペインティング、やっぱり心が持ってかれそうになる。
終盤は怒涛のインスタレーション尽くし。
その中の一つ。
暗い入口を超えた先に出会った「レイマー、ブルー」。光と空間を題材にに作品を制作しているジェームズ・タレルの作品。
この部屋に入った時、空気が冷たく感じて、青の光の中に吸い込まれそうになった。
この世界にわたしだけしか居ないような感覚。
頭の中がスカッとして、ただ空間に身を任せるような感覚。漂うような感覚。
同時にわたしの脳内にある建物が浮かんできた。
昔行ったことがあるような、夢で見た気もするような、なんだか懐かしい建物。何処にあるかは分からないけど、濃い茶の木で貼られた箱のような建物。入口は細くて暗い。建物の横には座れる高さの砂利道のようなものがある。
あの建物、なんだったんだろう。
どこにあって、いつ行ったんだろう。
何度も考えたし、記憶を辿ったけど、何も思い出せなかった。なんなんやあれは。
全く思い出せない。でも夢ではない気がする。お兄ちゃんと弟がいた気がする。親はいた?いなかった気もするし、いた気もするし。んーなんかやっぱり夢かも知らん。
記憶の奥にあるその箱が、直島の「南寺」だと分かったのは次の日ジェームズ・タレルの作品群を調べていたときのこと。
あの箱、「南寺」はジェームズ・タレルと安藤忠雄のアート作品。私の記憶にあった暗い回廊を通り抜けた先の闇で待っていると、タレルの手掛けたぼんやりとした光が見えてくる。
「南寺」の写真をみつけたとき、それがわたしの記憶にある箱と同じものだということは直感的に分かった。
わたしはここに行った。
探していた箱は確実に「南寺」だ。
南寺は香川県の直島にある。
約10年前、中学生の頃、わたしは被災プログラムで数週間香川にホームステイをしていた。お兄ちゃんと弟、3人で香川のお家に泊まり、川へ行き、山へ行き、スイカを食べ、うどんをハシゴし、それはそれは夏らしい夏を過ごした。
その時に連れて行って貰った場所だった。南寺は覚えていなかったけれど、大竹伸朗が手掛けた銭湯、「I♡湯」で服を脱いだ時、乳首がめちゃくちゃ荒れていた記憶はある(急に最悪)。わたしは直島に確実に行っていた。
南寺の中で何を見たかは全く記憶にない。
どんな作品だったのか、
どんな光を見たのか、分からない。
でも国立新美術館でジェームズ・タレルの「レイマー、ブルー」を見た時、急にあの箱、「南寺」の記憶が降ってきた。
ちょっと変で怖い。
なぜかわたしの頭の中に残っていた微かな記憶。今の好きと昔の体験が繋がる不思議な感覚。アートって言い方嫌いだけど、アートって、面白い。これだから人生っておもろいのかもしれん。
テート美術館展、東京展は終了してしまいましたが、わたしが大好き好きな大阪中之島美術館で10月26日から大阪展が始まります。
ぜひレイマー、ブルーを見てみてください。