生きることがちょっと苦手な人のためのヒーロー「大丈夫マン」
そもそも「それ」が得意な人がいるのか疑問ではある。いつもうまくやっている同僚や、すぐに恋人ができる友達、怪しげなネットサロンで語る成功者にも、それぞれに悩みがあり生きることがしんどいと感じる時があるのだろう。それをなんとなく頭では理解しつつも、やっぱり自分は本当に「生きることが苦手だなぁ」と感じてしまうことが最近多い。じゃあ、いっそのこと、やめちゃえば…というわけにもいかない。仕事や学校や人間関係ならば、思いきって逃げ出すこともできる。でも、生きることを、おいそれとやめるわけにはいかない。
でも、安心してほしい。辛くてどうしようもなく、何がなんだかわからない時に、「大丈夫」と言ってくれるヒーローが誕生した。その名も「大丈夫マン」。
(出典:藤岡拓太郎の公式サイト)
藤岡拓太郎の処女作「藤岡拓太郎作品集 夏がとまらない」(2017・ナナロク社)。それを読んだ時の自分のひとことメモにはこう書いてある。
これは西原理恵子の「ぼくんち」のように、生きることがちょっと苦手な人のためのバイブルになるかもしれない
事実、「それ」が苦手な僕は何度も何度も手に取った。何か生きるヒントが隠されているわけでもなく、ただただ愉快な登場人物たちの存在に軽くなれる。それだけ。いや、それが生きるヒントと言えるかもしれないが。2作目となる作品集「大丈夫マン」でも基本は変わらない。気の合う友達・仲間たちの姿がただただ愉快に描かれている。
「おいしい」を「うれしい」というおっさん
もらったプレゼントをすぐゆでる人
キャベツだけ買った人
収録された作品のタイトルだけでも愉快だ。愉快であること。これはとても大切だ。コロナ禍の現在、はっきりとわかる。
表題作であり、表紙にもなっている「大丈夫マン」は、藤岡拓太郎の作品ではそれでもシリアスな方かもしれない。いや、シリアスすぎるのだが、読後は不思議と軽くなる。大丈夫マンのユニークな姿や最後のキラーフレーズのせいだろうか。
「だいじょーぶだー」の声は遠く聞こえなくなり、誰もが不安で怖くて震えていて、大丈夫だよと言われたい今。あなたはどうやって自分を保っているだろうか? どうやって希望を持ち続けているだろうか?そんなことに思いを馳せる時、脳裏をよぎるのは大丈夫マンの姿だ。あなたを100%肯定して、あなたの苦しみをすべて受け止めてくれて、「つらかったね。でも大丈夫」と言ってくれるヒーロー。そんな大丈夫マンの姿は、あなたの身近な誰かに似ていやしないだろうか? そんな視点でもう一度「大丈夫マン」を読んでみて欲しい。愉快さが倍増する。と、同時に愛おしくも感じたり。
そして考えてみてほしい。あなたは励まされているだけではないことを。きっと、あなたも誰かにとっての大丈夫マンなのだ。
できるだけ、愉快に生きよう。