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あんな大人になりたいと思った日

こんにちは。白草優です。
ほぼ日の塾では、スガネガスという名前を使っていました。第3期生にあたります。「パリピを目指したぼっちの話」という記事を書きました。おかげで塾生のみなさんからは、「パリピさん」と呼ばれています。

第3期の募集当時、私は高校生でした。

「ほぼ日」創刊と同じ、1998年生まれ。
ちょうど、高校を卒業するタイミング。

高校を卒業するタイミング、と言えば聞こえがいいですが、大学受験もラストスパートの時期。センター試験を終え、息付く暇も無いまま、第一志望の入試を控えていました。

入試の翌日が締切日で、受験会場をあとにしてすぐ、第3期の応募に着手したのを覚えています。(残念ながら、その第一志望の大学には不合格でした)

80人クラスでも、同じテーブルでご飯を食べた人に、隣の席になった人に、よく聞かれました。

 

「なんでほぼ日?若いのによく応募したよね」
「高校生!?ほぼ日って、知ってるの?」

 

単純に、小学生の頃からほぼ日の読者だっただけなのです。

初めて知ったのが小学校1年生の時。毎日のように、学校から帰ってきて「ほぼ日」を開いて。好きなコンテンツは数え切れないほどあります。

ええと、「モギがカボチャをくりぬく60分」シリーズも好きだし、「連ドラチェック」も欠かさず見るし、「ネコがでますよ。」「ブタフィーヌさん」も大好きでした。「ほぼ-1 GP」「AB事件」は傑作です。すみません、なんか10年も前のコンテンツの話ばかりで。当時のコンテンツ、Flash Player使っているよ。もうすぐサポートが終わるよ。懐かしすぎるよ。

ほぼ日と関わることは、小学生の頃からの、私のひとつの夢でもありました。

大人が本気でゲームをして社内で北酒場を歌うような会社が、私にとってはおもしろくて仕方がなかったのです。

それから、ものを書くということも好きでした。作文を書くことは中学受験(これも残念な結果に終わっていますが)で鍛え上げられ、特に苦もなく文章を書けるように。それどころか、書くことが楽しくなっていました。

***

「ほぼ日の塾」には第1期の募集から目をつけていたのですが、時間の調整がどうしてもつかないということで、暫し応募を見送り。やっとの思いで初めて応募した第3期、念願の参加が叶いました。80人クラスです。初めてほぼ日のオフィスに、足を踏み入れます。

少し話を逸らしますが、私はちょっとどころか、かなりこじらせた子供でした。だった、ではなく、今でもそういうところがあります。同世代は子供っぽい、大人の言うことは信用ならない。どいつもこいつも上辺ばかり。もう「私は人と違う」くらいに思うところがあって。

大人が嫌いでした。

私にとって大人とは、理不尽で、自己中心的で、大量生産されるロボットと同じでした。

ところがどっこい。「ほぼ日の塾」で出会った大人たちは、講師のみなさんも、塾生も含めて、全員が「真剣」で「正直」だったのです。

あまりの真剣さに圧倒され、それが痛くて痛くてたまりませんでした。今まで私は、ひとを、ものを、どれだけばかにして生きてきただろうか。こんなに書くことに、やさしくなることに、おもしろくなることに、真剣な大人たちがいる。正直に生きている大人たちがいる。

やさしく、つよく、おもしろく。

正直、最初こそ萎縮しました。私の居ていい場所ではない。年端も行かない、それもこじらせた18歳が、安易に足を踏み入れていい場所ではない。そもそもこの塾を開催するにあたって、ほぼ日側が想定していた受講者は20~30代でしょう。そこに、突然高校生がぽんと飛び込んできた。

たぶんほぼ日は、そんな私を「おもしろがって」くれたのだと思います。なんか応募してきた高校生がいるぞ、と。

真剣にならなければ、私はこの場所で埋もれてしまう。念願叶って来た場所で、埋もれて帰るなんてできない。なら、尖った大人が嫌いな自分も、この場で萎縮してしまった自分も、捨て去らなければいけない。

これが意外と、簡単でした。私はほぼ日のコンテンツが大好きだったので、「ほぼ日の雰囲気」を掴むのが、少しだけ楽だったのかもしれません。

結果あまりにも懐かしい、小ネタの中の小ネタを引っ張り出したので、永田さんに引かれました。「そんな何年も前のコンテンツのことを、よく覚えてるね‥‥」すみません、とてもおもしろかったので。

真剣になると、もちろん真剣に答えてくれます。そこからは一気に、塾が心地のいい空間になりました。このときどんな質問をしたか、どんな答えが返ってきたか。昨日の事のように、ひとつひとつ鮮明に覚えています。

そういえば塾の数日後、私がしたあるひとつの質問の「答え」を、永田さんがツイートされていました。せっかくなので、引用します。

この言葉に、「ああ、やられた」と思いました。

永田さんが故意的に作った落とし穴に、こうも簡単にハマっていたのか、と。しかもハマっていることに、今の今まで気付かなかった痛恨のミス。

だまされた!と同時に、こんなにおもしろいことをやっていたなんて!と悔しくなりました。

 

「このコンテンツをおもしろいと思ってくれたなら、もう、想定通りですよ。僕が掘った落とし穴に、ハマってくれたわけですから」

 

永田さんは、この落とし穴にまんまと引っかかった人(=私)を、目の前で見たのです。そんなの絶対に、おもしろいに決まっている。そんなにおもしろいことを、どうして今の今まで黙っていたのか。

ずるい、悔しい。でも、楽しそう。
人にコンテンツを提供して。おもしろがってもらえて。でも、一番おもしろくなっているのは自分だなんて。そんなにおもしろいこと、他にある?

80人クラスを終えて、帰宅して。すぐに「実践編に参加したい」という旨を送信しました。意外なほど、それはすんなりと書き上がってしまいました。それくらい、80人クラスに興奮していたのです。

***

この時、初めて大人に憧れたと思います。

真剣な大人に、正直な大人に。
そして、心の底から何かをおもしろがれる大人に。
なれるかな、なれるといいな。

高校の卒業式を終えたその足で、40人クラスの初日に向かいました。朝から何も食べていなかったので、式で貰った紅白饅頭をむさぼって。はじめての課題をもらいました。

私の課題に対する評価は、それはそれは辛辣でした。

当然と言えば当然のことなのですが、私が10代だからという理由の甘さは一切ありません。もちろん、全員が平等です。どれだけライター経験が長い人だろうが、どれだけ歳を重ねていようが、塾ではみんな同じ、塾生なのです。

この塾は、「そんなの自分がよくわかってるよ!」ということまで、なんの遠慮もなく言ってきます。

でも、「そんなの自分がよくわかってるよ!」ということだから、言ってくるんでしょう。わかっているのに直せなかった。上手く表現できなかった。遠慮がないということは、「正直」でもあります。そこに嘘偽りはない、ほんとうのこと。

40人の塾生全員に、それぞれに、まっすぐ向き合ってくれる塾です。こちらが真剣になれば、真剣にボールを返してくれます。正直な評価を言われるのは、お互いが真剣に取り組んでいたからでしょう。

あの場にいた、全員が「真剣」でした。
そして、「正直」でした。

今まで思いのままに書いてきた私は、書くことにはじめて「真剣」になりました。「正直」であろうと、何度も自分に問いただしました。

結局最後には、「もう少し正直になれたでしょ?」と、言われてしまったんですけれどね。文章に棘が残っていたことを、見抜かれてしまいました。正直になりきれなかった自分が、悔しかったなぁ。

***

さて、11月になりました。

あの時は高校生だった私は、今月20歳を迎えます。あともう少しです。友達が少ないので、誰か祝ってください。

特に変わりそうなことも、ありません。

これを読んでいる方の大半が、きっと20歳以上であると推測します。20歳になりました、といっても、大して何も変わりませんよね。そんなもんですよね。ちょっとお酒が飲めるようになったとか、そのくらいです。年金どうのこうのの書類が、やってきてしまいました。もらえるんでしょうか、年金。

大嫌いな、大人になりました。

それを少し許容してしまった私が、私は嫌いです。

でも1年半前に憧れた、真剣で正直な大人になれているかな。
なれていると、いいな。
そうしたら、私は、私を少しは好きになれる、ような。

それでもまだ、少し尖っていたい部分もあって。
そんな自分も、嫌いじゃ、ないです。

「ほぼ日の塾」、第5期の募集が開始されています。私の口から大きな声で「ぜひ挑戦してください!」とは、ごめんなさい、言えません。それくらいこの塾は人を選ぶと思いました。とくに、「真剣」であることと「正直」であることに対しては。

私個人が、真剣に、また正直に話すとするならば‥‥。
あの場所に高校生の時に足を踏み入れたことは、間違いではなかったと思います。それだけ私にとって、ひとつの転機になっています。

迷いが無ければ、ぜひ挑戦してみてください。

迷っているから、#ほぼ日の塾とわたし を読んでいるんだよ!という方、存分に迷いましょう。まだちょっとだけ、迷う時間はあります。でも迷いすぎて締切を逃し、後悔をすることだけはしないでくださいね。

 

私と同じ世代の、あるいは、それよりもっと若い方へ。

大人になってしまった、私の言葉でごめんなさい。
私たちの見ている世界は本当に狭くて、例えばそれは学校のクラスだったり、部活動の中だったり。その世界がすべてに見えてしまう。私も、それがすべてでした。

でも世の中はもっと広くて、「真剣」で「正直」な大人がいるようです。もしもよかったら、そんな大人に出会ってみてください。別にそれは、「ほぼ日の塾」でなくとも出会えると思います。ただ、私は「ほぼ日の塾」で出会ったよ、というひとつの体験談ととらえてください。きっとあなたの人生は、もっともっと、おもしろくなるはずです。

現に私の人生は、少しずつですが、おもしろくなり始めています。

***

長くなりましたが、これにて。

「ほぼ日の塾」第5期が、「真剣」で「正直」な塾になりますように。

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