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当たり前なんてないよねとつくづく思う、バンコク3日目
早朝のまだ暗い中、Grabのバイクに乗って最寄りのMRT駅へ向かう。
通りには結構人がいた。彼らから発せられる空気感は、明らかに昨晩からずっとそこにいる者のそれだった。中学生くらいの子供の集団もいて、数人が殴り合い取っ組み合いになっていた。日本で言うヤンキーか?それとも、良い子はうちに帰る文化ではないのか?何はともあれバイクで良かった…。
MRTでBang Khun non駅まで行き、そこからトンブリー駅まで歩いた。もう空は薄明るくなっていた。ギラギラ都会は急に終わり、くたびれた街の風景になる。線路脇にはゴミ山がぽつぽつと見られた。
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―そういえば昨日、食べ終わったアイスキャンデーの棒を持っていたら、「食べ終わったんでしょ?」とガイドさんに強引に道端に捨てさせられた。びっくりした。これは、文化の違いと言っていいのか?このゴミ山も納得できる。
トンブリー駅も観光客でにぎわっていた。ドキドキしながら綱渡り英語で切符を購入して、やっと冒険のスタートを切った。
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定刻よりやや遅れて、列車がホームに入ってきた。わくわくでそのレトロ列車に乗りこむ。車内は4人掛けのボックス席になっており、座席指定はない。窓際の席にさっと座る。ほぼ満員という人気ぶりで、いざ発進!
窓は全開、進行方向を向いて座るわたし。強風が顔をぶってくる。景色を楽しみにしていたのに、コンタクトが乾いて目を開けていられない。仕方ない。リュックのチャック部分にしっかり手をかけて、寝た。
はっと目が覚めて時計を見ると、目的駅の到着予定時間を30分近く過ぎていた。ああやってしまった…!慌ててGoogleマップに助けを求める。いまどこだいまどこだ…しかしまだ目的地までの距離の2/3ほどしか進んでいなかった。目を疑った。逆に遅すぎやろ!と心の中でつっこみ、にやける顔を覆った。電車が定刻通りでない、という外国文化に救われることもあるのだ。
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クウェー川鉄橋は、第二次世界大戦中に日本軍によって建設されたそうだ。このためにかり出された連合国軍捕虜や現地の人々の多くが、当時の劣悪な環境と過酷な労働により犠牲になってしまったという。
そんな場所に日本人が行って大丈夫だろうかと、不安に思わなくもなかった。嫌悪されないだろうかと。同時に、行くべきだとも思った。
日本軍が建てた慰霊碑に、手を合わせに行った。入口にいた管理人らしきおばあちゃんに手招きされて近寄ってみると、机にノートがあり、そこに日本人の名前がずらっと書かれていた。みんな同じような気持ちでここを訪れたのだろうか。わたしも名を連ねた。その横に寄付金ボックスがあったが、意外にも「ああ、それは別にいいよ」という素振りだった。
青空を背景にそびえる慰霊碑に向かって、タイの繁栄を祈った。帰りにおばあちゃんに「コープクン」と言うと、にっこり微笑んでくれた。
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第2次世界大戦博物館は、カンチャナブリーの起業家によって設立された私設博物館らしい。入口こそwarを感じるが、中には戦争あんま関係なくない?という展示物が多々あった。さらに、矢印に沿って進めと言われたのを守って進むも、途中で消えて、次行くべき場所が分からなくなった。つくづく、わたしは真面目な日本人頭だなと思う。世界はこんなに適当なのだ(良い意味で)。
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日本人この野郎めという雰囲気がないと分かると、鉄橋の上から見る景色も、岸から見る鉄橋の風景も、のんびり穏やかな気持ちで眺められた。
屋台で買ったバナナミルクを飲みながら、駅周辺を散歩して過ごした。
本当は、列車でここからナムトック駅まで行く間の景色も見たかったのだが、それはまたの機会に。
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帰りの列車もやはり定刻には来なかった。まさかもう出発したってことないよな?”定刻通りでない文化”に、早いパターンなんてないよな?トンブリー駅まで帰れる列車はその1本しかないので、少し胸がざわついた。
結局早いパターンなどなく、列車は現れた。最後尾の車両に乗り、今度は進行方向と逆向きに座った。数人のタイ人と車掌さんしかいなかった。車掌さんがまわってきたので、お金を払う。紳士的な微笑みに、安全な復路を確信した。
車窓で切り取られた景色をずっと眺めていた。明らかに日本とは違う土地、違う空気。それをリアルに感じているのに、写真かあるいは絵画でも見ているようだった。わたしは、タイにいるけれどタイに含まれることのない傍観者なのだ。
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バンコクに戻ると、街の喧騒にグヮンと脳みそが起こされた。さっきのカンチャナブリー旅は夢だったのかと思うほどだ。しかし体はちゃんと砂っぽくて、タイムマシンで冒険でもしてきたような気分になったのであった。