紫波町の夜に溶け込む——Bar「vivid」とフレンチコネクション
紫波町に越してきてから、ふと一人で飲みに行きたくなった夜があった。そんな時に見つけたのが、紫波町のバー「vivid」だ。
昔から好きなカクテルがある。フレンチコネクション——ブランデーとアマレットが織りなす、甘くて奥深い味わいの一杯だ。このカクテルが紫波町にあるバーで飲めるなんて、それだけでこの町での生活が少し豊かになった気がした。
ところで、「フレンチコネクション」という名前は、1971年に公開されたアメリカ映画『フレンチ・コネクション』から取られている。映画は、ニューヨーク市警察の刑事が麻薬密輸組織を追うストーリーで、リアルで緊張感のある演出が高く評価された。この映画の名を冠したカクテルが誕生した背景には、ブランデーの持つ洗練された風味と、アマレットの甘く危険な誘惑のコントラストが、映画の持つ緊張感やドラマ性とどこか重なるからかもしれない。
初めて訪れた「vivid」は、落ち着いた雰囲気の中にも、温かみのある場所だった。一人旅、一人飲み、一人での行動が好きな僕にとって、こういう店はとても居心地がいい。「フレンチコネクション、ありますか?」と尋ねると、マスターは静かに頷き、手際よくグラスに注いでくれた。その動作に迷いはなく、長年の経験が滲み出ている。
マスターは明らかに僕よりも人生経験が豊富な人だった。何十年も経営してきた秘訣や、紫波町でバーを続けることの意味など、いろいろな話を聞かせてもらった。落ち着いた語り口の中にも、バーに対する愛情がしっかりと感じられる。
ふと気づくと、隣の席に座っていた男性が、僕の話に静かに耳を傾けていた。その人は紫波町生まれ、紫波町在住の方で、程よく酔いながらも、僕の話の聞き役に回ってくれる大人な人だった。こういう偶然の出会いも、バーの楽しみの一つだと思う。
店内を見渡すと、女性客が三人、友達同士で楽しそうに過ごしている。賑やかすぎず、でも静かすぎず、それぞれの時間を心地よく過ごせる空間。まさに大人のための隠れ家のような場所だった。
一人でも気兼ねなく訪れることができる、落ち着いた雰囲気のバー「vivid」。紫波町にも、こんな素敵な場所があることを知れて嬉しい。ここは、定期的に絶対通うお店になるだろう。