見出し画像

必要なのは、きっと「場所」ではない

私はフリーランスである。4年目になるが、事務所はまだない。

「オフィスは必要か」について考える

つまり、緊急事態宣言以前から自宅で仕事することの多い人間だった。
そんな私が「オフィスはいらない」というのは、ごく簡単なことに思われるかもしれない。

しかし、フリーランスとはいえ、継続的にお仕事させてもらうことも多く、チームの一員として呼んでもらうこともある。フリーランスは外部の人間と割り切って考えられている企業も多い中、チームの一員=仲間として接してもらえるのは、とてもありがたいことだ。

自分をチームのうちのひとりと考える場合、そう簡単に「オフィスはいらない」とは言いにくい。

(ほぼ)フルリモートで働くこと

中でも長く続いているのが、シェアボスダフトクラフト

いずれも小規模なチームで、シェアボスは私以外のメンバーも全員非正社員のみで構成されているが、ダフトクラフトは正社員とフリーランスの混合チームである。

リアルな場で顔を突き合わせて仕事をするということはほぼなく、週に一度のオンラインミーティング以外はチャットでコミュニケーションをしている。イベントごとはコロナ以降、実施が難しくなってしまい、実際に会うのはごく稀になった。

ダフトクラフトには正社員メンバーもいるが、フリーランスの私たちと働く時間や給与面での違いはあれど、基本的に扱いの差はなく、日々の出社義務ももちろんない。

なぜなら、創業当初からオフィスが存在していないのだ。

オフィスレス組織

ダフトクラフトの創業メンバーはみな代表の元同僚で信頼関係ができていたこともあるし、エンジニアの多い小規模チームなので、もともとリモートワークに向いているところはあるだろう。

緊急事態宣言解除後は、VRやARを用いたxRコンテンツを開発しているので、最近も実際に最新機器をテストするために集まったりする程度だが、コロナ以前は月一回程度プロジェクトのキックオフ時に貸し会議室を借りて集まったり、気分転換に公園で青空ミーティングをしたりすることもあった。

コロナによって会う頻度はさらに減ったが、仕事への影響はさほどない。

いちばん変わったこといえば、東京と長野の2拠点生活をしていたメンバーが長野へ完全移住したことである。おいそれと会うことができなくなってしまったわけだが、こんな状況下においては、近くに住んでいるメンバーとてそうは変わらないのだった。

大きな企業にリモートワークは無理なのか

人によっては希薄な関係に見えるかもしれないが、現在のメンバーは全員ある程度の年齢で経験もあり、必要なコミニュケーションを取ることはできている。10人に満たない小規模チームなので、リモートワークでも何をやっているかをお互いに把握しやすいという面あるのかもしれないが。

お互いの名前がきちんとわかる程度の小規模組織以外はそうもいかないのではないかという思いもあったが、コロナ禍でリモートワークを始めた企業への取材をいくつか行ってみると、業種や職種、ネットワーク環境などにより差はあるが、オフィスへ行かずにリモートで仕事することへの賛成の声も思った以上に多く聞かれた。中には、オフィス縮小を考えている企業もあった。

なぜ、オフィスが必要か

考えてみれば、自分がある程度の規模の企業でオフィスワーカーをしていた頃、一度話しかけられてしまうと自分の仕事がおざなりになってしまうため、集中したいときにはパソコンを持って昼食に出たまま、外で仕事していたことも多かった。必ずしも、席にいるから仕事が捗るわけではない。

また、毎日オフィスに通っていたにもかかわらず、どこか外部の人間のような疎外感を感じていたこともあったし、隣の席の人が突然会社に来なくなった経験もあった。オフィスがあるからコミュニケーションが上手くいくとも限らないのだ。

オフィスなしが無理だという理由の大半は、システムの問題なのではないだろうか。個人情報の持ち出しがNGなので出社しないといけないなどという話は、取材でも友人の話などでもよく聞かれた。

そのあたりの問題は、いずれクラウドが全て解決してくれるように思う。もちろん、すぐできないという声が挙がるのもわかっているが。テクノロジーがそういったものを解決してくれた先にある、オフィスが必要な理由ってなんだろうか。

今まさにダフトクラフトのエンジニアのメンバーたちが、仕事におけるオンラインとオフラインでの差異による問題を解決したいと動いているのを見ていると、それを考えずにはいられない。

必要なのは、きっと「場所」ではない

私はリアルで人と会って話すのが好きだし、人が集まった際に雑談が生まれることの重要性も理解している。だが、きっと必要なのは場所ではないのだ。

先日、大学の同級生とオンライン飲み会をした際、ひとりがこう言った。

「緊急事態宣言解除以降、子どもは保育園に預けることができ、夫は出勤しているので、私ひとり在宅で仕事できてのびのびしているよ。でも、通勤はしたいかもしれない。社会の一員であると感じられる気がするから。出社はしたくないんだけど」

人はさまざまな要因で、自分の居場所や存在意義を感じるものだ。

働く者にとって必要なのは、物理的な「場所」ではなく、心理的な「居場所」なのではないか。私はそう考えている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?