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予想外の事故から永久歯を守る方法 ~欠けた歯~



歯の破折の原因と治療方法


先日、運転中にヒヤッとする経験をしました。石の破片が飛んできて、車のフロントガラスに小さなひびが入ったのです。大きな事故につながらなかったことを幸いに思い、大したことないと軽視しましたが、細かいひび割れは時間が経つにつれてどんどん大きくなっていきました。結局、高額な費用を払ってガラス全体を交換することになりました。

このように、私たちは予期せぬ事故に直面することがあります。道を歩いていて転んだり、思わぬ衝撃を受けたりすることもあります。そして、口元をぶつけると永久歯が欠けたり失われたりする場合もあります。一度損傷を受けると、自然に再生されることのない私たちの歯。今回は、歯が欠ける理由と治療法についてお伝えします。

歯が欠ける理由は?


前述の通り、歯は外傷によって欠けることがあります。分かりやすく整理してみます。

外部の衝撃による原因

  • 予期せぬ衝突や交通事故。

  • 山登りや階段の上り下り中に足を滑らせて転倒した場合。

  • 激しいスポーツ活動中に衝撃で歯が欠ける場合。

  • 食事中に硬い食べ物を誤って噛んだり、スプーンなどを誤って噛んだ場合など

不適切な生活習慣による原因

  • 睡眠中に強く歯ぎしりをする場合(歯の破折、歯の摩耗)。

  • 強い顎関節の圧力で歯が破折する場合。

  • 不正咬合によって上下の歯の噛み合わせが悪い場合など

欠けてしまった歯

欠けたりひび割れた歯は、早期に適切な診断と治療を受けることが重要です。もし欠けた歯を放置すると、隙間から細菌が侵入し、歯ぐきの骨が溶けて膿や腫れを引き起こす症状が現れることがあります。その結果、最終的には抜歯が必要になる場合もあります。些細なひび割れでも永久歯を失う可能性があるのです。永久歯が抜けると新たな歯は生えてこないのと同様に、欠けた歯も自然には修復されません。そのため、適切な治療を行うことで日常生活に不便が生じることを防ぐ必要があります。

それでは、具体的な事例を通して、欠けた歯の治療法をご紹介します。

実症例で見る欠けた歯の治療方法


実際に予期せぬ事故で歯が欠け、不便を訴えている方の事例です。1か月前、ボウリングをしていて転倒し、歯が欠けたとのこと。欠けただけでなく、全体的に歯がしみる症状もあり、歯科治療を検討しているとのことです。

欠けた歯/上顎

「欠けた歯」で悩む患者の診断結果

この患者の場合、左前歯の角が欠けていることが確認されました。そして、
前歯2本と左前歯の隣の歯、合計3本の歯にひびが入っています。

右前歯の隣の歯は矮小歯で、他の歯に比べてサイズが小さい状態でした。また、歯列が整っておらず、歯が回転している状態です。さらに、歯と歯ぐきの形状も全体的に左右対称ではありませんでした。

治療方法①レジン治療


軽度の破折の場合、レジンで欠けた部分を修復することが可能です。歯科で広く使用されるレジン治療は、欠けた歯を修復するための治療です。型を取って外部で補修物を作成して接着する方法ではなく、歯に直接修復する方法で、短時間で治療が完了し、費用も経済的です。

しかし、材料の特性上、時間が経つと歯と修復されたレジンの間に微細な隙間が生じる可能性があり、この隙間に食べ物が詰まったり、細菌が繁殖して虫歯が発生することがあります。また、歯の摩耗に弱いというデメリットがあり、レジン部分が変色したり脱落する可能性があるため、数年以内に再治療が必要となることがあります。

欠けた歯(レジン治療)

治療方法②クラウン治療


歯が広範囲で欠けたり損傷した場合、歯全体を覆うクラウン治療を検討することができます。
歯が欠けて神経にも影響を与えている場合、温度変化に伴い歯の痛みやしみる症状を感じることがあります。これは、歯の損傷が歯髄組織(神経)にまで広がり、神経が損傷している状態です。この場合は、痛みや炎症の原因となる歯髄を除去する根管治療(神経治療)を行った後、クラウンで修復する必要があります。

クラウン治療では、補綴物を装着するスペースを確保するために歯を削る量が多くなる場合があります。一度削られた歯は再生することができないため、この点を考慮して治療を選択する必要があります。

上段:欠けた歯(クラウン治療前)
下段:欠けた歯(クラウン治療後)

治療方法③ミニッシュでの治療


ミニッシュは、不要な歯の切削をせず、歯に最も近い物性の材料を使用して、自然な歯一本一本の形や特性に合わせ、問題のある歯と歯ぐきを回復させる治療法です。

この患者の場合、前歯が欠けて見た目が良くないだけでなく、ひび割れによる歯の損傷保護や、歯ぐきと歯の形の対称性の回復、しみる症状の改善を希望されていました。そのため、ミニッシュを選択しました。

ミニッシュ治療過程

1.歯肉形成術


上段:歯肉形成前
下段:歯肉形成後

まず、左右の歯肉ラインの非対称性を調整しました。また、歯と歯ぐきの間に細菌が繁殖する基盤となる歯周ポケットを除去し、歯周病の原因を取り除きました。これと同時に、左右の歯肉ラインを整え、歯ぐきと歯の長さを対称的でバランスの取れた状態に改善しました。

2.ミニッシュでの治療

上段:ミニッシュ治療前
下段:ミニッシュ治療後

ミニッシュ治療の前後を比較すると、明らかに改善された歯の状態をご覧いただけます。

まず、外傷で欠けていた左前歯の破損部分をミニッシュで補填し、歯のひび割れがこれ以上進行しないように覆い保護しました。また、右隣にあった回転した矮小歯については、正常な範囲の歯の大きさに整え、歯列もまっすぐに改善しました。

さらに、損傷した歯を回復・保護することで、しみる症状が発生しないように治療を行いました。欠けた部分の修復と歯の健康維持を目的としたミニッシュ治療により、審美的にも美しい口元を実現することができました。

最後に


私たちが天然歯を最大限守ろうとする理由は何でしょうか?それは、一度生えた永久歯を一生使わなければならないからです。その名前も「永久歯」、つまり「永遠に残る歯」という意味です。一度損傷すると再び生えてはこないため、歯が損傷する前に自分の歯を大切にし、健康的に管理することが最も重要です。

忙しい日々の中でも、定期的な口腔ケアを通じて歯科治療の負担を減らし、健康な歯を維持されることを願っています。