「正解するカド」は『正解』していたんじゃないか?(前編) 義経DNAは語る・・・
巷であまり聞かないアニメ「正解するカド」・・・
2017年オンエアのTVアニメシリーズ「正解するカド」。
Amazonプライムで見ることができマス。
巷で、このアニメが話題になっているのを、私は聞いたことがありません。
そして、この作品のAmazonでのレビューを見たら激カラ!笑
そのカラいレビュー内容で多いのは、ヒトコトで書けば、
『おしい!』 ということでした。
実はわたくしも、最初(2017年5月)に観たときの感想が、その多くの激カラレビューと同じだったのです。だから、その激カラ評価をする人の氣持ちはよく解るのです。
激カラ評価が多いのは、前半すごく面白いのが原因
で、なんでこんなに多く激カラレビューが書き込まれているのか。
最初、面白いんですよ、この「正解するカド」という作品。
全14話のシリーズ。途中、総集編の回が1話あるので、実質13話。
前半は、いいんです。面白い!
レビューによっては、より細かく、「9話が分岐点になったな」と、書いてますね。
「もしかして、すごいアニメが出てきたんじゃないか!? 出会ったんじゃないか?! 名作予感!!!」って感じで。私も、特に前半の6話くらいまでは超ワクワクで観たんです!
その期待が大きかったゆえの反動でね。後半が期待を超えなかったことによって、「脚本家5分で書いたのか?」とか「もったいない作品」とか。そういう評価・感想が出てきたのだろうと考えています。
だから、後半に対する激しいダメ出しが出るほどに、前半は面白いってことです。まだ観ていない方は、前半の何話かだけでも、まずは観てみるべきです。特に、すでにAmazonプライムに加入している人は!
「正解するカド」Amazonプライム
だってですね。観て、そんなに面白くなかったら、作品の評価なんか書かないですよね、人って。
つまらなかったらただ通り過ぎていくだけで、話題にもしない。
しかしですよ、あれだけの激カラの酷評が上がっているということは、何か持ってる作品なんですよ! 絶対に。
義経DNAの発動・・・
それでですね。
あまりに、悪く書いている人が多いから、
「え、そんなにダメだったっけ?」
って、わたくし思ってしまって・・・。
3年前に観た作品で、ちょっと記憶も薄れかけていましたし。
なんと言いますか、日本人の遺伝子? DNAに組み込まれる、かの、『判官贔屓(ほうがんびいき)』の発動。
義経DNA、義経遺伝子とでも言いますかね・・・
それっぽいものが発動したらしくて。
『ちょっと、誰様がレビュー書いてるのか知らないけど、そこまで言われなきゃいけないほどの作品だったかよ!』という、軽い憤り。自分もほぼ同じ感想を抱いていたのにね。笑
そんなこんなで、もう一度、垂涎の前半何話かだけでも観てみることにしたんです。ちょうど3年ぶりに。
結局最後まで観た
わたくし、結局最後まで観ちゃいました。
総集編の6.5話を除いて、全13話。ほぼ、一挙観。
観直してみるとですね・・・
「いや、これはこれで、ツボを押さえていて・・・」
『いいん作品なんじゃないか?!』
と、初観の時より、今かなり評価が上がっています。
そこで、この作品・・・。
その名に恥じる、『正解しなかった作品』としてのレビューが多いこの『正解するカド』という作品を、もう一度見直してみてよ! という応援の気持ちで、この記事を書いております。
「正解するカド」はここがイイ! ネタバレもします。
まずは、「正解するカド」がどんな作品なのか、あまり内容に触れないようにしつつと思ったんですが、でもやっぱりネタバレしながら、以下で少しストーリー展開をご紹介します。
0話の地上げエピソードからして、もう、イイ!
・「正カド」のすごいところ<その1>は、シリーズの冒頭、0話と題されたお話。これからして、もう、イイ!(話数はAmazonプライムのものを用いています)
日本が誇る外務省の交渉官、ハードネゴシエーター、本作の主人公:真道幸路朗(しんどうこうじろう)の見せる人間臭い側面を描いたエピソード。
最近の流行りでいうならば、「下町ロケット」みたいな感じかな。貧しい語彙で一言で書くと、人情モノのエピソードなんです。(すみません、下町ロケットはほとんど見てません。作品ジャンルとして同じかな風かなと)
この0話、ハードなSF作品シリーズ「正カド」の冒頭としてはものすごく効果的で素晴らしいと思います。こんな下町人情ものからスタートして、ゴリゴリハードSFに突入していくとは! その意外性! アカデミー賞を受賞した映画「パラサイト」より10倍のまさかです。
この0話ですでにもう、わたくしは、引き込まれました。
0話のここに注目!(ネタバレます)
0話の「人情もの」はどんな内容かというと・・・
(って、なんでネタバラシするかというと、このエピソード自体もかなりいい脚本だと思うからです。花のない、渋いジジイ達の渋めなエピソードなんですが、その渋ジジたちを丹念に描いているので、好感が持てるのです)
有名交渉官:真道幸路朗が出向先の総務省から外務省に戻る、勤務空白の1ヶ月。その人事移動の合間を縫って、内閣府の次官から名指しで仕事のオファーがくるのですが、それがいわば「地上げ」の仕事とでも言いましょうか。
業績不振の町工場に好条件で立ち退いてもらって、公共施設の用地を確保するという案件なんですが。
この仕事をオファーした、内閣府の五十嵐次官・・・これがどう見ても悪役系なんですが。このちょっと癪に触るおっさんを、真道が助けちゃう。100%助けちゃうんじゃなくて、300%くらい助けちゃうことになる話なんです。
地上げ案件を、日本国に数千億円規模の新事業をもたらすプロジェクトに変えてしまうんです真道は。隙間の1ヶ月で経済効果数千億のプロジェクトを生み出しちゃう格好良さもあるんですが、一番のポイントは、真道が、この立ち退きに関わる全ての人の、心の奥底の部分を見抜いて・・・特に、枯れかけたロートルたちの心の奥底を悟って、動いていたんだなってわかるところに、もう、わたくし=愛されて半世紀以上になった視聴者のおっさんなどは、こう、射抜かれちゃう感じでして。ズキュンなんですよ。
もちろん、ここで、人間:真道幸路朗がしっかり描かれるのが、そのあとの物語の重要な内的伏線にもなっているわけですし、この下町的エピソードで、視聴者はこの主人公に惚れるわけでして。非常に効果的な0話で、素晴らしい脚本です、はい。
長くなっちゃったので、続きは別記事へ! つづく・・・
人情ドラマを満喫させた、0話。
この後、SFなんだけど、社会派な展開に突入します。
すべてのSFのテーマは、「人類」です。(高千穂遥 談)
1話以降、視聴者は、人類とは、我々とは・・・我々の作る社会とは、を考えながら物語に引き込まれます。
続編はこちらで公開中
3DCGについて
本作は、のちに作られたという0話こそ手描き絵ですが、本編は3DCGメインで作られています。
3DCGのメリットは、デッサンが狂わないこと。絵が安定するわけですね。アニメというのは、たくさんの人がそれぞれに描きますから、上手い・下手の差が出て、絵がばらつくわけです。3DCGのモデルを使うと、そのバラつきは回避できる。
一方で、アニメーターの力量によって120%、150%のシーンが出来上がるという可能性も放棄する事になります。
比較的、静かに進行する、静と動で言えば、静な作品である「正カド」にはマッチした描画手法だと、考えられます。
でも、ちょっと感情の針が触れるシーンを作るのは、3DCGはまだ不得手です・・・という注釈をつけて、この記事は終わります。
感謝