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鳥のテフロン中毒について
最近Twitterで、テフロン中毒について聞かれたので少しだけまとめてみようと思います。
まず、テフロンってなんぞや、ということなんですが、いわゆる焦げ付きにくいフライパン、などに使用されているフッ素樹脂の一つで「ポリテトラフルオロエチレン」という舌噛みそうな樹脂を製品化したものです。ちなみにテフロンはデュポン社の商品名です。
一概に焦げ付きにくいフライパンが全部テフロン加工なのかというとそうではないので、この辺りの説明は今日は省きますが、今回はそのテフロンによる中毒について。
テフロン中毒とは
テフロン中毒とは、わかりやすくいうと、コーティングなどに使用されているテフロンが260度以上を超える高温(一説には200度)になるとテフロンが分解されガスが発生するため、それによって中毒を起こすというもの。
通常料理で使用する場合、油を使っても200度くらいが限界ですが、空焚きをして温め続けると260度くらい行くそうで、ここまで行くとテフロンが分解されてしまい、ガスが発生して人間にも有毒になってしまいます。つまり通常使用している分には人体には問題はほとんどないと言えるでしょう。
ですが、鳥さんはその限りではありません。それはなぜかというと、哺乳類と鳥類の呼吸方法が大きく違うからです。
呼吸方法の違い
まずは哺乳類つまり私たち人間の呼吸について知りましょう。まず大きく深呼吸してみてください、はい吸って!!
今空気をたくさん吸い込みましたね?その空気はどこに行くかというと肺に流れていきます。そこで肺はガス交換をします。ガス交換をすることで人体を動かすのに必要な酸素を体内に取り込み、不要になった二酸化炭素が肺に出てきます。
はい、吐いて!!今出てきたのが二酸化炭素が多く含まれた空気です。これは肺自体がポンプのように動いて膨らんだりしぼんだりすることで呼吸ができます。スーハースーハー・・・肺が動いているのが感じられます?なんとなく感じられましたね。
じゃあ鳥さんはどうなんか、というと、鳥の肺は動きません。なんてびっくり、まずそこから違う!人の肺は袋のようになっていて空気を溜め込み、ポンプになって吐き出せますが、鳥の肺は基本管のようなものになっているので、その場にたまりません。じゃあどうするのかというと、「気嚢(きのう)」という臓器がついているんです。
気嚢は肺の前後についています。吸った空気を肺でガス交換して、後部気嚢に溜め込みます。そしてこの気嚢がポンプのようになっていて吐くときに空気を肺に押し戻してまたガス交換します。その後また吸い込みで肺でガス交換した空気が前部気嚢に行くことで前部気嚢から体外へ押し戻されて吐き出されます。
まぁ早い話が吸っても吐いても酸素が取り込めるっていうすごい機能がついてるんですよ、気嚢だけに。そして気嚢はなんと9つ(違う種類もいるけど)もあります。要はたくさん空気ためこめるんです。それはもう貯められるところがあるならたくさん吸いますよね。
なんでこうなったかっていうと、鳥さんて飛ぶでしょ、それも高い空を。山登りしたことある人なんかはわかると思うんですけど、高いところって酸素が薄いでしょ?酸素薄いところで飛ぶなんて運動したら普通は酸欠になります、これがいわゆる高山病です。
でも鳥さんは高いところ飛ばなきゃいけない、薄い酸素でもがっつり運動しなきゃいけない、ってことで少ない酸素もいっぱい取り込めるように進化した結果こういう便利な気嚢の機能がつきました。
テフロン中毒と呼吸方法の関係
で、これとテフロン中毒どう関係があるのかっていうと、たくさん空気を吸い込める=毒ガスであってもたくさん吸い込めるんです。
「炭鉱のカナリア」ってご存知ですか?これは、何かの危険が迫る前兆を意味する言葉ですが、この言葉の由来は、炭鉱は昔、火事や爆発のような事故が起こりやすい場所でした。爆弾使いますからね。だから一酸化炭素中毒の危険があったんです。事故があったとき、「人を送りたいけど、もしかしたら一酸化炭素中毒が起こるかも!そうだ、ガスに敏感なカナリアが意識なくなったら危険ってことでカナリア連れて行こう」ってなわけでカナリアをガス検知器にしていた時代があったわけです。
ちなみにすごい大昔のことではなくて、20数年前には、「サリン事件」の時もカナリアは使われています。あの時も見えないガスが充満していて人が捜査で侵入する際にガス検知として使われていたわけです。まぁ流石に現在では多分もっと違う方法が取られるでしょうけど。
というわけで、テフロン中毒の話に戻りますが、鳥さんは哺乳類よりも中毒に敏感な訳です。なので人間にとっては無害なガス量でも敏感に反応してしまい、テフロン加工のフライパンの空焚きで別の部屋にいた鳥さんが全滅した、なんていう事例もあるわけですね。
テフロン中毒の症状と予防
ちなみにどんな症状が出るかというと、強い光を眩しく感じる羞明や、開口呼吸、呼吸促迫、咳、ふらつき、喀血、ぐったりするなどが見られたのちに死亡してしまいます。多くの場合は中毒症状が出てから数十分で。
なので、そもそも調理中はよく換気をする事、鳥に限らず人間や他の動物に害が出ることがあるので高温空焚きをしないこと(火事の原因にもなります)、調理する部屋に動物を入れないこと、鳥のいる家庭ではテフロン加工の使用を避けること、などが予防に繋がると思います。
テフロン中毒だけではなく、調理中の事故というのは意外と多いものなので、調理中に動物を部屋に入れないというのは、みなさんできれば気をつけていただきたいですね。
解剖学的な話からいうと結構端折ってしまったのですが、大まかにわかりやすく説明するとこんな感じです。少しはご理解いただけましたでしょうか?