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亡き父が教えてくれたこと

前回、母について書いたので、父についても書いておこうと思います。
私の父は自衛官でした。

うろ覚えなんですが、確か父は8人きょうだいの4番目か5番目で、長男ではなかったので家を継ぐ立場になかったため、高校を卒業してすぐ、発足したばかりの陸上自衛隊(当時の警察予備隊)に自らすすんで入隊しました。

戦後まだ間もない頃のことで、朝鮮半島では朝鮮戦争が勃発した年です。

当時、自衛隊に入隊するということは、戦場に行く可能性が極めて高いということを意味します。それはもう、戦場への派遣の可能性がリアルにあった時代です。

とはいえ、創設時の自衛隊は、陸軍士官学校出身者の入隊を認めていなかったので、実際には、経験不足で即戦力はなかったらしいですが。

父は人並みの愛国心はあったようですが、別にとりわけ右傾化していたわけではありません。

逸話というほどのことではないですが、安保闘争があった昭和45年、私達は家族で自衛隊の官舎(団地みたいなの)に住んでいました。

実は私は姉が二人いるんですが、この葉隠3人姉妹がですね(二人の姉は、当時それぞれ 7歳と5歳、私は3歳)、テレビで見た安保反対運動のデモをまねて、

「あんぽ、はんたーい!、あんぽ、はんたーい!」と叫びつつ、鍋やヤカンを叩きながら、夕飯時に自衛隊官舎の中庭をねり歩いたそうです。

アホや…。

当然、官舎中の他の自衛隊員とその家族らの注目をいっせいに浴びたわけで(幸い私は記憶にない)、母はものすごく恥ずかしかったそうです。そりゃそうでしょう。

が、一方、私の父は、私達のデモ行進をみて、「めっちゃウケてた」(私の母談)らしいです。

父は子煩悩な人だったので、私たちの無邪気な行動を、たぶん笑ってみていたんだろうと思います。

自衛隊をめぐる論争

ところで、自衛隊って、違憲なんですかね。
現行の日本国憲法に照らし合わせると、あきらかに違憲でしょうね。

だって、自衛隊って、軍隊だし。
軍隊以外のなにものでもないし。

英語だと、Self-Defense Forces とわざわざ表記することはまれで、普通に Japanese Army って「日本軍」扱いだし。

でも、自衛隊が違憲だとして、だったら解体するんでしょうか。先進7カ国の他の国はみんな軍事力もってますよ。

ひょっとして、自衛隊をなくして代わりにアメリカに守ってもらおうとか思ってる? えーっと、まさかとは思うけど、現アメリカ大統領(トランプ)に?

まぁ、その辺の議論は、日本国民の皆さんにお任せするとして。

その仕事を選んだ動機は何か

ひとつ明確にしておきたいのは、私は何も、ここで自衛隊擁護論を展開しようとしているわけではありません。

実際、私は父の仕事が嫌いでした。私も若かりし頃は、世間一般レベルの知識しかないリベラル「もどき」でしたから。

また、父は海外駐屯が多く不在がちで、その上、父の浮気や何やかやで母を泣かせてばかりいたこともあって、私は、父にたいして憎しみと嫌悪感しか持っていませんでした。

ですが、父も私もそれぞれ歳をとって、10年以上の絶縁状態を経て和解したあと、父に「なぜその職業を選んだのか」と訊ねたことがあります。

父の答えは、
「誰かがしないといけないことだから。ならば自分が、と思って」

私は父の答えを聞いて驚きました。職業人として、私は父に完敗している、そう感じた瞬間でした。

正直、今でも私は、仕事で「なんで私がこんなこと、こんな苦労をしないといけないのか」と感じることのほうが多いです。ならば私が、とはなかなか思えません。

欠点・弱点の多い父でしたが、職業人としての心得を父から教わった気がします。どんな仕事をするにせよ、プロフェッショナリズムというのは、「利他主義」そして「社会貢献」と深く関わっています。

高い課題を与えやがったな、親父。