イギリス脱出計画
いや計画もなにも、もう決まってるんですよ、イギリスを去ることは。
新しい職場となる大学から採用通知をもらったのは約3ヵ月前、今年の1月です。
新しいポジションには7月に着任することになっているので、現職では、今月初めから「退職通知期間」に突入しました。で、めっちゃ忙しいです。
イギリスの大学は4月末まで講義期間なので、講義やらセミナーやらでまだ教えてるし、5月は試験の採点もあるし。
その一方で、昨年の秋口に投稿した学術誌から、査読論文をR&R (Revise and resubmit : 「修正後再投稿」)せよ、というありがたいご連絡を頂戴し(というのは建前で、学者の本音は、「どこが気に食わないというのか。一発で受理せぇ、たわけが」ですが)、その再投稿の締め切りが、引越しで忙しくなると思われる6月末って、それ、なにかの嫌がらせ?
で、忙しいのはわかったから、葉隠は一体どこ行くねん、というとですね、
行き先は、憧れのオーストラリア、ではなく、
北欧の小国、デンマーク。
えーーー、嘘ぉ。マジで引っ越すのぉ。。。
それも、イギリスより寒い場所に…。
「きゃー、いまトレンドの北欧、それも幸せの国デンマーク?♡」なんて言ってるそこのあなた、マスメディアに思考回路をコントロールされてます。頭沸いてませんか。
旅行で行くんならいいですよ、でも住むとなったら話は別です。
苦悩の末の決断
正直言って、最初は乗り気がしませんでした。とは言うものの、昇給昇格をともなう移籍です。そして、移籍先の大学は、現在わたしが勤める大学に勝るとも劣らぬ研究大学です。
私なんかが応募してもどうせ無理だろうな、と半信半疑で応募したら、意外にも採用されてしまった、という感じです。
同僚もみんな祝ってくれたり、びっくりされたり、ひがまれたり、ってことは、この移籍は間違いなく Good move なはずです。
が、この期に及んで気づいたんですが、私をためらわせている最大の理由は何かというと、「結局、私はイギリスが好きである」というまぎれもない事実です。
あとは経済面でしょうか。
昇給昇格を伴うといっても、デンマークって税金がハンパなく高い上に、首都コペンハーゲンは、住宅事情がロンドン並みかそれ以上に悪い。どう悪いかと言うと、住宅の質が悪い、値段が(賃貸も含めて)高い、数が圧倒的に足りていない。
ちなみに私は、イギリスではロンドン在住ではありません。
もっと affordable な街で快適に暮らしています。
うーん、デンマークって、住まいの「質」の面で若干の不安が残る。
なので、イギリスで働いておられる方、悪いことは言いません。状況が許すなら、下手に動かずイギリスにとどまったほうがいいんじゃないでしょうか。イギリス人は基本的には現状維持が好きな国民だと思います(得意かどうかは微妙)。
「いーや、バリバリ働いて、高給とりの学者になって、ひと旗あげるぞー」、という意欲満々のかたは、香港かアメリカあたりをお勧めします。(というか、そういう人は、大学業界ではなく、別の業種に移ったほうがいいような気がする)。
それに、Brexit が将来のイギリスに与える影響もそんなにないかもしれないし(さんざん懐疑的なことを書いておいて、我ながら今さら何を言っておるのか、という気もしますが)。
ただ、私の場合は、今の大学に10年近く勤めて、なんか先が見えているというか、ぬるま湯と言うか。そこへ来て、今から約一年前の昨年5月に、いま勤めている大学で、全階級の教員を対象に希望退職が募集されました。
さんざん悩んだあげく、応募しました、希望退職。
上司である教授から、とくに引き留められなかったことを思うと、退職勧奨が実施されていたらリストラの対象になっていたのかもしれません。
そんなこんなで希望退職に申し込んで大学側に受理され、そしてデンマークの大学から採用通知をもらうまでの半年以上、暗中模索が続いたわけです。
どこからも採用がなかったら、最悪の場合、失業するかもしれない、というネガティブ思考との戦いの日々でした。
そういう時は、置かれている状況から少し目をそらして、大局的な見地に立つ、ということも必要です。(私は Steven Curtis Chapman の この曲を聴いて、自分を励ましてました。)
ここ一年間の過程を振り返ると、今回の移籍は機が熟したというか、自分をとりまく状況を通して「この道を行け」と指し示された気がします。
というわけで、なんだか新しい展開が始まるようです。