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ピーテル・パウル・ルーベンス / メトロポリタン美術館
女性の乳房の役割
『戦争は女の顔をしていない』
わたしは夜勤でした。重症のテントに入ると、大尉が横たわっていた。
先生方から言われていました。「今夜のうちに 大尉は亡くなる。朝までもたないよ」と。
その大尉に訊(き)きます。「どう?何をしてほしい?」
決して忘れられないわ。彼はにっこりした。苦しみ抜いたその顔には明るすぎる微笑みだった。
「白衣のボタンをはずして、乳房を見せておくれ…女房と離れてもうずいぶんになる……」
わたしは恥ずかしくなって、なにか答えて、テントを出ました。
一時間後に戻ると、彼はもう亡くなっていて、あのときの微笑みを浮かべたままで……
『怒りの葡萄 』下巻
「いまのおれたちにはなにもない」お父がいった。「先は長いんだぞー仕事も作物もない。それでどうすればいいんだ?(中略)おれたちの一生はもう終わっちまったみたいな気がするよ」
「いいえ、終わってないよ」お母がほほえんだ。「終わってないよ、お父。それに女にはもうひとつわかっていることがある。あたしはそれに気づいた」
お母はどんなことに気づいたのだろうか。そこには男女の人生の捉え方の違いが書かれている。
お母は…男を見おろした。五十くらいで、頬髭(ほおひげ)のある顔がげっそり痩せ、目はぼんやりと一点を見ていた。
男の子が、急に叫んだ。「お父が死んじゃうんだよ!飢え死にしちゃうんだよ!」
お母とシャロンの薔薇の視線で交わされたことは…こういうことだった。
シャロンの薔薇は、掛け布団のいっぽうをめくり、乳房を出した。「飲まなきゃだめよ」といった。「ほら」手を男の顔のうしろにまわして、支えた。
女性の乳房の役割について、考えさせられる話。