【minifilm】一行目を決めて原稿用紙一枚分の小説を書いてみよう!#2【YouTube企画】
どうもminifilmです。
今回は映画制作グループとして脚本の質の向上を目指し、YouTubeで行った企画『一行目を決めて原稿用紙一枚分の小説を書いてみよう』で執筆いたしました小説をご紹介いたします。
ルール
①二人がそれぞれが一本ずつ小説を書き上げる。
②書き出しの一行目を同じ文にする。
③原稿用紙一枚分400文字以内(カギカッコ、句読点等も1文字としてカウント)で書く。
今回の一行目(お題)
〝懐かしい声が聞こえた〟
櫻井の作品
「懐かしい声が聞こえた」
私が彼と喫茶店でお茶していると隣の席のおじさんがそう呟いて席を立った。辺りを見廻した後、その声の持ち主を見つけたのか、女性が座るテーブルに駆け寄った。
おじさんは頭を掻きながら恥ずかしそうに女性に話しかけている。最初は怪訝な顔の女性も次第におじさんと同じ表情に変わり、照れ笑いで語り合っていた。
あの二人は昔の恋人同士だな。
そう気づいて、私は、私の紅茶を図々しく飲んでいる目の前の彼に視線を戻した。
「珈琲苦い。その紅茶と交換して」
格好つけて頼んだくせにそんなことを言い出した彼を、私は飲みたくもない珈琲を啜りながら見つめた。
私と彼もいつか別れる日が来るかもしれない。
もし別れて、何十年か経って、偶然喫茶店で私の声が聞こえてきたら、あのおじさんみたいに恥ずかしそうに私に駆け寄ってきてほしい。
「どうしたの? そんなじっと見て」
でもその時は……。
「珈琲が飲めるくらい大人になっててね」
高橋の作品
懐かしい声が聞こえた。
「おじさん、何してんの?」
少年は、道端に転がっている私を見おろしながら不思議そうに聞いてきた。
「君、今、何年だ?」
「何年? えっと、2017年だけど」
「やった⋯⋯やったんだよ!」
私は、タイムマシンの開発に成功したことを確信した。
「おじさん⋯⋯どうしたの?」
私は少年の頃、妙なおじさんに会ったことがあった。道端に突然転がってきて「やった」と叫ぶ、怖いおじさんだった。変な人だと思っていたが、話してみると、気さくですごく優しい人だったのを覚えている。おじさんと仲良くなった僕は、苦手だった勉強を教えてもらうようになった。そのおかげで成績が上がって、学ぶことの楽しさを見出した。おじさんがいなければ、私はタイムマシンを開発していないだろう。無論、タイムトラベラーは過去を変えてはいけない。私は冷めやらぬ興奮を抑えながら、少年に語りかけた。
「ところで君。勉強は好きかい?」
YouTube動画
こちらの企画の詳細、二人の感想、解説、総評等はYouTubeにてご覧いただけます。
是非そちらもご覧くださいませ!