引っ張り出したい思い出②
タクシーで多めに出して、
「釣りは要らねぇよ。」と言って颯爽と車を出る。
なんてことあるのかな、と子どもの頃話したことがある。そんな人がいるのかなと。
よくお笑いで「足りませんよ」はあるけど。
今はキャッシュレスの時代になって、もう見ることができないのかもしれない。
しかし、私はそのシーンを目の前で見ていたはずだということがわかった。
プロ野球観戦を見終えた私たち家族は、駐車場へ向かった。
しかし、母方の祖父母・両親・妹と私の6人を乗せた大きめの車は球場よりも少し遠い場所に置くしかなかったらしい。遠かったからタクシーに乗ろうと話してタクシーを捕まえた。
そこで乗車拒否されたの、覚えてる?
と言い出す母。全然覚えていない。何ならタクシーに乗ったことすら忘れている。
タクシーの乗車拒否にビックリした。時代なのかな。
小さい子ども2人含む6名が1メーターだけ乗る状況が気に食わなかったのか、1台目のタクシーの運転手さんは嫌な顔をし、あかん、あかんと言わんばかりに手を降って去っていったそうだ。
当時タクシーの乗車拒否があるらしいと聞いていた母。「これがウワサの乗車拒否か!」と怒りでも驚きでもない発見のような感覚だったらしい。
大人たちは、「1メーターなのがダメだったのかな?」「2台に分かれて乗る?」などと相談していると、また1台タクシーがやって来る。
同じ系列だったので、ダメ元で父が状況を説明すると、2台目のタクシーの運転手さんは、快くOKしてくれた。
降りる時に2000円程の会計だったところを、祖父が1万円札を出して、
おつりは取っといてください!
と手渡したそうだ。
タクシーの運転手さんは驚きを隠せず、
「そんな!受け取れません!!」と言ったらしい。
『実は先ほど、1台乗車拒否されたんです。あなたに快く乗せてもらえたのが嬉しかったので、これは気持ちです。受け取ってください!』
祖父がそう言うと、タクシーの運転手さんは「ありがとうございます。」照れながら受け取ったのだとか。
内容の濃い1日だったんだね。
大魔神が投げているところを間近で見られたり、タクシーの乗車拒否から優しい運転手さんに出会ったり。
その場に私もいたのに頭の引き出しにはほとんど残っていない。
引っ張り出したい思い出は、しっかり覚えている人にまた教えてもらおう。