記憶冷凍 #毎週ショートショートnote
「今日は泣きたい気分なんだよな、涙活、涙活!」
私はそう言いながら“記憶冷凍”の扉を開けた。
友達の失恋とマジックで書いているものを取り出す。友達が付き合っていた彼氏と別れた話。
でも付き合っていると思っていたのは友達だけで、その彼氏が急に別の人と結婚したんだけど。
解凍していくと、友達の記憶が頭に入ってくる。
“なんで?一緒にいて楽しいって言ってたじゃない!”
“お泊りの時のキスは何だったの?”
まるで自分の記憶かの様に頭を刺激する。
友達に対して「アホやな」って内心は思ってたのに、心の底から涙が溢れてきた。
実は去年からこの記憶冷凍技術は使用禁止になっている。他人の記憶と自分の記憶の区別がつかなくなる人がいて、事件が多発したからだ。
記憶冷凍の扉をまた開ける。記憶冷凍は使い捨てなので、着実に減っていくストック。
「はぁ、楽しみが減ってくわね。」
かなりダークなのができあがりました。
我ながら怖いわ、これは。
主人公の女性がサイコパスにも見えてきました。
友達の元彼と結婚したのがこの子だったりして……!
よく「人の不幸は蜜の味」とか言いますが、嫌なことの記憶は、すーーっと跡形もなく消えてくれた方がいいのかもしれないですね。