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モンドラゴンの紹介

モンドラゴンという言葉に聞き覚えのある人は少ないと思う。スペインのバスク地方にある協同組合組織といっても、それだけでは日本に数多ある生協と変わらない組織のようにも思える。そもそもバスク地方といっても「バスクチ」が流行ったからバスクチのふるさとぐらいに思ってもらえているのかなという程度なのかもしれない。
 モンドラゴンは協同組合の歴史の中で非常に特異な事例として、注目を集めていた(集めている)存在である。というのも、生産者だけの組合でも、消費者だけの組合でもなく、コミュニティそれ自体が組合といった趣がある。なにしろ金融機関から大学まで組合の一環として用意されているのだから。90年代にはコミュニティ組合のモデル事例として取り上げられる。しかしリーマンショックの中で、組合参加の企業が痛手を受けたこともあり、「やはり組合組織は…」と思われてもいた。
 けれど、結構しぶとく相変わらず生き残っている。それがスペインのバスクという独立意識が強い地方柄なのか、金融を組織に含み込むという組織の特色なのか、どうもよくわからない。というので、同じスペインから日本に働きに来ているブルーノさんに仲立ちと説明役として主催者になってもらい、この研究会をゆるりと立ち上げることにした。
 ブルーノさんは日本語も達者だが、複雑なことになるとやはり英語の方が楽とのこと。スペイン語の書物を英語で要約してもらったり、スペイン特有の政治の仕組みを紹介してもらったりしながら、1943年にその起源を持つこの組合が実際にどのような組織になっているのか、どんな人々がどんな思いで働いているのかといった情報を共有しながら、一緒に考えていきたい。
 働き方改革とかポストコロナの働き方として、テレワークやジョブ給が提唱されている。終身雇用の終わりが唱えられ始められたのは、もう30年以上前だ。でも人は一人では何もできない。何かをするには人と人とが繋がり、共同する必要がある。その共同がどんな形を取るのか。相変わらずトップダウンで、人を人件費と捉えるのか。ボトム・アップといいつつ決定と責任が曖昧なままで終わるのか。それとも人と人とが対等でありつつ、相互の差(それには能力差や賃金差も含まれる)をきちんと承認できる協働のあり方があるのか。
 この研究会は、そんなちょっとしんどい、でもこれからの社会の基礎になる部分を考える研究会である。入って続けていくにはちょっとしんどいところはある。なにせ理論的な部分が多くなるかもしれないから。でもそこはスペイン出身のブルーノさんを先達として、できる限り現地の生の声を届けていこうと思う。実践の場の人たちが何を思い、何を発信しているのか。その中に考えるタネがいっぱい含まれていると思うのだ。

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