見出し画像

ミシュラン星獲得数で紐解く、世界美食都市の新しい構図

食欲の秋に合わせるかのように、今年10月、東京が一番乗りで2025年版の「ミシュランガイド東京2025」が発表されました。それに関連して、以下の記事ではミシュラン星付きレストランの数の上位10都市がランキングされました。

現在、2025年度版が発表されたのは東京のみであるため、東京以外の都市は2024年版との比較となりますが、1位の東京と2位のパリの差はなんと38軒ほど。東京をはじめとするアジアの7都市がトップ10に入り、美食の街として名高いパリやニューヨークなど欧米の都市をアジア勢が席巻している状況が見られます。

こうしたランキングをさらに深く読み解くと、実は、さまざまな示唆が浮かび上がります。


●   関西は世界の美食の中心?!

京都(100)+大阪(85) > 東京(170) > パリ(132)
京都(100) ≒ シンガポール(51)+上海(51)

関西エリアである京都と大阪を合わせると、東京やパリを上回る星の数を誇ります。また、京都単独でもシンガポールと上海を合わせた数とほぼ同等です。さらに、以下の記事によると、人口1万人あたりのミシュラン星付きレストラン数では、京都が世界1位、大阪が5位となっており、関西エリア全体が美食の集積地であることが分かります。

関西(京都、大阪)は世界の美食の中心と言えるのではないでしょうか。ミシュランの星の数だけでなく、実際に京都、大阪、神戸といった地域では、多彩な食文化が根付いており、和食の科学的な研究や食ビジネスの発展も注目されています。

数年前に、関西のミシュラン三ツ星レストランのオーナーシェフを取材したことがあります。二人とも関西で生まれ育ちましたが、その美食の世界観の広さと深さに感銘を受けた記憶が今も鮮明に残っています。関西は、地域文化の伝統と未来への創造性を併せ持つことで、美食が常に進化を続けているのです。

それと、ミシュランガイドには、世界で知られる神戸牛の発祥地である神戸が含まれていない点が気になります。もし神戸が含まれれば、関西が美食の中心地としての地位をさらに高めることでしょう。

 関西・大阪万博2025が近づく中、美食の「関西」はますます注目を集めることでしょう。

● 美食の香港の存在感が依然高い

今回のランキングで特筆すべき点の一つは、香港が上位にランクインしていることです。

香港(79) ≒ ロンドン(80)
香港(79) > シンガポール(51) = 上海(51) > 台北(37)

香港は近年、金融拠点としての地位が相対的に低下していますが、美食の街としての存在感は依然として高いと言えます。その背景には、豊かな文化と歴史、美しい景観、多様な料理が観光客を魅了していることが挙げられます。また、交通の利便性が高く、アクセスが容易であることもポイントです。

2023年の国際到着者数に基づくトップ10の観光都市は次の通りです:
1.                    イスタンブール – 到着者数2,020万人
2.                    ロンドン – 到着者数1,880万人
3.                    ドバイ – 到着者数1,680万人
4.                    アンタルヤ – 到着者数1,650万人
5.                    パリ – 到着者数1,550万人
6.                    香港 – 到着者数1,470万人
7.                    バンコク – 到着者数1,220万人
8.                    ニューヨーク – 到着者数1,170万人
9.                    カンクン – 到着者数1,080万人
10.                メッカ – 到着者数1,080万人

観光業が活発で、多くの観光客が訪れることが影響していると考えられます。観光客は高級ホテルやレストランを利用する傾向があり、これがミシュランの評価に寄与しています。また、ミシュランの評価が観光促進にもつながり、レストラン業界がその影響を受けて品質を維持する好循環が形成されています。

「モダン中華」で表現されたように、香港の料理は、広東料理という伝統を基盤にしながら、多文化的な影響や国際的な要素を巧みに取り入れた進化形であり、まさに「伝統と革新の融合」を体現しています。この柔軟性と創造性がミシュランの審査員にも魅力的に映っているのでしょう。

● ニユーヨークよりロンドンの方が上だ?!


ロンドン(80) > ニューヨーク(72)

「イギリス料理はまずい」という先入観を持つ人も多いかもしれませんが、最近では「イギリス料理はもうまずくない」と言われることが増えています。例えば、以下の記事がその一例です。

ロンドンは近年、移民や国際的なシェフたちの活躍によって、多様で革新的な料理が楽しめる街として発展しています。各国の料理が高品質で提供されており、フレンチやイタリアンだけでなく、中東、アフリカ、アジアの料理まで幅広い選択肢が揃っています。その中で、寿司職人・渡邊卓也氏が手掛ける「TAKU」がミシュランの一つ星を獲得したことも話題となりました

ニューヨークはNo.1の多文化都市と言われますが、最近のトレンドではロンドンが多様性とオリジナリティで一歩リードしているようです。

● まとめ

今回のランキングからは、次のようなことが浮かび上がります。
・関西は地域文化を背景に美食の中心地としての地位を確立しています。
・香港は観光と美食の相互作用により依然として高い存在感を放っています
・ロンドンは多様性と革新性で新たな美食の街として注目されています。

美食は都市の歴史・観光・経済とも深く結びついており、ミシュランのランキングは単なる数値以上に、地域や都市の文化的・経済的ポテンシャルを読み取る手がかりともなります。

いいなと思ったら応援しよう!