ぶどう達から教えてもらうこと
最近、「ワインはどちらで修行されてきましたか?」と聞かれることが多い。「酒類総合研究所です。」と答えるとほとんどの人ががっかりした顔になる。たぶん、海外で学んできたという答えを期待しているのだろうけど、僕自身は純国産で育ったことに誇りを持っている。
家庭菜園レベルのことしか分からなかった僕は、ワインにするぶどうを育てる知識も経験も無い状態からスタートした。1年目は、ほぼ何も分からずシーズンが終わった。これではダメだと、基礎知識を求めて広島県東広島市にある独立行政法人「酒類総合研究所」で開催される2週間のワインコースに入校。しかし、初日からトラブルを起こしてしまう。「本日、寮に入られるはずですがどちらにいらっしゃいますか?」という電話が入った。畑の作業でいっぱいいっぱいだった僕は寮に入る日を間違えてその時は畑におり、大慌てしながら「落ち着け、落ち着け」と自分に言い聞かせつつ、適当な言い訳をしてなんとか翌日の入寮にしていただいた。
研修が始まったが、思っていた通り基本が分からない僕は全く授業についていけない。ぶどう栽培とワイン醸造の知識はゼロだがやれることはある!授業は全て録音し、休憩時間や夜にとにかく聞きまくった。
でも、何回聞いても、全然分からん・・・。ここで学ぶしか無い僕はかなり焦って通信制の大学を受講する知人を頼った。「全く授業についていけんのです・・・」と言うと簡単に「周りの人に教えてもらっては」と教えてくれたのです。目から鱗!!「そうだった!!」分からないことが恥ずかしかった僕は無意識に周りの人とほとんど話も出来ずにいたことに気づいた。
すぐに実践。休憩時間は録音を聞き直して分からないことをリストアップ。少しの時間でも、周りの方々に質問しまっくった。夜は寮の各階で行われるワイン会で深夜までみんなに話を聞くという日々を送った。ほぼ毎日、二日酔い・・・。今では良い思い出になっている。
講師の先生に「ここで勉強したことを3年後に同じ事をやっていたらダメだ」と言われたことが今の自分の基礎になった。
さて、山野峡のワイン造りですが、ひとつひとつの畑は小さいが合わせると小学校のグランドぐらいの大きさで約2ヘクタールあります。ぶどうは9種類栽培していて畑の違い、品種特性の違いがあるということが分かるのに時間がかかった。分かっただけでどうすれば良いか分からない時は、酒類総合研究所でみんなに聞いた話を参考に仮説を立てて、実際にやった結果がどうなるか。繰り返しながら身につけている。
畑の違い、品種特性の違いに対してどうすれば良いか分からなかったが、ある法則があることに気づいた。
ぶどう樹は我が家の子供達と一緒。
やってほしくないことをやると、反発する。やらないといけないタイミングで作業しないと効果が無い。それぞれ成長のスピードが違うし、性格も違う。弱い樹は入念に手を入れ、強い樹は手を付けずいらない枝が出ても放置する。やる気が無いときは声をかけ、あれこれやりたいことがたくさんある時は容認してやる。3000本の樹を植えているが、どれ一つ同じ樹は無くそれぞれの状態に合わせて手当をしていくという栽培方法が身についてきた。
土の状態、気候条件は毎年違い樹の成長も毎年違う。その時その時考えながら、醸造仲間と議論しながら地域の特性を出していけるよう取り組んでいきたいと思うし、さらに美味しいぶどうにするために土壌の研究もしていきたい。
美味しいぶどうから美味しいワインができることは間違いない。これで完成!という日はないと思うが、飲んでくれた方に難しい話は抜きにして「美味しい!」と言っていただけるよう、そして山野に訪れたことを思い出してもらえたら嬉しいです。
次回につづく、
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