社会教育の本質
(1)戦前と戦後の社会教育の違いは何か
戦前の社会教育は、国家による中央集権的な政策を教育の面から支えるといった性格が強かったのである。戦後は、民主主義を支え、発展させるための人づくりをする、人づくりを通して、戦後復興(地域づくり/国づくり)を進める、地方自治を尊重し、地方(地域)の自立・自治を促すといった理念による社会教育制度となった。これらの理念は、社会教育制度の基本をつくっている社会教育法などにおいて個々の条文の中で具現化されている。
(2)社会教育法における社会教育の定義の利点と課題は何か
次の3つの要件に当てはまる活動を「社会教育」として定義しているのである。①学校の教育課程として行われる教育活動ではないこと「学校外」②主として青少年及び成人に対して行われる組織的な活動「組織性」③主として青少年及び成人に対して行われる教育活動「教育性」であり、社会教育の法律上の定義は欧米のノンフォーマル教育の概念とほぼ同じである。
社会教育における学習活動の多様さは、前述の社会教育法上の定義の幅広さに起因するものであり、十な学習を体現している点で、好ましいものである。しかしながら、このことは逆に、次のような問題を惹起している。
不明確な定義
機能的な概念
制度上の概念ではなく、社会教育は機能上の概念
社会教育の重要な要素は、法律や規則といった仕組みではなく、むしろ「現場の人」、特に社会教育関係職員の役割が大きい。
(3)総合教育性・相互教育性・実践教育性とは何か
社会教育の中核である公民教育の特徴として、総合教育性、相互教育性、実践教育性の3つを挙げた。この3つの特徴は、いずれも「地域をベースとした人づくり=地域づくり」とする考え方を前提に生まれてくるものである。生活上の課題を解決したり自己の興味関心の実現したりするためには、それらの課題を多面的に見て評価する視点を持つことが必要であり(総合教育性)、他の住民と交流したり、話し合ったりして知恵を出し合うことを通して(相互教育性)、方向を見定め実践することが必要になる(実践教育性)。この3つの特徴は、社会教育の本質として普遍性を持っているといえる。
<参考文献>
笹井宏益・中村香『生涯学習のイノベーション』玉川大学出版部,2013