【世界遺産検定マイスターへの道 #5】登録基準って何?【9/107】
はじめに
マイスター試験対策の続きをやっていきます。
問1対策でキーワードまとめを実施中です。
今回は以下のキーワードをまとめていこうと思います。
問. 次の語句を簡潔に説明しなさい。(解答は本記事の最後に記載)
・登録基準(i)
・登録基準(ii)
・登録基準(iii)
・登録基準(iv)
・登録基準(v)
・登録基準(vi)
※最終的には以前のnoteで列挙したキーワードすべてをまとめた表を作成する予定です。
●登録基準って?
そもそも登録基準とは何のためにあるのでしょう。
世界遺産リストへの登録には「顕著な普遍的価値(OUV)」を有することが必要であることは以前ご紹介しました。
その顕著な普遍的価値の評価基準として設けられているのが、登録基準です。
登録基準のうち1つでも認められた場合には、顕著な普遍的価値があると見なされます。
登録基準としては(i)から(x)の10の基準が存在します。
文化遺産・自然遺産の共通の登録基準として10種類存在するという扱いですが、実際には文化遺産は(i)~(vi)、自然遺産は(vii)~(x)の基準が適用されています。
●登録基準の説明と覚え方
登録基準の存在意義をご説明したところで、その内容に入っていこうと思います。
まずは、あえて作業指針のなかで記述されているそのままを以下に記載します。
上の表を見ても、結局何を言っているのかよくわからないと思います。
以前、僕が世界遺産検定2級を受ける際に、登録基準をざっくり押さえる方法を紹介されている方がいらっしゃって非常に重宝したので、あらためてご紹介したいと思います。
●登録基準(i)
人類の創造的資質を示す傑作。
人類が創った"1番の"傑作なので、登録基準(i)に該当します。
人類の創造的資質や人間の才能を示す遺産には、この基準が該当することが多いです。
遺産例:タージ・マハル🇮🇳
●登録基準(ii)
建築や技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展において、ある期間または世界の文化圏内での重要な価値観の交流を示すもの。
価値観の交流ということは、異なる"2つの"価値観が交わるということですので、登録基準(ii)です。
文化の価値観の相互交流を示す遺産で、交易路や大きな文化・文明の接する位置に存在する遺産に認められることが多いです。
遺産例:シルクロード: 長安から天山回廊の交易網🇨🇳🇰🇬🇰🇿
●登録基準(iii)
現存する、あるいは消滅した文化的伝統または文明の存在に関する独特な証拠を伝えるもの。
文化的な伝統や文明が存在したことを示す証拠となる遺産は、この登録基準(iii)を持つことが多いです。
人類の化石遺跡なども含まれます。
「カステラ一番、電話は二番、”三時”のおやつは”文明”堂」というCMをご存知の方であれば、文明の証拠=登録基準(iii)だなと思われるでしょう。
※余談ですが、「カステラ一番、電話は二番」というのは、「値打ちあるものをつくれ、名を残すものをつくれ」ということを表した標語だそうです。
遺産例:北海道・北東北の縄文遺跡群(写真は三内丸山遺跡)🇯🇵
●登録基準(iv)
人類の歴史上において代表的な段階を示す、建築様式、建築技術または科学技術の総合体、もしくは景観の顕著な見本。
建築様式や建築技術、科学技術の発展段階を示す遺産に認められます。
建築技術、建築様式、科学技術、どれも”4文字”ですよね。したがって登録基準(iv)です。
遺産例:ジョドレルバンク天文台🇬🇧
なお、この登録基準(iv)は「代表的な段階」というのもキーとなります。
遺産例に挙げたジョドレルバンク天文台は、光学天文台から電波天文台への移行を証明している点が評価されて世界遺産になりました。
優れた建築でも、例えばシドニーのオペラハウスは代表的段階を示していないとして、登録基準(iv)は認められていません。
●登録基準(v)
ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落や土地・海上利用の顕著な見本。または、取り返しのつかない変化の影響により危機に晒されている、人類と環境との交流を示す顕著な見本。
独自の伝統的集落や、人類と環境の交流を示す遺産に認められる登録基準です。
また、農業景観や文化的景観が特徴の遺産も、土地や海上利用の代表例としてこの基準を満たすことがあります。
伝統的集落、人類と環境、文化的景観が”5文字”であり、登録基準(v)と覚えました。
海上利用についても、航海(voyage)の頭文字を取ってこの基準を満たすと覚えました。
遺産例:白川郷・五箇山の合掌造り集落🇯🇵
●登録基準(vi)
顕著な普遍的価値を持つ出来事もしくは生きた伝統、または思想、信仰、芸術的・文学的所産と、直接または実質的関連のあるもの。(この基準は、他の基準とあわせて用いられることが望ましい。)
人類の歴史上の出来事や伝統、宗教、芸術などと強く結びつく遺産に認められる登録基準です。
これまでに登場した登録基準と被りがあるような印象を受けませんか。
伝統であれば(iii)が該当しそうですよね。歴史上の出来事というのも、そもそもカバー範囲が広そうです。
この登録基準(vi)の適用にあたっては「他の基準とあわせて用いられることが望ましい」という記述がなされています。
裏を返せば、登録基準(vi)のみで登録される遺産は、他の登録基準が認められにくい「負の遺産」と考えられるものが多いということです。
※負の遺産については後の記事で触れたいと思います。
遺産例:ビキニ環礁 - 核実験場となった海🇲🇭
さいごに
問. 次の語句を簡潔に説明しなさい。
・登録基準(i)
人類の創造的資質や人間の才能を示す遺産に該当することの多い登録基準。
・登録基準(ii)
文化の価値観の相互交流を示す遺産で、交易路や大きな文化・文明の接する位置に存在する遺産に認められることが多い登録基準。
・登録基準(iii)
現存する、あるいは消滅した文化的伝統または文明の存在に関する独特な証拠を伝える遺産に認められる登録基準。
・登録基準(iv)
人類の歴史上において代表的な段階を示す建築様式、建築技術または科学技術の総合体、もしくは景観の顕著な見本であることを示す登録基準。
・登録基準(v)
独自の伝統的集落や、人類と環境の交流を示す遺産に認められる。
農業景観や文化的景観が特徴の遺産も、土地や海上利用の代表例としてこの基準を満たすことがある。
・登録基準(vi)
人類の歴史上の出来事や伝統、宗教、芸術などと強く結びつく遺産に認められる登録基準。他の基準とあわせて用いられることが望ましい。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
今回は文化遺産に認められている登録基準(i)〜(vi)についてまとめてみました。
次回は残りの登録基準についてまとめようと思っています。
今回はここまでです!