GIAの特殊レポート「Notable Letter」とは? ~バイカラーダイヤモンド~
さて、GIAが発行する「Notable Letter」はご存知でしょうか?
GIAが発行するレターといえば、
ダイヤモンドのType(例えば、窒素をほぼ含有しないTypeⅡaなど)の分析結果を示す「Type Letter」は比較的知られています。
ネット上でもこのNotable Letterについて触れた情報や記事が少なく、私が存在を知ったのもここ数年のことです。
ジュエリー業界に携わる人間でも見たことがない人もいるかも知れません。
ノータブルレターとは、GIAが「特筆すべき→Notable」特徴を認めた石に対して発行する書面レポートです。
簡単に言えば、稀少性の高いユニークな特徴に言及し「珍しい」とGIAからのお墨付きがもらえるレポートということです。
しかし、どんな宝石に対しても発行できるのではなく、
なかなかに厳しい条件に適う宝石にだけ発行されます。
例えば、
・稀少なキャッツアイを示すルビー
・100ctを超える巨大なスターサファイア
・稀少なヴェイリネナイトのマッチングペア
・色が濃く、かつ透明度の高いグランディディエライト
など、「珍しい」理由を明確に示すことができる宝石に対して発行がなされます。
バイカラーコレクターとしては、
「いつか、Notable Letter付きの特別なバイカラーが欲しい!」と思い続けておりました。
今回、Notable Letterの発行に成功した宝石は、
「バイカラーダイヤモンド」です。
このGIAのレポートを見る通り、
Fancy Deep Brown-Orangeのカラーダイヤモンドです。
もともとGIAレポートのみが付いていたものを購入したのですが、
Notable Letterの発行にあたり、
GIAレポートのアップデートが行われました。
(※その石に対して間違いなく発行されたものかの再確認、見直し)
アップデート前のColor Distribution(※色の分布)は”Uneven”という表記だったのが、”Not Applicable(適用外)”に更新されました。
Color Distributionはカラーダイヤにおける色の分布の均一性を表すもので、
均等に色が分布されていれば”Even”、
色がまだらになっていたり、部分的に抜けていたりして不均一になっているものは”Uneven”と表されます。
私が今まで確認してきたバイカラーのダイヤモンドはすべて「Uneven」と表記されていましたが、この度”Not Applicable”という表記が得られたのは、Notable Letterの発行に伴い、この石がUnevenとは表しきれない「特徴」が認められたためと思われます。
そしてこちらが実際のNotable Letterの文面です。
GIAレポートでは言及されていなかった、
・ブラウンオレンジからニアーカラーレスのカラーゾーン。
・明確な色の境界を持つ。
という2点に触れ、"very rare"だとのお墨付きをいただけました。
GIAにおける”Near Colorless”とは、
D-Zカラーのうち、「G・H・I・J」カラーのことを示します。
カラーダイヤモンドとしてグレードされる場合、
システム上、バイカラーの2色のうちのどちらかしかグレーディングされないため、
今回Notable Letterの書面上でカラーレス部分のグレードについて、
Near Colorlessという範囲での表現ではありますが、触れられていたのはとても良かったです。
そしてwell-defined color zonation(明確な色の境界)を持つことがVery rareだという表現ですが、バイカラーダイヤモンドを長年探していた私としてもこの部分には非常に納得がいきました。
以前の記事で挙げたこちらのバイカラーダイヤモンドもそうなのですが、
バイカラーダイヤモンドと呼ばれるものは、
・まだらに色が入っていたり、もしくは色が部分的に抜けたバイカラー。
・二色の違いが小さい、もしくは似通った色の組み合わせ。
であることが多く、
今回のダイヤモンドのような、
境界が比較的ストレートで、かつ色が明確に違うものは初めてでした。
専門的な話になりますが、
ブラウンダイヤモンドは、塑性変形と呼ばれる構造の歪みに空孔ができ、特定の色が吸収された結果としてブラウンとして見えます。
今回はブラウンオレンジですので窒素による吸収も複合的に絡んでいると思われます。
そしてカラーレスの部分もあるというのは、
その部分は塑性変形していない、もしくは窒素が部分的に少ないということなのでしょうか・・・?またじっくり調べてみたいと思います。
今回作っていただいたNotable Letterは、
ほとんどの場合はカラーストーンに対して発行されます。
ダイヤモンドは通常のレポートとType Letterで必要な情報は網羅されますので、Notable Letterが必要となるケース自体がそもそも稀です。
ありうるとすれば、キャッツアイ、スター、特殊な内包物についてでしょうか。
そういった意味でも、Notable Letterが発行されたダイヤモンドというのは世界的にも数が少ないのではと思います。
本記事が、Notable Letterについて調べている方の助けになれば幸いです。
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