クリエイティブリーダーは世界に接続し、行動で応答する
私たちはいま、パズルではなくミステリーを解く時代に生きている。
そんな現代において、ビジネスを担う人々に求められる能力とは何なのか?
ストラテジーだけでもクリエイティビティだけでもない、それを行き来するビジネスデザイナー。これからのクリエイティブリーダーを紐解く。
はじめに
本書は、「武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論 最終回(10/11)佐々木康裕氏の講義レポートである。
佐々木康裕(ささきやすひろ)
ビジネスデザイナー。Takramではデザインとビジネスの知見を組み合わせた領域横断的なアプローチでエクスペリエンス起点のクリエイティブ戦略、事業コンセプト立案を展開。2019年3月、スローメディア「Lobsterr」を共同創業。“ビジョナリーブランディング“を行うPARADEの取締役、ベンチャーキャピタルMiraiseの投資家メンター、グロービス経営大学院の客員講師(デザイン経営)も務める。
著書/共著に『パーパス 「意義化」する経済とその先』(NewsPicksパブリッシング)、『D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略 』(同)、『いくつもの月曜日』(Lobsterr Publishing)等。
佐々木さんは、クリエイティブとビジネスの世界を往復する日本ではまだ数少ないビジネスデザイナーとして活躍されています。クリエイティブリーダーとしての佐々木さんの考え方は皆さんの参考になるのではないかと思います。岩嵜教授は佐々木康裕氏をそう紹介された。
グローバルアジェンダと接続し、アクションで応答する
環境問題や社会問題など、ビジネスにおいてグローバル単位で包括的に捉えることはもはや不可欠な要素になってきている。例えば、経済を変え社会を変えるサーキュラーエコノミーを考える上でも、マクロの社会的視点とミクロの個人的視点をインクルーシブかつグローバルで捉える必要があり(さらに言うと、それをどう捉えるかといった哲学も持ちうる必要がある)、そのためにはグローバルアジェンダと自分を接続させていることは標準装備として求められると分かる。佐々木さんが手がけられているビジネス×カルチャーのメディア「Lobsterr」は、時代と社会の変化に耳を傾けるメディアプラットフォームとして、まさにグローバルコンテクストと私たちを心地よく接続させてくれている。
また、これからは表層的なデザインよりも、アクションの時代に入っていくと佐々木氏は言う。アクションを通じてコミュニケーションをし、行動の一つひとつによってブランドとしての意味性を重ねていく。アクションに対する、モノゴトを構想し、統合する力がデザインに求められていくのだろう。また、10年、20年後の未来のアクションに向けて、組織全体の未来の構想や、価値観を変えることなど、クリエイティブリーダーには見えないものを創ることも重要になってくる。
価値観を揺さぶられ続けるために
佐々木さんはイリノイ工科大学(Institute of Design)のことを、デザインスクールの皮を被ったビジネススクール、実践的職業訓練校と表現していたが、価値観を揺さぶられた場所とも言っていたのが印象に残る。まさに私にとってもここCLは価値観を揺さぶられている場所であり、グローバルアジェンダや哲学と接続できている場所であると実感している。残りの学生生活は短いが、これからも、とてつもない勢いで変わっていく世界と接続し、世の中に応答できる人でありたいと思う。