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合理的で効率性を追求する一つのアーティスト

自己の暗黙知を体外に出すことで、世の中の価値観を揺さぶる。

クリエイターやエンジニアは強い個を持ちながら、群れることを嫌う印象もあった。

チームラボは、クリエイター個人のクレジットが出ることない。あくまでクレジットは「チームラボ」になる。そして、一つのプロダクトをみんなで作り上げ、チームとしてのクオリティを高めるために全てにおいて、合理性を重視するという。

エンジニアやクリエイターの個性あふれる700名の組織をどのようにマネジメントし、成果を最大化させることへと導いているのだろうか。

はじめに

本書は、「武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論 第六回(5/17)堺 大輔さん」の講義レポートである。

講師:堺 大輔(さかい だいすけ)
1978年、札幌市出身。
東京大学工学部機械情報工学科、東京大学大学院学際情報学府では、ヒューマノイドロボットのウェアラブル遠隔操作システムについて研究。主にソリューションを担当。

指示ではなく触媒するカタリストの存在

チームラボではディレクターと呼ばず、カタリストと呼ぶ。

チームラボは、「合理的にクオリティの高いものを作る」という揺るがない大前提のもと、様々なプロジェクトにおいて、エンジニアやクリエイターたちが存分に力を発揮できるよう、ハブとなり、チームを導いていくカタリストというポジションが存在する。

カタリストは、ディレクターやPMに近い業務を行うポジションで、テクノロジーとクリエイティブの橋渡しをして進行管理をするいわゆるディレクターの役割である。両者の提案や要求を適切に理解し、双方に最も伝わりやすい形で伝えられる能力、つまり"触媒"としての役割が求められる。

こちらのインタビューでは、カタリストのことをこう紹介していた。

弊社は、アウトプットのクオリティーの高さをとにかく重視します。そのために、技術的にできることとできないことを整理し、どうしたら現実可能となるか、より良い他の方法はあるか、ということをエンジニアからの観点を踏まえて話せるのが、良いカタリストだと思います。

また、建築出身のカタリストも多いです。法律や予算などの外部制約の中で、デザインや設計はもちろん、配管や空調、街並みとの調和などあらゆる要素を複数の専門家と共に検討してモノを作る経験が活かされます。

それに、これまでの建築は静的な構造物を制作するのがメジャーでしたが、最近はデジタルを取り入れた空間作りに携わりたいと思う建築出身者が目立ちますね。

そして、そのカタリストをハブとしながらも、オフィスの設計やカルチャーでクリエイティブ組織をマネジメントしている。

答えがないクリエイティブに向き合う上で、「ちゃんとしない」を設計する

人が集まりやすく、発言しやすい。そんな環境をオフィスでは作ろうとしている。モノをつくりやすく、コミュニケ ーションをとりやすくする秘訣は「ちゃんとしないこと」だと言う。

ホワイトボードよりもちゃんとしなくて済むメモデスクは、天板が紙になっていて各自が自由にその場で書くことが出来る。緊張を強いられちゃんとしなければならないと思わされるホワイトボードをチームラボは排除したのだった。

また、仕切りがある会議室というちゃんとした空間をなくし、オープンな空間にはカラフルで持ちやすく軽い様々な椅子が揃えられている。

触れると気持いい食感のふわふわした机、握って楽しめるボールなど、とにかく発想が生まれやすく、コミュニケ ーションがとりやすい媒介物や空間を設計している。

おわりに

印象的だったのは、チームラボのエンジニアやクリエイターを「職人質」と言っていたことだ。彼らは自分の表現に固執し、自己の承認を求めることはない。むしろ、クオリティーに執着し、そのためにみんなで協力しながらより大きな成果物を目指す集団であると。その素質は、採用の時点でしっかり見ているとのことだった。人を中心にした価値観に重きを置き、制度ではないカルチャーによってクリエイティブ集団をマネジメントするところに、チームラボの本当の凄さがあると思った。

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