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【第23回】話題の『日本沈没2020』をあえて褒めてみたい……けど…

【海外ドラマファンのためのマガジン第23回】

Netflixオリジナルアニメーション『日本沈没2020』が7月9日に世界配信されました。
小松左京の小説『日本沈没』をモチーフにした物語ではありますが、完全なるオリジナルのストーリーになっています。

早速拝見したのですが……非常に困っています。
と言うのも、私は記事の中に「愛をのこす」ことを信条としていて、基本的に批判的すぎる記事は執筆しません。
批判的な意見を述べることがあるとしても、それは、「愛をのこす」という信念に外れないように気をつけているつもりです。

これはあえて言っておきたいのですが、記事を執筆する際に、批判するだけの文章を書くことは非常に簡単なのです。

批判よりも褒める方が数十倍難しい。

これは、私だけの感覚なのかもしれませんが……。

批判は簡単です。

気に入らない部分というのは、目に付きやすく言葉としても表現しやすい。でも、対象についてどの部分が好きだということを「好き」という言葉を使わないで表現してみてください。

けっこう難しくないですか?

正直に言うと、湯浅政明監督、吉高寿男脚本の『日本沈没2020』は、私にはダメな作品でした。
どこがダメかというと、作品の好き嫌いではなく、物語を作る際の信念の問題です。

だから、本当は、言いたいことが山ほどあります。でも、愛をもって批判できないレベルのダメさだったんです。

私の中の信念として、「愛をのこす」というものがあるので、ここであえて、本作を見て、「よかった」と思う点を挙げておきたいと思います。

良かった点。

主題歌「a life」大貫妙子 & 坂本龍一(作詞:大貫妙子/作曲:坂本龍一)を聞いて、これから面白いドラマが見られるという雰囲気作りを感じた。

地震や噴火の様子の描写が躍動的に描かれていた。

美しい日本の自然の風景が描かれていた。

お母さんの明るい性格。

災害の中で一般の一家族を追っている
この市井の一家を描くという物語の骨格が、本当に良かっただけに、随所に見られるプロットの矛盾がとても残念です。1973年の映画版では、丹波哲郎さんが演じる首相と、日本海溝を調査する学者たちを中心に描かれるのですが、市井の一家族の生き残りを描くという手法が、さすがNetflixドラマという発想です。
『ウォーキング・デッド』にも通じるような、何が起こるか分からないハラハラ感と、生き残って欲しいという応援のような気持ちを呼び起こさせるスタイルになっていました。

小松左京の小説『日本沈没』が発表されたのは、関東大震災のちょうど50年後となる1973年とのことですが、それ以降も私たち日本人は、数々の震災を経験してきました。

以前は荒唐無稽とも思えた、日本沈没という発想ですが、東日本大震災を経験した今となっては、ただ「ありえない」で済ませられる状況ではありません。

プレートのずれによって地震が起きるというメカニズムも、以前よりも知識として浸透しており、沈没しないまでにも、大きな地震や津波に備える覚悟は、誰しもが心の奥底に持っているものだと思います。

だからこそ、震災を経験した日本人としての物語を作って欲しかった。

その一言だけ、書き添えておきます。

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