【第51回】イジ―の華麗なる反抗にも注目『リトル・ファイアー彼女たちの秘密』エミー賞2020リミテッド・シリーズ作品賞紹介④
【海外ドラマファンのためのマガジン第51回】
このドラマ、かなり好きです。多分、今年のベスト10に入ります。
セレステ・イングの小説『Little Fires Everywhere』(2017)を読んだリース・ウィザースプーンが気に入ってケリー・ワシントンに本を薦めて、二人でプロデューサーも務めて制作したドラマ。
ミドルアッパークラスの白人一家と、ワケアリ黒人母娘という2つの家族が交流することによっておこる家族崩壊を描いていきます。
リースは、『ビッグ・リトル・ライズ』(2017-2019)にも主演していて、タイトルがリトルつながりだし、役柄も気の強い白人女性という共通点があって紛らわしいですが、まったく別の役柄です。
家族でも、言ってはいけない一言を言ってしまったために、心が離れてしまうことがあります。
もう二度と会いたくない と思うことも。
家族なので、和解することもあるかもしれませんが、一度そうなってしまうと修復は難しい。
リース・ウィザースプーンが演じている母親エレナは、かなり難しいタイプの女性なんです。
一見、仕事もバリバリしているし、家のことも、ママ業も、学校の行事もすべて仕切るバイタリティ溢れる存在ですが、家族は彼女のやり方に我慢している部分がある。
子どもが4人もいるので子育ても大変なのですが、一番下の子イジ―(ミーガン・ストット)だけが心が通じ合わないと感じている。
母親のエレナ自身が、イジ―のことを好きになれない部分があって、それが態度に出てしまうんですね。
こういうことって、親子や兄弟でもあり得ます。
どうしてもウマが合わないということが。
イジ―の反抗なんて、第3者から見ればカワイイものですが、エレナにとっては我慢できないんです。
わたしは、見ていてイジ―のように華麗に反抗できる子は羨ましいと思いました。
あんなふうに自由に自分を表現して、親に反抗できればよかったなと思うくらい。
イジ―役のミーガン・ストットは、2018年にデビューしたばかり17歳で、今回が初の大役です。
素晴らしい存在感で、彼女を助演女優賞にノミネートしてもよかったのでは?と思いました。
主演のリースと、ケリー・ワシントンの演技対決も見逃せません。ほんとに卓越した女優たちです。
ここ数年二人とも出演作が多くてかなり忙しいでしょうが、プロデューサー業もこなしているパワフルウーマンだなぁと尊敬のまなざしで見てしまいます。
日本ではHuluからは配信されず、2020年5月よりAmazon Prime videoで配信中です。
家族の物語ですが、秘密もあり、ミステリーもあり、コメディ要素もあるし、世代間のギャップもあれば、人種問題もあるし、母と娘の物語でもある。
だれでもが体験していそうな我々の傍にある物語をここまで魅力的に作り上げた、原作、脚本、主演女優たちに拍手を贈りたい。
どんな秘密があるのかが問題ではなく、それを秘密として抱えてしまう人間の判断力や心の闇のほうが問題なんです。
第72回エミー賞 リミテッド・シリーズ部門 作品賞 候補作
5ノミネート『リトル・ファイアー〜彼女たちの秘密』Hulu
IMDb7.8 Rotten Tomatoes 78%
ノミネート主要部門
作品賞
主演女優賞 ケリー・ワシントン
監督賞 第8話「新たな道」