苦手だった『ウォーキング・デッド』を好きになった経緯について。リックよ、戻ってこい。
【海外ドラマファンのためのマガジン第116回】
もともと、グロテスクな描写が苦手でした。大量に人を殺すシーンとかも、できればあまり見たくありません。
基本、「もやし」なので、RPGゲームとかもやったことないんです。
だって、いきないバトルが始まって誰かを殺さなくちゃならないでしょ?
ゲームの中だからといって、妖怪だからといって、何かを殺すということができないんです。
そんなもやし人間のわたしは、『ウォーキング・デッド』が流行りに流行ったとき、困りました。
ゾンビを見つけたらすぐ殺さなくちゃいけない世界のドラマなんですよ。
しかも、大量のゾンビに遭遇したら、走って逃げられない限りは出会ったゾンビを全部殺さなくちゃ自分が生き残れない。過酷な世界ですよね。
でも、海外ドラマについて記事をアップしているのに、『ウォーキング・デッド』を見ていないというのは致命傷なんじゃないかと勝手に思っていて。
2015年に、勇気を出して見始めることにしたんです。
もちろんシーズン1からはじめました。
うーん。かなりグロテスク。実は最近シーズン1と2を見返す機会があったのですが、ウォーカー(ゾンビのこと)たちは、最初の頃かなり活きが良かった。走ってるのもいました。
そして、ウォーカーは、脳にダメージを与えないと、体半分になっても、頭だけになっても動き続けるので、上半身だけで地面をはっているヤツとか、頭をナタでぶち割る描写とかが、多発します。
今見返しても、やはりそういう描写のときは、目をそらしますが、シーズン2を見終わったあたりから少し慣れてきました。
ちょっとネタバレなんですけど、ウォーカーの群れの中をどうしても渡って向こう側にいかなければならないときなんかは、死んだウォーカーの内蔵を体に塗って、人間の匂いを消していかなけらばならず、この内臓を塗る描写が一番きつかったかな。
さっそくシーズン1で登場していきます。
そういうグロテスク描写は、完全には大丈夫にはならないのですが、それでも見続けてしまったのは理由があります。
面白かったんです、単純に、ストーリーが。続きが気になってしかたない。
リックという保安官の主人公を通して、終末の世界でも正義は貫けるのかという葛藤。
綺麗事だけでは、愛する人を守れないジレンマ。
登場人物がウォーカーの存在に慣れていくにつれて、現れてくるのは人間の恐ろしさ。
どんなに醜悪なゾンビに囲まれても結局、恐ろしいのは、醜いのは人間なんです。
それを受け入れて、新世界を生き抜こうとするリック。
ストップできずに朝まで鑑賞し続けてしまう日もありながら、約2週間かかって過去シーズンを見終えました。
そして、リアルタイムに追いついたのが2016年シーズン7の頃でした。
このシーズン7というのが、冒頭からかなり物議を醸すシーズンで、「うっそでしょ……」ということが起こります。
リアルタイムに追いついたのが逆にシーズン7でよかったのかも。
残酷すぎる……と離脱する人もちらほらいたかもしれませんが、私の場合は、第1話の衝撃には「ひでー」と絶句しながらも、せっかく追いついたので、「とりあえず全部みよう」と思い見続けたからこそ出会えた最終話。
あまりの素晴らしさに「すげーすげー」と何度もつぶやいてしまうシーズン7でした。
思えば、『ウォーキング・デッド』の世界は、RPGゲームに似ているかもしれません。
シーズン1ではやっとのことウォーカーを倒していた人間たちも、シーズン10にもなれば、片手間でウォーカーをやっつけられます。
キャラクターが経験値を重ねて、強さも成長していくんですね。
シーズン1からの成長率の落差が一番はげしいキャラクターがメリッサ・マクブライドが演じているキャロルです。
主婦で夫からDVを受けていた彼女が、自らの意思で行動できるようになり、一人で戦える戦士になっていきます。
お気に入りのキャラクターがいなくなってしまって、見るのを途中でやめたという人も多いでしょうが、RPGだと考えると、キャラクターたちがどんどん死んでいってドラマから去ってしまうというのも理解できます。
生き残る実力がなければ死に、失敗したら死んでしまう世界なんです。
RPGと一緒です。経験値がたりなければ、操作に失敗すればキャラクターは死んでしまいます。
主人公のリックは、俳優のアンドリュー・リンカーンの「家族との時間を大切にしたい」という理由でシーズン9で離脱しますが、ドラマ内では、どうやら死んではいない様子です。
来週からディズニープラスのスターで配信が始まるシーズン11がファイナル・シーズンですが、リックはきっと戻ってくるんじゃないかと思ってます。
リックが主人公の映画版『ウォーキング・デッド』が製作中です。
少なくとも最終話には戻ってきて、映画に連動していくんじゃないでしょうか。
一番好きだったキャラクターリックが帰ってくることを(信じて)見届けるために、ファイナルシーズンの最終話まで完走しようと思っています。