恋愛・ゴシップ・セックスという3大ロマンス要素にハマってしまう『ブリジャートン家』Netflix
【海外ドラマファンのためのマガジン第105回】
むかし「ハーレクイン・ロマンス」というロマンス小説がありました。
「天涯孤独の女性が実は大富豪の娘だった!」や、「使用人の娘が実は王族の血をひいていて……」などといった、大仰な設定が特徴のロマンス小説です。
このドラマティックな設定は、日本の "少女漫画 "にも似ています。
私が10代のころ読んでいた少女漫画といえば、貧乏か中流の家に生まれた少女が主人公で、タイプの違う二人の男性(繊細なタイプと荒くれ者。どちらもハンサム)に好かれて、「どっちを選べばいいの?」と困ってしまう……といった設定で、読者を惹き込んでいました。
絵に書いたような「ロマンスの設定」に、興味を持つ人(特に女性)は、世界的に一定数存在するということです。ハーレクインはカナダの出版社ですし。
ただ、この「貧しい家に生まれた女の子がモテモテになる話」のような、"昔ながらの設定”が、現代の若い女性たちにも好まれるのかどうかは、知る由もありませんでした。
Netflixドラマ『ブリジャートン家』を鑑賞するまでは。
Netflixオリジナルドラマ『ブリジャートン家』は、2020年12月に配信されて依頼、世界各国でヒットしています。
しかも、Netflix最高視聴者数を獲得したというニュースを目にしたときに、
大衆受けするロマンスの設定は、昔からさほど変わってないなと、知ったわけです。
『ブリジャートン家』は、19世紀のロンドンという設定で、貴族の世界での恋愛、復讐、裏切りなどのいわば「ゴシップネタ」をテーマにした恋愛ドラマです。
主人公の少女ダフネ(フィービー・ディネヴァー)は、貧乏ではなく貴族(子爵)の娘ですが、父親はすでに亡くなっていて、兄弟もたくさんいるので、長女としてなるべく位が高く財産もある貴族に嫁がないといけないのです。
覚悟をもって社交界デビューするのですが、持ち前の気の強さが災いして、気になる相手と心がすれ違ってしまう……といった、ザ・少女漫画な設定を楽しむことができます。
けれど、このドラマの面白さは、「典型的なロマンス」の要素だけではないんです。
常識破りな方法で、現代のドラマ制作時に生じる難問を、解決してしまっているところが魅力なのです。
2021年、アメリカでは、多様な人種をキャスティングすることがドラマ制作の絶対条件になっています。特に賞レースに出品する場合には、多様な人種、ジェンダーは、必須条件です。
ところが、『ブリジャートン家』の登場人物は、19世紀のロンドンで暮らす貴族たち。過去を舞台にした貴族のドラマで、「多様な人種」という前提を貫くのは、なかなか難しい問題です。
その難問部分を、「ファンタジーだから」ということにして、強引に解決してしまっています。
ドラマに登場する貴族を演じる俳優たちは、黒人やアジア系の俳優たちもキャスティングされています。
貴族の娘たちが、「結婚したい♡」と望む素敵な男性で、しかも公爵という役柄は、黒人俳優のレジェ=ジーン・ペイジが演じています。
もちろん、「19世紀のロンドンに黒人の公爵がいるのか?」という疑問が頭の中をよぎりますが、これは、歴史ドラマではなく、「ロマンス・ファンタジーなんで」という理由で押し通してしまうのです。
この手法、意外と盲点でした。
奥の手を使ってもポリシーを貫くというのは、新たな挑戦とも言えると思います。
考えてみれば、ハーレクインのロマンスや少女漫画の魅力である
「貧乏な家の息子だと思っていたら、実は大金持ちの家の跡取りだった」というような大げさな設定も、「ファンタジーだから」という理由で受け入れられてきました。
ファンタジー・ロマンスにすれば何でも解決!とまでは言いませんが、少なくとも『ブリジャートン家』の設定は成功していますし、その大胆な挑戦が、とても魅力的なドラマだと思います。
また、これも「ハーレクイン・ロマンス」に通じるのですが、セックスシーンもかなり登場します。
「恋愛」と「ゴシップ」そして、「セックス」。
この3つの要素が目の前にあった場合、無視できないのが人間のサガなのかもしれませんね。
わたしも、イッキミしてしまいました。
第73回エミー賞 12ノミネート
【ノミネート主要部門】
作品賞
主演男優賞 レジェ=ジーン・ペイジ(サイモン・バセット ヘイスティング公爵役)
監督賞 第1話「ダイヤモンドの輝き」ジュリー・アン・ロビンソン
次回は、LGBTQを描くドラマ『『POSE』シーズン3をご紹介します。
【エミー賞ー作品賞コンプリート紹介を実施中。#5】
ザ・クラウン
マンダロリアン
ハンドメイズ・テイル
ラヴクラフト・カントリー