ゴージャスな白黒映像で描くNetflixドラマ『リプリー』生粋の嘘つき男の魅力ハマる
トム・リプリー、生粋の嘘つき男。
嘘は嘘をつく本人が嘘だと知っているから嘘になる。
もしかして、本人が「嘘じゃない」と信じていれば、嘘は嘘ではなくなるのかも。
Netflixオリジナルドラマ『リプリー』は、パトリシア・ハイスミスの小説『The talented Mr.Reply』を映像化したもの。
過去には、アラン・ドロン主演の映画『太陽がいっぱい』(1960)や、マット・ディモン主演の映画『リプリー』(1999)でも映像化されている。
今回は、全8話のドラマで描かれ、リプリーを演じるのはアイルランド出身の俳優アンドリュー・スコットだ。
アラン・ドロン版は容姿が美しい邪悪なリプリー
マット・ディモン版は、嘘に嘘を積み重ねた先の不幸なリプリー
といった感じだが、アンドリュー・スコット版は、
執着が激しいサイコパスなリプリーという一言がぴったりくるだろう。
まあ過去作のリプリーも全員が執着が激しくて若干サイコパスなのだが、今回のリプリーは、執着の度合いがしつこすぎてある意味すごい。
彼の魅力にハマった。
リプリーはある犯罪を犯すのだが、自分の生活を邪魔をする邪魔者を始末するという単純な理由で重罪を犯す。
なんの計画性もなく犯した犯罪を、周到な後始末でカバーしていく部分にタレント(才能)がある。そして運の良さもある。
嘘つきリプリーの全8話を、いつ嘘がバレるのかと危惧しながら見てしまった。嘘はなかなかバレない。
運が良すぎるリプリー。
淡々と犯罪の後始末をするリプリー。
嘘をつき、事実をごまかすリプリー。
白黒映像で描かれるリプリーの嘘にまみれた人生がゴージャスで魅力的すぎて、いつしか、「このまま嘘がバレないまま終わってほしい」と思っていた。
だが、ばれる瞬間がやってくる。
当然といえば当然の結末。
このリプリーという男に興味を持った。
嘘をつくというのは誰でもする行為だが、リプリーのようにあえて危険を顧みず嘘をつくというのはリスクが高い。
そのリスクを恐れずに、というか、あえてリスクに挑むように嘘をつく。
究極、どこまで嘘をつきとおすことができるのか、挑戦したくなる気持ちは、少しだけ分かる気がした。
自分の中に潜むリプリー度を直視しないようにして鑑賞した。
実は、映画版『太陽がいっぱい』も『リプリー』も鑑賞していたが、今回のアンドリュー・スコット版を見て、初めて原作小説を読みたくなった。
やはり、ドラマで全8話で描くことで、よりキャラクターの深層心理を魅せることができる物語の魅力にハマれると感じた。
全エピソードの脚本・監督・プロデュースを務めたスティーブン・ザイリアンは、「物語を複数のエピソードにわたって展開させることで、ハイスミスの作品のストーリー、トーン、繊細さにより忠実になれたと」vanitifairのインタビューで語っている。
ちなにみに、このドラマがモノクロなのは、ザイリアンが読んだリプリーの原作小説の表紙に触発されたもので、「白黒はこの物語にぴったりで、ゴージャスだ」と、同じインタビューで語っていた。
Netflixドラマ版『リプリー』は、モノクロームの映像が本当にゴージャスで、想像を搔き立てられた。
今までの映画版では、感じなかった「原作を読んでみたい」という思いがわくほど、リプリーの魅力の虜になった。
しかも、パトリシア・ハイスミスの原作はリプリーシリーズとして5冊出版されているらしい。
しばらく、トム・リプリーという男に執着できそうだ。
パトリシア・ハイスミスの小説
The Talented Mr. Ripley (1955)
Ripley's Game (1974)
Ripley Under Ground (1970)
The Boy Who Followed Ripley (1980)
Ripley Under Water (1991)
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