映画『ポルトガル、夏の終わり』で、イザベル・ユペールの素をのぞき見
アイラ・サックス監督作『人生は小説よりも奇なり』(2014)を見たイザベル・ユペールが、監督にコンタクトを取り実現した本作。
ポルトガルのシントラという世界遺産もある美しい町に、女優フランキー(ユペール)が、家族や親しい友人を呼び寄せます。
ーーーあることを伝えるために。ーーー
イザベル・ユペールは、60代に入ってからますます美しく、さらに勢力的に映画に出演し続けています。
本作でも冒頭から水着姿を披露していて、他作ではヌードも厭わないユペ様を、突き動かしている衝動は何なのか、一度お聞きしてみたいものです。
変態な趣味を持つ役柄を演じることも多いユぺ様。
今回は、ハッと驚く裏の趣味的描写はなかったのですが、淡々とした世界の中にどっしりと腰を下ろしていらっしゃいました。
好きですね、イザベル・ユペール。
少し冷淡な印象と、ゆるがない気品を持ち合わせた女優さんですが、本当は気さくな人物なのかもしれない。
なんて、彼女について想像しています。
映画の中で、ユぺ様演じるフランキーが、散歩中に出会ったファンの誕生日パーティーに出席するシーンがあるんです。
わたしは、てっきり「ちょっと予定があるんで」などと言って、お断りするかと思ったのですが、フランキーは「じゃあ」って感じでパーティーに参加しちゃうんですよ。
外見は、冷たそうに見えても、中身はけっこう気さくという雰囲気が、わたしが勝手に想像しているユぺ様の私生活とシンクロし、ユぺ様を見ているのかフランキーを見ているのか、途中からちょっと分からなくなっていました。
ユぺ様の素のお姿を、見てしまったかのような感覚です。
アイラ・サックス監督の『人生は小説よりも奇なり』は、家族の突然の死について描いた物語でした。
本作では、家族の中に入ってきた死という現実を、複雑な人間関係を抱える一家がどう受け止めるか。
ということを描こうとしています。
複雑な関係性の一家は、ユぺ様演じるフランキーを中心に回っています。
彼女は、家族のこれからを考え、良い方向に導こうとするのです。
でも、結局、彼女の思い通りにはいかないのですが、
それはそれで、いいかな
というフランキーのおおらかな性格が、家族にとっては救いになっていくのかな?
と感じました。
ラストシーン、一家はみんなで、ペニーニャの聖域と呼ばれる山の頂上に登り、夕日を眺めます。
この美しい夕日を見たときに、
死というものは避けて通れない、けれども忌み嫌うものでもない
という気持ちが強く沸き上がってきました。
ある一家の、日常の中の、少しゴタゴタした一日の物語です。
『ポルトガル、夏の終わり』は、2020年8月14日(金)より公開予定です