見出し画像

伝統を守る難しさ

神職は神社の家に生まれた者でないと就けないと一般には思われていますが、そんなことはありません。
 現に私は神社の生まれでもありませんし、神職と結婚している訳でもありません。神社界では、家業として神職を務める方が大半ですが、今後は私のように、神社の生まれではないのに神職に就くケースが増えるのではないかと思います。


現在のところ日本には約八万八千社の神社がありますが、神職の資格を持つ者は約二万一千人と、神社の数に対して圧倒して神職が少ないのです。
 大きな理由の一つは、神職だけで生活していくのが難しい場合が多いことが考えられます。
 しかしこれに反して私は、神職というのは職業ではなく、生き方だと思っています。社家(代々神職を務める家系)の方からすると、私の考えとは異なる意見が出ると思います。一方で、この職は資格がないと務められない専門職でもあるので、線引きがなかなか難しいと感じています。


 お参りする側からすると、お正月やお祭りの賑やかな境内の様子や神事の神秘性などに注目しがちですが、神社は維持をするのに大変手間とお金がかかります。私は奉職してからこの現実を知り、伝統を継承する難しさを実感しています。神職の思いだけではどうにもならない問題も多く、神社や祠が廃れるのにはそれなりの理由があることも知っています。

 それでも、理想と現実はなかなか上手かみ合いませんが、この地に来たばかりの頃、それまでこの県と何のかかわりもなく、まして女性神職のである私を皆様に受け入れて頂けるか不安でしたが、ある総代が「女の神様が良くて女の神主がだめな理由はないよ」と励まされたことが嬉しく、今日に至っております。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?