忘れられた日本人
つい100年位前の日本はまだ識字率も低く、庶民や農民の生活はあまり記録されていません。そこで「民俗学」という学問が誕生したんですけどね。
「忘れられた日本人」は昭和14年当時の、農村の人々を中心としたたわいのない話や聞き取りが収められています。
中でも私が面白かったのは「女の世間」で、大島の田植えの時期に女の人たちがするおしゃべりが収められているのですが、
「わしゃあ、足が大けえてのう・・・」
「足の大けえもんは、穴も大けえちうが」
「ありゃ、あがいなことを」
「穴が大けえと、埋めるのに骨がおれるけに」
「よっぽど元気のええ男でないとよう埋めまいて・・・」
の会話のように、ポップなエロ話がこの後も繰り広げられていて、当時の人の雰囲気が伝わります(笑)
そういえばうちの宮司が子供の頃、田植えの時期によくからかわれて困ったと言ってたのは、こういうことなのかな・・・・
田植え歌にも性を歌ったものが多いのですが、作物の生産と人間の生殖を連想することは昔からあり、田植えのエロ話はその名残だそうです。
この章の結びには、
「エロ話の上手な女の多くが愛夫家であるのが面白い。女たちのエロ話の明るい世界は女たちが幸福であることを意味している。したがって女たちのすべてのエロ話がこのようにあるというのではない。
女たちのはなしを聞いていてエロ話がいけないのではなく、エロ話をゆがめている何ものかがいけないのだとしみじみ思うのである。」
とあり、私も堂々とエロ話をしようと思いました←
著者は晩年、
「いったい進歩とはいうのは何であろうか。すべてが進歩しているのであろうか。
進歩に対する迷信が、退歩しつつあるものをも進歩と誤解し、時にはそれが人間だけではなく生きとし生けるものを絶滅にさえ向かわしめつつあるのではないかと思うことがある。
進歩のかげに退歩しつつあるものを見定めてゆくことで、われわれに課されている、もっとも重要な課題ではないかと思う」
と述べていて、まさに現代に生きる私たちの課題だな、と感じました。
この本は、江戸末期~大正時代の一般庶民が何を考え、何を話していたのかを知る良い史料でした。
昔の方言は訳がないと分からん😢
ネイティブの山口県民に読んでもらいたいです(笑)
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