好きnote 33 「ハナレグミ」
佐伯真有美さんのInstagramを見て「永積さんに似てる人だなぁ」と思っていたら、本物の永積崇さんだった。
「永積さんに似てる人だなぁ」と思って見てたら本人だったのは、これで二度目である。
佐伯真有美さんは素晴らしいミュージシャンなので、こんなことが起こっても全然不思議ではない。だけど、たまたま沖縄で出会った私にもすごく自然に接してくれた驚くような思い出がある。
沖縄でハナレグミに出会った話をすると、とても長くなる。始まりは15年前に西表島に住んでいた頃に遡る。石垣島の大川という町中のあやぱにモール(今は名称が違うかもしれない)という商店街の中にひっそりある「JAZZ BAR すけあくろ」というお店がある。
あやぱにモールを歩いていたら、とっても気になる看板があり、音楽好きにはたまらないバイブスを感じ、ひとりで潜入した。カウンターバーのような店内にはカルメン・マキのポスターや、様々なミュージシャンのポスターが貼ってある。そのラインナップがすごく渋かった。そしてすけあくろに居ると何だか京都にいるような気持ちになった。京都と八重山をつなぐ音楽でつながる時空があるような場所。すごく不思議。オーナーの今村さんはとても音楽好きな方で、ご自身もベースを弾くミュージシャンでもあった。いっぺんに好きになってしまったすけあくろ。八重山に住んでいた時に、私はこのすけあくろでたくさんライブを観た。友部正人、Ett、ふちがみとふなと、オオヤユウスケ×芳垣安洋、そしてハナレグミ。
すけあくろに遊びに行った際に「今度ハナレグミが来ることになったんだよ!」とオーナーの今村さんから聞いた。当時の石垣島内ではハナレグミと言ってピンとくる人が少なかったようでハナレグミがわかるであろう私にその感激を伝えてくれた。「おお!それはすごい!すばらしい! それは絶対にいい!!! 今から楽しみすぎる! もし人手が足りなかったら手伝いますよ!」と興奮のままお伝えし、ライブの予約をして帰った。
すけあくろでのライブが近づいたある日、今村さんから電話がかかってきて「本当に人手が足りなくなってしまったから手伝ってほしい」と言われ、すけあくろの為、ハナレグミの為なら何枚でもひと肌脱ぎましょう!とお手伝いをすることにした。
当日はドリンクスタッフを担当した。オリオンビール、請福の島酒、白百合の島酒、八重泉の島酒、ソフトドリンクをひとすらさばいた。よく売れたと思う。カウンター内に居たので半地下ステージの様子は見えなかったが、大好きなすけあくろの中で、大好きなハナレグミの生歌が聴こえる。しかも、何ならハナレグミのライブを観る側ではなく、手伝う側になれた突然の幸運と喜びを噛みしめていた。
ライブが終わって、ドリンクの片づけをして帰るつもりが、今村さんのご厚意で打ち上げに参加させてもらうことになり、なんと私の隣に曽我大穂さん、その隣に永積さんという狐に化かされてるとしか思えないひと時を過ごした。「そんなことあるわけない!」と「なんて幸せなんだ!」という気持ちが混ざり合い、どうしていいかわからん感慨に浸りながらも、ちゃっかりハナレグミのCDとSUPER BUTTER DOGのCDを持って行ってサインをしてもらう図々しさも発揮した。
永積さんと生まれ年が同じということで何故か高校時代の話になり、永積さんと曽我さんの自由の森学園時代のお話しを聞かせていただいたり、音楽との出会いや、音楽を仕事にされることになった話等を聞かせていただいた。そのお話しの中でとても印象な言葉があった。「仕事をしているという感覚があまりなくて、ただ自分が歌って気持ちよく、こんな気持ちいいことをしてお金をもらっていいのだろうか…と思う」と真剣におっしゃっていた。何ていい人なんだろう!!!と思い、よりハナレグミが好きになった。
それから半年後、私は八重山を離れ、神戸に戻る前に沖縄本島に寄り、名護のハッピーフラワービーチパーリーの手伝いをしてから帰ることにした。
ボ・ガンボスのどんとが始めた名護のビーチに手作りのステージを作って3日間行う楽園のようなライブイベント。私はほぼ受付にいた。受付にいながらぼんやり「このライブでハナレグミの歌が聞けたら最高だなぁ」と思った次の日、なんと飛び入りでハナレグミがステージに立っていた。
「なんでや?」と思った。こちとら受付で出演者とお客さんを分けて案内していたというのに。全然知らんし聞いてない!!
ステージに立った永積さんは「たまたまプライベートで遊びに来てたら行くとこ行くとこで”ビーチパーリーで来てるんでしょ?”と言われたので急いで来てみました」と言い、どんとの息子さんのラキタくんと一緒にセッションして2曲歌ってすぐに帰って行った。夢かと思った。
その2日後、神戸に帰る前に宜野湾に寄ってぶらぶら歩いていたらお腹が空いてきて、「何か美味しいものを食べたい!」とアンテナをびんびん立てて歩いていたらベーグル屋さんの看板を見つけた。これは美味しいに違いない!とお店の前の立て看板を見て判断し、店の中に入ると永積さんがいた。
「まさか、そんなはずはない!」と、「永積さんに似てる人なだけだ。よくある顔(?)じゃないか」と自分に言い聞かせながらベーグルを注文したが、声がどう考えてもハナレグミなのである。さりげなく後ろを振り返ってみるとやはり永積さんだった。「こんなことあるのか!?」と思いながら、やっぱり話しかけたいと思い、かなり挙動不審な動きをしながら、「ハナレグミの永積さんですよね?」と声をかけると「あ、はい!」と率直に答えてくれる爽やかさ。
どう説明していいかわからないまま、「3月の石垣島のすけあくろのライブでドリンクスタッフをしていて、一昨日のハッピーフラワービーチパーリーでスタッフをしていた者です。その節はありがとうございました。一昨日のハッピーフラワービーチパーリーの歌、本当に素敵でした。スタッフをしながら、こんな場所でハナレグミが聴けたらいいのになと思っていたら、まさか本当に来てくださるとは思ってなかったので驚きました」というようなことを何とか伝えたと思う。
永積さんは喜んでいろいろ話してくれたのだけど、私はいかんせんとってもお腹が空いていた。私が注文したホカホカのベーグルサンドが私の席に届いたことを確認すると、「じゃ、ベーグル来たんで!」と自分の席に戻ってベーグルを食べた。これ以上どう話していいかわからないという部分もあったが、花より団子、ハナレグミよりベーグルである。どんだけ食いしん坊なんだ!! 私のアホ!!!
それからしばらくして「じゃ、また!」と永積さんの声が店内に響いた。ああいい声だと思ってぼんやりしていると何度も永積さんの「じゃ、また!」という声が聞こえる。「そんなにお店の人と仲が良いのか?」と思いながら、永積さんの声がする出入り口を見ると何と私に向かって、ずっと「じゃ、また!」と言っていたではないですか!! 私のアホ!! この話を友人にしたところ「スターに気を使わせるんじゃない!」と怒られた。最もである。
あまりに何度も近い距離で永積さんに会ってしまったので、興奮して冗談で友人に「永積峰子になったらどうしよう!!」と電話してみら「そんな訳あるか!」と爆笑された。
私の中でハナレグミ、永積崇さんはその時の印象がとても強くて、のびのびと軽やかに気持ちよく歌う風のような爽やかな人。どこまでものびのびと気持ちよく歌い続けてほしいと思っていた。
しかし、ある時、ラジオから流れるハナレグミの歌を聞いて、のびのびと気持ちよく歌えなくなっているのではないか?と感じることが続き、大好きだったハナレグミの歌を聴くのがちょっと辛くなって聴けなくなった。あんなにのびのびと歌っていたのに…。いい声は変わらなくても、何かどこかもがいているような、気持ちよく歌うより、考え込んでしまってるように感じていた。「仕事してる感覚ではなく、気持ちよく歌っているだけでお金をもらっていいのかなと思う…」と言っていたことを真剣に考え込んでしまったんじゃないか?
それは私が感じたことなので、現実はめちゃくちゃ元気で気持ちよく歌っていたのかもしれないけど、私は何かそう感じてしまい、この何年かずっと聴けないでいた。
だけど、知人のInstagramの中で、惜しげもなくギターをプレゼントしている姿を見て、「ああ、あの時の永積さんと何も変わらない!!」と勝手に嬉しくなった。永積さんに似てる人だと思っていたら本人だったことも、何気なく惜しげなくさらりと人に思いやりのある行動をとれる姿も。やっぱり好きだなぁ…と思って久々にハナレグミの歌を聴いた。昔大好きだった歌じゃなくて、今のハナレグミを聴いてみようと思った。
そこにはのびのびと歌っていた頃から年齢を重ねて一回りして、またのびのびと歌っているハナレグミの歌声があった。
何かよくわからないけど、すごく「よかった!!!!」と思った。のびのび歌っていたかどうかなんて本人にしかわからないし、私が聴いて勝手に感じていたことなんだけど、何かすごく「よかった!!!!」と思った。のびのびと歌う歌の翼を取り戻したんだなぁと勝手に感じて、「発光帯」を聴きながら涙する私がいた。
アマゾンミュージックで聴いたけど、何だかCDのアルバムを欲しくなったなぁ。
のびのびと気持ちよく歌う永積さん、ハナレグミが大好きだって、改めて思えて何だか嬉しかったという話でした。