好きnote 37「みうらじゅん」
20代の一時期、めちゃくちゃみうらじゅんにハマった。
ちょうど「マイブーム」とか「いやげ物」の時期である。
何でみうらじゅんを知ったのか覚えてない。
いつの間にか知っていて、いつの間にかハマっていた。爆笑とか苦笑いではない、何か変な笑いが自分の中から出てくる。来るぞ来るぞ!と思ったツボとは違う、めっちゃ絶妙な笑いのツボを押してくる。
めちゃくちゃ本を読んだし、作品展にも行ったし、ブロンソンズのCDも買ったし、サイン会にも行ったし、映画「アンデン&ティティ」も観に行った。ハマりすぎてその頃親しかった知人に「みうらじゅんに抱かれたいんでしょ?」と言われたけど、そういうんじゃなくて単に笑いたかっただけなのかもしれない。自分の中から出る変な笑い中毒みたいになっていた。
そんなにハマっていたみうらじゅんだけど、いつの間にか追わなくなった。みうらじゅん自体は活動し続けていたと思うのだけど、みうらじゅんが若い頃から付き合って結婚した奥さんと離婚して、女性アーティストの妊娠をきっかけに再婚したことを知ったら何か一気につまらなくなった。
「みうらじゅんはどんなに浮気をしても、ずっとあの彼女(アイデン&ティティの彼女は奥様がモデル)を大切にすると思っていたのに、華やかな業界人の女性になびくなんて!」と勝手に自分が抱いていたみうらじゅん像に反するだけで興味を無くした。持っていた本も手放したし、作品展とかそういうものにも行かなくなった。私が奥さんだった訳じゃないのに、何か「見損なった!」みたいになって、面白いって思われへん!ってなっていた。それから長いことみうらじゅんに触れていなかった。
去年の年末から京都の大山崎美術館でみうらじゅんの「マイ遺品展」が行われているのを知ったけど、なかなか行く気にならなかった。友人たちのSNSで「マイ遺品展」に行った投稿が少しずつ流れてくる。ちょっと気になってきた。
どうしようかなぁ…とタラタラしてたけど、「えい!」と思い切ってマイ遺品展の最終日に大山崎美術館へ行ってきた。
思い立って行ったので、いまいち場所がわからない。どうしようかな?と思っていたら、何とJR山崎駅から送迎バスが出ていた。作品展を観るのに送迎バス?? すごいなと思っていると入場の際さらに驚いた。入口まで並んでるなと思ったけど、美術館のスタッフの方が「こちらから入場まで40分待ちになります」と言った。
「みうらじゅん展、人気アトラクションか!!!」
久々の行列。まさかのみうらじゅんのマイ遺品展の40分待ち。しかしここまで来たら行くしかない。断念せずに少し寒かったけど入場を待った。
私がハマっていた頃のマイブームコレクション後の世界にも圧倒された。
本当にどうしてこんなものを…。
1つしか無ければ、それは取るに足らないどうしようもないものかもしれない。しかし、「何やねん、これ!」と思うものこそ集めると、想像だにしない宇宙が広がる…。好きになったもの、執念や執着も、ここまで昇華したらアートになるんだな。たぶん…。
私のnoteを始めた際、自分の「好き」「好きなものに対する愛」をとどめることなく放出して書きたいと思った。好きなものを書く以外のコラム的なものも最近増えてるけど、好きなものへの愛をひたすら語らいたかった。
しかしそれだとやはり自分語りにとどまってしまう。みうらじゅんは「好き」とか「面白い!」と思ったものを、どうしたら他人も面白く見えるか?をしっかり考え、客観的なツッコミを大事にしつつエンターテイメントにまで昇華させている。久々にみうらじゅんワールドに触れて、やっぱり自分が感じる「好き」とか「面白い」って大事だなぁと思った。私ももっともっと「好き」とか「面白い」って感じるものを追求しようと思えた。もっともっと私の吉田峰子汁を出していきたい。
みうらじゅんワールドに浸って帰ってから、みうらじゅん原作、田口トモロヲ監督、宮藤官九郎脚本の映画「アンデン&ティティ」のパンフレットを久々に開いてみた。パンフレットを見ながら映画を思い出していると、ふとみうらじゅんの「好き」や「面白い」はロックなんだと思った。改めてみうらじゅんの世界に触れていこうと思った。
映画アンデン&ティティのラストシーンがパンフレットにも掲載されていたので、そこに書かれていた文章を書いて終わろうと思う。
***
アイデンはロックを諦めることができなかった
そして長い長い本当に長い旅が始まったんだ
いろんな価値観の中で僕らは生きている
みんな生きるのに一所懸命なんだ
自分以外の価値観を否定してばかりでは何も生まれない
じゃぁロックの価値って何だ?
自分らしくあること?
じゃあ自分って何だ?
ティティは芸術家でいつも自由でだから誰も彼女を手に入れることはできないんだ
そして男は女性が許可したことや励ましてくれたこと以外は何もしたことがない
みんな心の中にもきっとロックは住んでいる
そのロックはきっと言うだろう
「やらなきゃいけないことをやるだけさ
だからうまくいくんだよ」
***
そういえば離婚と再婚について書いてた文章は、ぜんぶ自分が悪いと一切言い訳しなかった。
音楽ではなく、カスハガやムカ絵馬や飛び出し坊やを扱っていても、みうらじゅんにとってのそれらはすべてロックなのであろう。
どんなくだらないものにもロックを見いだす人なんだろう。知らんけど。