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好きnote 36 「手紙」
今日たまたま短大の同級生ふたりから手紙が届いた。短大の頃からの付き合いなので、もう30年近い付き合いになったんだなぁと思うと何だか空恐ろしい。時間とは一体何なのか?
ちょうど最近、いらないものをなるべく手放すべく持ち物の整理をしていた時、古い手紙をたくさん読んだ。18歳の誕生日に友達からもらった手紙。東京の高校生だった私が神戸の短大を受験しに行く前日に友人がくれた手紙。高校を卒業して神戸に行く時に友達がくれた手紙。新卒で働いたけど1年で辞めてしまった職場の上司からもらった手紙。10代後半から30代前半にもらった手紙を主に捨てられない手紙がある。
10代から20代の手紙は恋とか将来の夢に向かって頑張る友人、慣れない仕事にストレスがたまっている友人、出産を前にシングルマザーで生きる決意した友人、私が書いた文章に対する感想、海外旅行や沖縄から届いた手紙、私が落ち込んでいるのを心配してくれている手紙、いろんな手紙の中にいる友人たちの文字が躍る。20代中旬からパソコンや携帯のメールのやりとりが主流になってくるけど、私はやっぱり手紙が好きだ。
今は音信不通になった友人の手紙もある。何となく音信不通になったとかではない友人からの手紙を忘れないようにあえて持っている。捨てた方がいいのかな?とも思ったけれど、人前でいい人のようにふるまっていても、人をガッカリさせたことや裏切るようなことをした自分のことも忘れない為に。
20代前半に働いた会社の同僚の男性から届いたハガキや手紙が何枚かあった。届いた当時は特に気にしてなくて、今こんなところにいるんだとか、今こんなことしてるんだとか思って読んでたと思うんだけど、よく見ると結構な枚数があって、今頃「もしかしたら私のこと好きだったのか?」と思った。どんだけ鈍感なんだ私よ。
新卒で働いたけど社会人としての意識が低くて働くことがしんどくて、何にも取り柄がないと自信を喪失して辞めた幼稚園の上司から、七夕の短冊でこんなものがあったよ。どんなに自分がダメだと思っても見ている人がいるのよと届いた短冊が同封されていた。
時系列が狂うけど、短大の受験前に友人がくれた果たし状を見ると毎回笑ってしまう。
私が初めて買ったimacに届いたメールの中で忘れたくないものをプリントアウトしたものもあった。それは友人からのものと、昔メールマガジンにコラムを書いてた時の読者の方からのもの。
当時も読んでるはずだけど、今読むと何だかすごく胸に響いた。半ば衝動のように書き散らしていたコラム。文章を書くことが自分の精神安定剤のようだった。ライターになりたいと思って挑戦したけど、最終的に急性胃腸炎に何度もなるくらいのストレスで辞めた私が、誰かや何かにスポットを当てるんじゃなくて、自分にスポット当てて書いた。今の私が自分について文章を書いている始まりのようなコラムだった。
直接お会いしたことないけど、直接お会いしてないからこそかも知れないけど、文章をじっくり読み、親身になって文章の中にいる私の心情を読み解き、語りかえるようなメールだった。メールアドレスが書いてあったので、今このアドレスにメールを送ったら届くのだろうか? と思った。今からでも改めてお礼を言いたいな。
ひとつ異質な手紙があった。亡くなった先輩に宛てた届かない手紙。
ライターに挑戦したけど挫折して、少し経ってから働いた会社で出会った先輩。正直で感情がすぐに出て正義感が強くて優しかった。数年働いたその会社を辞める時「若いんだから、いろいろ挑戦しなよ。挑戦できることは羨ましいことだよ」と言って送り出してくれた先輩。健康診断で心臓に異常があるから再検査をするように言われていたけどそのままにしていたある日、職場で胸が苦しくなって早退して、そのまま家で亡くなったと聞いた。
その先輩に私が書いた手紙。先輩に送り出してもらったのに、またしても挫折していた私(どんだけ挫折してるんだよ)は、手紙にこんなことを書いていました。
***
滝口さん今は何をしていますか? 空を飛んでいますか? お花畑はありますか? 美味しいチョコは(チョコ好きでしたね)ありますか?
私は滝口さんと会えなくなってしまうのがとても淋しい。本当はもっと話せることありましたよね。私の夢の続きを見せることができませんでしたね。私は滝口さんに何も返せてない。何もお礼もできずじまいになりますね。
では私に何ができる?
今は今を思い切り生きること!
歌を歌うことしかできません。
太陽がたっぷり浴びれるところで体をいっぱいに使ってお客さんを喜ばせること。
とにかく歌を歌ってみようと思います。
生きてることを喜んでいる歌を、滝口さんへ歌い届けます。
***
これが何だか不思議で。
この手紙を書いた頃はまだギターを買ってなくて、ギターを買って歌いだすのは恐らくこの手紙を書いた4年後になるはず。
何で歌を歌ってみようと思いますと書いているのか??
その時の私の精神状態がどうかしてたのか??
こんなことを書いていたことさえ忘れてた。何で自分ができることとして歌うことって書いたんだろう。そして、そんなことをすっかり忘れた頃に私はギターを買って歌いだしている。そこには先輩との約束もあったのかなぁ。
そんなことをしみじみ感じていた時に、たまたま聴いたクラムボンのタイムラインという曲にグッときた。
手紙を読むと、当時のことや気持ちが一気に思い出される。忘れていたことも懐かしく蘇る。今は会えなくなった人とも文字を通して会える。
歌ってもしかしたら、誰かに宛てた手紙なのかなぁと思った。具体的に思い浮かべる誰かがいるかどうかはわからないけど、たったひとりの誰かに届けるように書いた手紙のような歌が私は好きで、突然それをキャッチして受け取ったような気持ちになった時、音楽は素晴らしいと思う。
クラムボンと言えば、20代の時によく聴いたこの曲も大好き。
先輩への手紙や大好きな詩を朗読したstand fmのリンクもちょっと貼っておきます。
今日届いた短大時代の友人からの手紙。
そのふたりからの手紙もいろんな時代を経て、ずっと大切にとってあります。喧嘩したり、お互いに距離をとった時期があっても、何だかつながっている。
意見が合わなくてもうしんどいと思っても、昔の手紙を読んで、縁を切るとことまでいくのはよそうと思うこともある。
昔の自分や友人から励まされることもある。
手紙にはそんな力があると思う。
そんな手紙が私の宝物で、やっぱり捨てられない。
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