見出し画像

MBSR講師がMBSR8週間コースを再受講してみて感じたこと

当センターでは、ドイツのthe Institute of Mindfulness Based Approaches(IMA)と連携し、2021年4月からマインドフルネスストレス低減法(MBSR)講師養成講座を開催しています。

その1期生として2022年10月にトレーニングを終え、MBSR講師となった家永さんにご寄稿いただきました。作業療法士として精神科のクリニックのデイケアに勤務されながら、MBSRを教えることを学び、感じていることとは。(ご本人プロフィールは文末)

2023年2月11日(土)から土曜夜のMBSR8週間コースを開講予定です。
>>詳細こちら
以下、家永さんの寄稿です。

講師になった今だからこそ、そのMBSRをもう一度受けてみた

家永さんは、2021年4月からトレーニングに参加し、1年半のトレーニング期間を経て、ドイツIMAよりMBSR講師資格の認定を受けました。そのタイミングで受講生として参加したMBSRの体験記です。

MBSR講師としてスタートラインにたつことが出来た。そんな今だから、MBSR8週間コースを受講したいと思った。もちろん、どんな風にお伝えしているのか、という講師スキルを盗んでいこうという欲は多分にあった。しかし、1回目のクラスが終わったころには、そんな気持ちがどこかに行ってしまい、純粋に受講生となっていた。その中の体験をつづっていく。この中で言いたいこと「MBSR講師養成講座でたくさん学んで、その間たくさん練習したからこそ、受講生になるのは、楽しかった」

直接的な体験に触れるって面白い!

講師としてのスキルを高めたいという思いもあり参加したMBSRで、初心を取り戻したタイミングが合ったといいます。
その初回のクラスでは、受講者のみなさんが、沈黙の中で、井戸の中に小石を落とす、というイメージの中で、①なぜMBSRに参加しているのか、②これからの8週間どのように実践煮込みっとしていくか、を自らに問いかける時間が取られました。

1回目のクラスで衝撃を受け、「講師スキルを盗んでやろう」の欲がふっとんだ出来事は、「どうして、このコースに参加したのか」の問いかけだった。
イメージの中で、井戸に石を投げ入れていく、というガイドの声が聞こえてきた。想像の石であってもその時想像した石に何か意味があるのだろう。触れている感覚、重さなどただそのままを感じていた。井戸に投げ込まれる石。
自分が深いところに落ちていくような何かに引っ張られていく感覚があったかと思うと、その後、何か体の奥から浮かび上がる感じがあり、日常でよく出てくる過去のイメージが現れた。そのとき、「あー、私は、この状況に巻き込まれずに過ごしたいのだ」と感じた。
日常でイメージが出てくるときは、それに対して自動反応的に感情的になったり、思考の連鎖反応が起きたりする。しかし、このときは、この状況をこんな風にしたいんだ、とあまり感じていなかった。
これが、このコースに参加した目的になった。


この振り返りの際に、困難な状況に巻き込まれずに過ごす、ということがマインドフルネス実践の意図として浮かび上がってきたといいます。

ホームワークが義務から興味へ

MBSRから切っても切り離せないのが毎日の実践です。参加者は自宅で45-60分程度の瞑想実践や気付きの時間を持つことを求められます。忙しい毎日の中でこの時間を捻出することは、覚悟のいることです。その中でも、家永さんは、「ホームワーク=絶対しないといけないもの」という義務感で行うものから、楽しみを見出すに変わっていったといいます。そこには、「気づき」がありました。


MBSRは、気づきのトレーニング。そう学んできた。以前コースを受けたときは、ボディスキャンをして、眠ってしまったときにも、自分自身に対して「眠ってしまったことに気づかれたんですね」「そのとき、ちゃんとしていないという思いに気づかれたんですね」と言うような言葉がけはして挙げられなかった。
しかし、MBSRの学びを深めることで、「気づく」という広さが身についてきた。何かするたびに「あー、こんなこと思ってる」「こういう状況のとき、こんな風にするんだ」ということを面白がって眺めていくことが出来た。
そう思うと毎日のホームワークが楽しくなった。以前は、「ホームワーク=絶対しないといけないもの」と自分を縛り付けるものでしかなかった。
(このことについても、「ということは、以前のコースでは何事も楽しみを見いだせず、しなければならないと思ってしている自分に気付けたってことですね」と今の自分は言ってあげられる)

体験が自分を導いてくれる

そうしてPractice Dayを迎えます。Practice Dayとは、通常6週目と7週目のクラスの間に行われる、終日、瞑想実践を行う一日です。それまでに実践してきた様々な瞑想を、沈黙の中で行っていきます。この日の後半は、座る瞑想を歩く瞑想を繰り返し交互に行い、内側に気づきを向けていく時間が取られました。

1日通して瞑想の練習を行うPractice Day。その中で行った歩行瞑想。静かな座る瞑想と座る瞑想の間に行うからだろうか?動きの中での気づきが多い。そして、今まで行った歩行瞑想で何度も気づいてきた感覚にプラスするような感覚の気づきがある。
運動学の歩行のページの図をそのまま体感したような重心の移動。踵から足裏の体重移動の道を感じる。足趾が、くっと曲がって床をつまむ感覚。そこまでは、以前から気づいていた感覚。それに加えて、床をつかむからこそ、その反発力として体が前進する推進力を体で感じる。
「今を感じること、それは今に留まるということでない。前進する力をいただくこと」そんな気持ちになった。以前の私は、怖がりで新しいことが苦手。講師養成の学び過程で少しだけ、「やるとき、やらないと」となった。そんな今だから、「進む」ということへの応援旗の存在に気づいた。

その実践の中で、思考から直接的な体験へ注意が向くことで、自然のプロセスが自分を前進させてくれることを体験しました。

それでも心の癖は残っている

一方で、まだ難しさを感じる実践もあるといいます。MBSRでは、大きく3種類の瞑想実践を行います。ボディスキャン、歩く瞑想、ムーブメント(ヨガをベースにした動きの実践、立って行うものと寝て行うものの2種類がある)の3つです。この中で、ムーブメントの実践は、体の機能性を高める(柔軟性や筋力)というよりも、自分の身体感覚や、体が限界に近づいたときの自動反応的な心の状態に気づくことを行っていきます。そのムーブメントの実践で、自分の心のくせに気づいたそうです。

ムーブメントも動きがあるので、自分の癖がよく出る。講師が作成した練習の音源ガイドに合わせて行うと、絶妙なタイミングで自分の癖を引き出してくれる。
きついポーズのときに、ちょっときつくなってきたころに「下ろしてもいいですし、このまま少しきつい感覚の中に留まってその感覚を見てもいい」というガイド。
この言葉のはじめの言葉で「終わりか」とほっとして下ろしかけたら、「このまま」という言葉が続くと「当然、下ろしたりしないよ」とポーズをとるために体に力を入れること、毎回。
そのとき、日常で自分が「この人、要領がいい」とレッテルを貼ってる人がよくイメージで流れる。見えない敵と戦っている。

ムーブメントの実践では、他の人との競争ではないし比べる必要もなく、ただ今の自分の体や心の状態に気づくようにとガイドをされます。それでも、普段の心の癖で、頑張りすぎたり、なにかその動きに意味付をしたりという心の動きが現れることがあります。皆さん、無意識のうちに体を頑張らせすぎているようなことが無いでしょうか。

Practice Dayでも同じことが起こる。ムーブメントの後の座る瞑想で、何かを悔しがっている自分のイメージがわく。「あー、あの少しきつい感じは、この気持ちを埋めるために必要なんだ」とふと思う。でも、よくよく考えると「見えない敵」。そのきつさは、本当に必要なのか?自分に本当に必要な丁度いいは、どこだろう??

自分を甘やかすでもなく、過度に苦しい思いをさせるでもなく、程よい努力をするということが、MBSRのテーマの一つとも言えるでしょう。

マインドフルネスは、自分を高めていく楽しい螺旋階段を上ること

マインドフルネスの実践は、するたびに気づきがあることもあれば、単調に思えることもあるでしょう。その中で、家永さんは、MBSRを改めて受講したことが、いまの自分の位置を示してくれた、といいます。
MBSRに参加することは、参加者一人一人が自分自身の対話することとも言えます。MBSRという鏡を通じて、そのとき時の自分を眺め、そのとき時の自分に応じた気づきを得ていく。私(宮本)も定期的にMBSRやMBCT、その他のプログラムに参加し、新たな気づきを得たり、過去に気づいて忘れていたことを思い出したり、を繰り返しています。

学びを深めてMBSR講師となった今だから、たくさんの体験が出来た。その時起こる体験は、違ってくる。以前、もしくは何かの折で「こうなりたい」「こんな人生を歩みたい」を大きな目標をたてたということがあるかもしれない。MBSRを受講することに「今、どの位置にいるのか」という道しるべになってくれる。そして、「次は、ここをこんなふうになるために、マインドフルネスがこんな風に役立つので、もっと練習しよう」と練習のモチベーションにもなってくれる。練習していて、気づいたことも、クラスに入ると、色々な問いかけをしてくれるので、気づきが一段深まっていく。「マインドフルネスは、終わりなき旅」と思うとちょっと、苦しいけど、「自分を高めていく楽しい螺旋階段を上る」だと、止まるということそのものがなくなるのかもしれない。日常の中で色々な経験をして、またこのコースに参加してみようと思う。

螺旋階段を登るように、同じことを繰り返しているようで、少しずつ階段を登っていくような体験。そこに新たな興味やフレッシュな目を向けて取り組んでいくことで、新しい気づきも得られるでしょう。

講師紹介 & 家永さんのMBSR8週間コース

家永さんのMBSRコースは以下にて実施されます。無料のオリエンテーションも行っていますので、ご興味あればご参加ください。
(以下をクリックしていただくとコースの詳細へとびます)

また、この2月期は、以下のMBSRコースも開講しています。(日程は開講日、名前のあとはMBSR講師資格以外の関連する分野)

以下()内は開講日
日曜朝(2月5日)8:00-10:30 宮本:MBCT, MBCL, MBPM講師
月曜夜(2月20日)19:45-22:15 江崎:公認心理師、産業カウンセラー
火曜昼(2月21日)9:00-11:30 粟野:企業、コミュニティ
火曜夜(2月7日)19:45-22:15 井上:MBCT, MBCL, MBPM講師
水曜夜(2月7日)19:45-22:15 小保方:精神科医
金曜夜(2月10日)19:45-22:15 叶:臨床心理士、スクールカウンセラー
土曜夜(2月11日)19:45-22:15 家永:作業療法士(精神科)


いいなと思ったら応援しよう!

International Mindfulness Center Japan
最後までご覧いただきありがとうございます。一緒にマインドフルネスを深めていきましょう。お気軽にご連絡下さい!