ハチワレの愛は重い。
白猫逝去から早、2か月半。
一見、これまでどおりの日常を、夫と私、黒猫の3者はそれぞれ送っていた。
見送れたし、白猫の存在を、いつも良い形で感じられていたから、ロスは、本当に苦しんでいる方々から比べたら、ないに等しいと言ってよいだろう。
リラックス系のオンライン研修中、ふと白猫の茶色がかった毛を背もたれから見つけてしまい、突然オイオイと泣き出すようなことが、あったにせよ。
(毛はセロテープで挟んで保管した)
事件はふとした時にやってきた。
19年間、極寒時にコタツに入ることはあったにせよ
基本、白猫と黒猫は、私と一緒に眠っていた。
白猫が先にベッドで良い位置を確保し、テレビを私と一緒に見ている黒猫に
私が「寝るよ!」と声をかけることで
黒猫が私についてきて、一緒にベッドで寝る、という形は、白猫不在でも、変わりなかった。
ある日。
私はとても眠かった。
私以外に責める対象を探すとなれば、パリオリンピックであろう。
1時になっても寝れない私にとって、パリオリンピックは、不眠の温床だった。だって選手たちすごいし、接戦面白いし。時差が悪い。
そして今流行りの、睡眠負債と呼ばれている、睡眠の借金が、積み重なった結果
私はある日、黒猫に
「寝るよ」
と声をかける余裕なく、ベッドに向かって寝落ちした。
朝。
???????????????
いるはずの黒猫が、いない!
白猫の長い闘病を看てきた私が即座に考えたのは、黒猫の体調悪化だった。
慌てて探しに行ったら
食卓の椅子で、
目を三角 (▼▼=
に吊り上げている、黒猫の姿だった。
(写真はない)
「どうしたの???」と聞く私に、ものすご~~く不機嫌な、黒猫。
もしかして、「寝るよ」の一言を言わなかったからかな・・・
一晩ベッドに来ずに、ここにいたのかな・・・?
でもまさか、まさかそんなことは。
私が起きるより早くたまたま、黒猫が先に起きたから、食卓行ってただけだよね。
「なんか怒ってるみたいだけどさ、私だって寝落ちすることはあるんだからね? まさかそんなことで怒ってないよね? 来ないあなたの方が悪いんだからね?」
そう声をかけ、正常化バイアスにより、つつがなく一日を終え帰宅した私に対し
私より1時間早く起きる夫は開口一番にこう言った。
「今朝、黒猫があなたと一緒に寝ていなかったけれど、何かあったの!?!?」
・・・・・・・・・・・・・・。
もはや猫又的に言葉もわかるので、黒猫と、話をしようと考えたものの
何だか塩対応で、寄って来てすらくれない。
あろうことか黒猫、普段乗らない夫の膝に乗る始末。
放置して風呂に入る。
1時間後、風呂から出ると、黒猫はなんとまだ、夫の膝の上にいた!
過去最長記録ではないだろうか。
黒猫、私が風呂上がりで出てきたのを確認してから、夫の膝からこれ見よがしに下りる。
夫も夫で、私と黒猫の間に亀裂が入っていることに勘づき、ここぞとばかりに
「いや~こんな長くいて、膝が痛くなっちゃったな~、やっと降りたわ~」
とかヘラヘラ言う始末。
オマエらなんなんだよ。普段お互い無視してるくせに。
イライラ感半端ない。
黒猫を捕まえ、長々と話す。
「あんたねぇ、昨夜の寝落ちを根に持っているみたいだけれど
私だって、急に寝ちゃうことは、あるのはいい年だしわかってるよね!?
何でそんな怒ってるわけ?
食卓からベッドたったの2mだよね?
私が寝てるのわかってるよね?
来れば良くない?」
膝には乗るが、何だか不満気だ。
夫も夫で、黒猫の援護射撃を始める。
「あーあ( ̄ー ̄) 黒猫はずっと夜呼ばれることを大事にしてたのにねー
毎回それで揉めてるのにねー」
そうだっけ?
夫曰く、何年かに一度は、同じ内容で、私と黒猫は不和を起こしているらしい。
確かに、ずっと黒猫は、私が呼びかけると、嬉しそうについてきてくれていた。
「寝るよ!」
と声をかけ、一緒に寝室に行くことは、もしかしたら、黒猫にとって、大切な日常だったのかもしれない。
再び、黒猫の顔を白刃取りのように挟みながら長語りする。
「あなたにとって、寝るよの声かけは、私が思っている以上に大切なことは、わかった! でも、私も前より夜更かしだし、あなたはすぐ寝てしまうし、今後もこういうことは、あると思う! だから、眠かったら、ちゃんとベッドで寝て待っていてほしいし、私が声をかけなくて寝落ちしても、あなたが大切じゃないってことじゃないから! あと、意識がちゃんとある時は、声をかけるようにするから!」
その声かけをするようになってから
黒猫はなんと、自分から先に、ベッドで待つように、なった・・・。
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