センターテア考

センターテアを知らない人は、一昨日来るか、マジックの本でも読んで勉強してください。
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さて、センターテアという技法は、比較的簡単に習得でき、実践もそんなに難しくないにもかかわらず、あまり効果的に使われているのを見たことがありません。
「効果的」というのは、ショーが終わった後にそのネタの話題で持ちきりになる、というレベルに達している、という意味です。

「こんな単純なトリックでそんな無茶な」と思う方もいるかもしれませんが、そもそもこのトリックの使い手だった霊媒(ミディアム)たちは、これを使って本物の読心術や霊のお告げと思わせていたのですから、マジシャン/メンタリストもやりようによっては、本当に心を読み取ったと思わせることができるはずですし、そうでなければ単なるつまらないトリックに終わってしまいます。

多くのマジシャンやマジック研究家の方が指摘していますが、センターテアを行うとき、いくつか問題点が生じます。
「不自然さ」とか「無理」と表現してもいいかもしれない。
問題点がパフォーマンスにノイズを生じさせて不思議を減じていき、お客さんに「どうせどこかで見たんでしょ?」程度に思わせてしまう。

ですからまず、この問題点を明らかにして、しかるのちにそれらの問題点を一つ一つクリアーしていけば、「本物の」読心術足り得るはずなのです!
(昔の人間にできて、今の我々にできない、というのは悔しいじゃないですか)

というわけでセンターテアの問題点をあげていきます。

問題点①なぜ書くのか?

本当に頭のイメージを読み取ったり、心の声が聞こえる能力がない限り、マインドリーディングのパフォーマンスをやろうと思えば、具体的な情報を何らかの形で事前に手に入れる必要があります。
そこでほとんどの読心術のトリックではお客さんに何かを書かせ、それを秘かに読み取る、という方法がとられます。

でも本当に考えていることが読み取れるのなら、書く必要なんてないはずですよね?
だから今まで多くのマジシャン/メンタリストたちが「書く理由」を考えてきました。

理由①嘘をついていないか、あるいは忘れたときに、確認できるようにするため

ビレットやインプレッションデバイス(クリップボード等)を使うときは良い言い訳になるかもしれません。
でも、センターテアの場合、破いちゃったり燃やしたりするんで、この言い訳は使えないんですよね…。

理由②ハッキリとイメージできるようにするため

一見もっともらしく思えますが、そう思っているのは、マジシャン/メンタリストだけです(笑)。どんな人がいいお客さんからしてみても半信半疑がいいところで、大抵は「本当かよ?」ってところでしょう。
だって簡単なアルファベットや数桁の数字イメージするのに、書いたイメージなんて必要ありますか?
もし書く必要があるとするなら、複雑な図形や文字ってことになりませんか?
例えば「薔薇」「憂鬱」etc...の中から言葉を一つイメージして、っていうんなら使える理由かもしれません。
まあ個人的には、何回も書くならともかく、1回書いたくらいでイメージしやすくなる、とは思えませんが。

理由③霊に伝えるため

霊媒が使っていた「オリジナル」に近い理屈ですね。
霊媒には秘密にしておいて欲しいけど、霊には伝えたいから、私に秘密にして書いておいてくれ、ってことです。
(その後、霊媒が霊からのメッセージを受け取って、伝えるという段取り)

ついでに書いちゃうと、燃やして破る理由も「霊に伝えるため」ということで見事に辻褄が合う。
さすがオリジナル! 穴がない。

ところが大抵のマジシャン/メンタリストはこの霊という便利この上ない存在とは無縁の人が多いですから、このままでは使えない。
でも「他の人に見てもらうため」というアイディアは、工夫次第で説得力のある理由を作れるかもしれません。

問題点②なんで破るのか?

細かくツッこむなら「なんで四つ折りにしなきゃいけないのか?」「なんで渡さなきゃいけないのか?」ってところもあるんですが…。

「原案」によるならば、
「思念を読み取る、あるいは霊に伝えるためには燃やさなければいけない」
   ↓
「よく燃えるように、あるいは燃えている間に紙が開かないように破いておきたい」
   ↓
「だから四つ折りにして渡してくれ」

ということで、ここでも見事に辻褄があっている(オリジナルってそういうもんですが)。
「霊に伝える」はともかく、「炎を媒介にして思念を読み取る」というのは、マジシャン/メンタリストの文脈でも使えるかもしれません。
ところが火を使うことにはいくつか問題点があります。

・燃えるのに時間がかかる
・火が使える場所が少ない

実際にやったことがある方はわかると思いますが、ちぎった紙の束が燃えるのって、意外と時間がかかるのです。
19世期の暗闇にいる霊媒ならそれもOKかもしれませんが、このスピーディな現代においてこのテンポの悪さは致命的です。
また、最近はタバコが吸えるところが少なくなってきています。
火気厳禁のところもありますし、そうでなくても灰皿が置いていないところがほとんどです。
灰皿を持ち歩く、ということもできなくもないと思いますが、それだとせっかくこのトリックが持っている即席感が失われてしまう。
「炎の読心術」をするには、ちょっと世知辛い世の中なのです。

まとめ

・なぜ書かなきゃいけないのか?
・なぜ書いた紙をわざわざ破るのか?

この2点にクリアな理由をつけるだけでも、あなたのセンターテアは「ウケ」が違ってくる(はずです)。

さらに上記の本にも書いてありますが(初出はテッド・レズリーの『パラミラクル』)、いかに即席感を出せるかが、このトリックをミラクルに変えるかの秘訣です。
つまり用意もなく即席にやってくれと言われたときに、そこらへんにある道具を使って(という程で)やるのがいい、ということです。

その点でRan Pinkの「T-REX」は名刺を使うので使いやすいのではないかと思います。

問題点の解決方法は皆さんそれぞれ考えていただければと思いますが、言いぱなしもなんなので、近日中に私なりの回答をnoteにて発表してみたいと思います。

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