人生おやすみ期間の私の心を灯してくれたもの-音楽編-
どうして人はみんな心の中にあるものをろうそくとかキャンドルの炎に例えるんだろう。
そもそも何よりも大事な命のことを、ろうそくみたいに不安定で、強い風が吹いたらあっという間に消えてしまうようなものに例えているのは、おかしいんじゃないかって思うけど、
それくらい人の心は繊細で弱くて誰かと分け合っていかないと生きていけないものなんだろうな、とも思っている。
誰に教わったわけでもないのに、私も心の中のろうそくを感じたことがあった。
それは本当に一瞬であっけなくて、ふっと消えてしまったとき。
死にたいと思ったわけではないんだけれど、どうして生きるしか選択肢がないんだろうと思った。
どうしてこんなに辛いのに、何事もなかったかのように周りの時間は過ぎていくんだろう。
どうして時間は止まってくれないんだろう。
いつもと同じような顔をして明日が来ることが怖かった。
生きることしか選択肢に用意されていないことに怯えた。
なんて世界は冷たいんだろう。
そんなふうな思考になってしまって、気づけば部屋を真っ暗にしてうずくまって泣いていて、そしたら突然、心の中のろうそくがふっと消えたのがはっきりとわかった。
「ああもうだめだ」って思った。
当時の記憶は途切れ途切れでしかなくて、どうやって生き延びていたのか不思議。
誰かにご飯を作りにきてもらったことはないし、買い物をしてもらった覚えもないし、励ましに来てもらったのはたった一人、当時の元恋人だけで、よく生き延びていたなあと思う。
仕事を辞めてからの4カ月間、私は毎日、少しずつだけ生きていて、自分の心が動くのをひたすらに待って、ただじっとしていた。
その4カ月間、私を支えてくれていたものを、記録したいと思う。
きっと今もどこかで、誰にも助けてと言えない人が、暗い部屋で縮こまっているかもしれない。そんな人たちにいつか届いてほしいし、そうなる前に届いたら、細くても確かな命綱になるかもしれないし、届かないかもしれないけど。
ちょっとずつかけらを散りばめることは大切だと思うので。
音楽編
ハンバート ハンバート 「虎」
まだ会社に行っていたときだけど、たまたま見つけたPVを見て、今の自分の心境を表しすぎていて、涙が止まらなかった。
今思えば、もうこのときから私の心はサインを出していたのに、気づいてあげられなかったんだな。
ロザリーナ 「何になりたくて」
幾田りら 「Answer」
この歌は不安も絶望もちゃんと表しているのに、最終的にはまた歩き出していくことを約束してくれているような、「ああたぶんまた私は立ち上がっていくんだろうな」と思えるような、そういう小さな希望もしっかりと最後にそっと添えてくれたから、安心してどん底まで落ちることができた。そんな気持ちにしてくれた曲。
竹渕慶 「Torch」
会社を辞める前、最後のイベントのテーマ曲。
大好きだった人たちに、最終的には面倒を見切れないと、こんなにも冷たく手放されるんだなと、冷めた気持ちに包まれた日々。
それでもやっぱり嫌いにはなれなくて、悔しくて、絶対見返してやる、とも思ったし、会社にとって私という存在は、こんなにあっさりと見捨てられるものだったんだとも思って、怒りと悲しさと悔しさと無力感とごちゃ混ぜになっていた感情を、代わりにこの歌が全部を受け取ってくれたんだと思っている。
PEOPLE 1 「僕の心」
どう頑張ってもみんなみたいに普通になれない自分がもどかしいけど、たぶん普通になりたくないとも思ってて、でもやっぱり仲間はずれになる気分で悲しくて、もうどっちになりたいんだよ自分。みたいなそんなやるせなさと捻くれている気持ちが感じられてありがたかった。
クリープハイプ「二十九、三十」
妹が教えてくれた曲。
後半の「不規則な生活リズムで」「ちょっとズレるもっとズレる」「明日も早いな」という歌詞は、朝起きずに夜起きる生活を肯定してくれるようだった。
そんなだらしない自分の生活と同じように過ごしている人もいるかもしれないと思えたことに救われた。
大学までのお友達とはどんどん違う生活にズレてしまっている自分でも、夜眠れずに朝起きられない自分でも、ひとまず「前に進め」。
どんなに自堕落でも前には進むことを諦めなければそれでいいじゃないかと言われている気持ちになった。
ちょうどいいところになりたいと思い続けながらいつまで経っても辿り着けなくて、ずっと私は居場所を探しているんだろうな、と思う。
そんな気持ちを歌ってくれている気がする。
Aqua Timez「決意の朝に」
無職期間4カ月を過ぎて、生きるためのお金を稼がねばならないと強引に始めたバイト先に慣れ始めた頃。
アルバイト先に勤めるスタッフの人たちが、本当に本当に素敵な価値観を持っていて。
出勤し始めた頃の私は人間のことを信じていなかったし、トゲトゲしていて、怯えまくっていたと思う。
だから心を閉ざしていたし、誰かと距離を詰めるつもりのないコミュニケーションの取り方だったんじゃないかな。
そこで働くスタッフの人たちは、自分が大切にしていること、相手が大切にしていることを当たり前に尊重して過ごす人たち。
私の心の中のボロボロになってしまったろうそくを、
『まっすぐなろうそくにこだわらなくていいんだよ。』
『世の中にはいろんな形のろうそくの人がいるんだよ。』
『いいじゃん!自分が大切にしているもの、胸張って大事にしてこうよ!』
『私はこれが大切なんだ!素敵でしょ?』
こんなふうに何度火が消えてもまた灯してくれる人、ろうそくのろうまで分けてくれる人、一緒に固めてくれる人…
今まで積み上げてきたものが崩れ去っても、何回でも積み上げていけばいいんだよ。と教えてくれる人たちに囲まれていた。
私はもう一度、やっぱり人が好きなんだと気づくことができたし、まさにAqua Timezの歌詞のまま、もう一度誰かを信じて、心から笑うことができるようになったそんな場所にぴったりの曲。
私にとって音楽ってなんなんだろう
幼少期からいろんな音楽を聴かせてくれた母のおかげで、音楽だけは周りの意見に左右されずにずっと自分の好きを大切に育ててこれた気がしている。
音楽が好きと言っても、特定の好きな歌手がいるわけじゃないし、絶対音感があるわけでもないし、このメロディのここがいいんだ!とかこの歌詞の言い回しがすごくて…とかそんな突き詰めた好きではない。
だからもっと詳しい人、音楽好きと言える人と比べられてしまうと気が引ける。
なんだけど、思い出の曲に触れたとき、閉じ込められていた当時の感覚がぶわぁっと蘇るあの瞬間が何よりも大切。
自分だけのプレイリスト。自分だけのiPod。
音楽を聴くことと一緒に生きてくることができて本当によかった。
音楽を聴くことと好きな歌を歌うことだけは、いつまでもいつまでも私の味方でいてくれる。心の支えになる。
空っぽになった私が回復するまでの曲の紹介。
今どこかで明日が来ることが怖くなってしまった人がいたら、自分のお守りになる音楽に出会っていてほしいと願う。
きっとその人に合う音楽は人それぞれ違うものだから、本当にわずかな引っかかりにしかならないかもしれないけれど。
次は趣味編も準備しているので、お付き合いいただけたら幸いです。
誰かの心のろうそくを灯すことを願って🕯️