非行少女に餌付けをしてしまった話
『なんでもするから嫌いにならないで。』
非行少女は言った。
私は平成一桁世代である。
割と援助交際や窃盗、暴走、傷害など、それなりに周りにあった思春期だった。
リストカットをする子もいたし、自死を選んだ奴もいたさ。
でも少なくとも過食嘔吐やOD、そして性を売り物にする事は今ほど身近ではなかった。
規制意識が低下しているのか、ネットで知識が得やすいからなのか。
すっかり大人になった今はSMやストリップ、身体改造、刺青、ピアスなど、アングラなイベントに顔を出すことも多い。
そこで友達になった人たちはみんな大体苦しんで大人になった奴らである。
大人になってから、成人してから人生が始まった奴らも多い。
ただ話の種で面白いことには顔を突っ込むし、経験したい。
その中でパパ活ってどんな感じなのか?とか気になって
JKに5000円払って飯を奢った事もある。
結論としてはデートクラブの方が楽しい。
金があるならキャバクラの方が楽しい、、、
と、思った。
でも多分それはワンチャン狙ってないし恋愛になろうとハナから狙ってないからなのだろう。
そんな感じで時間を過ごすと『お兄さんなら格安でいいよ!』とかパパ活女子から誘われたりもする。
不思議なもんだ。
ま、そう。本題だ。
タトゥー界隈からの繋がりでSNSで妙に仲良くなったJKが居たのだ。
ネカマのおっさんじゃねーかと本気で最初は思ってたのだけれど、先の友人から『マジでJKだよw』と言われてマジかーとなっていた。
彼女は
発達障害!ADHD!自傷!OD!過食嘔吐!右翼!とまぁよくあるアホな子で、でも面白かった。
そしてまぁよく誰彼構わずセックスをして、
セックスを売って、とそんな感じっぽかった。
でも語彙は多く、拙いながらも思想を持っていて、
経験は極狭なのに価値観は割と広い。
そして彼女は絵や芸術が好きなのだ。
タイミングよく行きたい展覧会が被ったので
なんとなく会う気になったのだろうな。
待ち合わせ場所で彼女は小さい体で青いインナーカラーを揺らしながら
本を読んでいた。三島由紀夫だった。
三島由紀夫を、読める奴は頭が悪くはない。
そんな第一印象だった。
喫茶店に入りタバコを吸い、話をしていくうちに少しの違和感を感じはしたもののそんなに気にすることもなく過ごした。
そして展覧に行き、少しの安心をお互いに共有した頃に、
『何年生まれ?』と聞いてみたのだ。
うん。その沈黙の間はなんだと。
そしてまぁ少しの安心と信頼を共有して、
彼女は18時には帰っていった。
そして私が搾取や利用をしない事で安心したのだろう。
めっちゃ懐いてきたのだ。
尻尾振って私の周りを回る姿は
子犬の様なので呼び名をハチ公とした。
ハチ公はヤンキーではない、というかヤンキーになるほどの余裕がない、だな。
過干渉の両親が居て、『殴られて歯欠けた〜(笑)』って笑ってるような家庭環境。
門限が早いのもそのせい。
手癖は悪いし、『金もないからね〜手っ取り早く男の人から貰っちゃう〜』と。
そして2回目、会った時は上野で美術館に行ったね。
そしてハチ公は言いました。
『引かれたくないし嫌われたくないから言いたくないけど、勘づいてるから言うね。』
『私は10月で14歳になった。』
多動で手を揺らしながら、緊張して怒られるのを恐れてる目で
『なんでもするから、嫌わないで。』
と。
私は素直にこの世をぶち壊したくなった。
価値観の狭さや経験不足につけ混み、
搾取や利用する男達、お金を巻き上げる女達。
カツアゲをするヤンキー。
そしてお金を取り上げ、門限を厳しく外に出したくないからと学校にもあまり行かせないようにして殴る両親。
世の中が糞すぎる。14歳の子は大人に守られて社会に守られて、健やかに、普通に安全の中で我儘を言って育つべきじゃないのか。
こんな形で強制的に大人にするべきじゃない。
そんな綺麗事を並べたって誰も助けてくれないし、
家出をしたって家出先の大人が捕まるだけ。
ハチ公は好きな大人達にもしもの時、迷惑をかけたくないから泊まれない。泊まらない。
じゃあ彼女は誰が守ってやるのさ。
吐きそうになりながらも久しぶりに葛藤した。
大人になったら楽しい事で溢れてるから。
そして高校生になったらバイトもできる。
そしたら門限も緩くなるかもしれないし。
楽しい事をたくさんしよう。
早く死にたいと言う14歳の子に俺が言えるのはこのくらいで。
一歩、本気でハチ公の安全を守るためにした事と言えば児童相談所に連絡して知人として個人情報を開示したことだろう。
電話をした時に泣き笑いをしながら『本名は普通だな』なんて会話をしていた。
幸いにもハチ公の祖父は力不足ながらもハチ公の味方で、緊急避難先、のような形になっている。
『児相の方が安全なのかなぁ。殴られないなら行きたいな。でも携帯なくなったり外出出来ないのは死ぬな』
なんて14歳の子が悩む問題ではない。
しかし現実としてそういう事が起こってる。
あまりにも出来る事が少なすぎる。
法で守られてるからこそ、親権という絶大な物に従うしかない。
何か問題を起こすとハチ公の両親はすぐに病院に連れて行くそうで、
きっと『この子は障害があるから』という言い訳がほしいのだろう。
そこまで俯瞰してハチ公は見てる。
そして母親から愛されたい。でも死んでほしい。と渦巻いている。
そもそも14歳なんて馬鹿みたいに不安定だ。
普通に生きていたって不安定だ。
環境のせいにするのは嫌いだし、ハチ公の人生だけど、
これから、これからのハチ公の人生を少しでも幸せを感じれる方向に向かせてやりたいと思った私でした。
でもきっとどんどん年をとるにつれて成長していくから私なんて要らなくなる時が来たって何ら不思議ではない。
それはそれでいい。しかし、今はまだ見守らせて。
心の支えになってる。ってハチ公が言うから。
なら、まだ居てやるよ。ご飯くらいいつでも奢ってやるよ。
ただあの時の1年、2年は長い。
大人の1年と比べ物にならないくらい長い。
元触法少年、ホントに悪いことばっかしてるから捕まらないといいけど。
餌付けを始めてしまった野良猫は
人懐っこい愛に飢えた子犬でした。