Re:Re:ナンバーガール・シンドローム
———その日私はこの瞬間が来ることを心の底から待ち侘びていたのだが、これは夢なんじゃないかと何度も錯覚した———
私が初めてNUMBER GIRLというバンドを知ったのは、映画「害虫」(2002)を観た時。センセーショナルな内容と音楽が素晴らしくマッチされ、これまで自分が聴いてきた音楽とは明らかに違っていた。脳天を打ち砕かれ、とにかく衝撃だった。
と同時に既に解散しているバンドだということも知った。
そして忘れもしない2019年2月15日、私は昼食をとっていたBURGER KINGで飛び込んできたニュースに身震いした。
——NUMBER GIRL、再結成。
おおよそ全てのツアーを申し込んだが全て玉砕。自分のクジ運の無さに落胆したが、最後の最後に追加公演で当選。嬉しさのあまり咽び泣いた。
しかし、私が行くはずだった公演は無期限延期になり、それから約1年後に中止と発表され、幻の追加公演となってしまった。
私は一生、肉眼ではNUMBER GIRLは観られないのだと悲観した。
そんなある時、10月に行われるフェスに当選した。嬉しかったが、当選した喜びと、当選してしまったという戸惑い。世間はまだまだ宣言下であり、行って良いのだろうかと何度も自問自答した。だが、タイミング良く公演前月の9月中に2回のワクチン接種、公演1週間前には極力不要不急の外出をせず、外部と接触しないスケジュールを組めたことが、微々たる安心材料かもしれないが、前向きに行くことを決意できた。
ただ、開催されるのか中止になるのか、ギリギリまで不安は消えなかった。その不安は前日まで消えなかったため、私は当日にチケットを発券し、開演数分前に初めて自分の座席ナンバーを知った。
・・・アリーナだった。
後ろのほうではあるが、通路側の端の席だったため、人との距離が保てていた。空調がドライアイスの演出かと思うくらいガンガンに効いていた会場に私はようやく安堵した。
以下NUMBER GIRLセットリストである。
時間にしておおよそ50分ほど。今の私には充分過ぎるくらいのセトリである。私はこの瞬間が来ることを心の底から待ち侘びていたのだが、これは夢なんじゃないかと何度も錯覚した。頬を抓り、涙で目が霞んでしまった。自分がこの異常空間Zにいることに恍惚を覚えた。最後の『I don’t know』は、映画「害虫」の主題歌であり、私が初めてNUMBER GIRLを知った曲。初めて聴いてから10年以上経っているのかと思うと、何だか感慨深い。涙を堪えながら、瞬きをしないよう、1秒たりとも見逃さないよう、聴き逃さないよう全集中した。(※漫画未読、アニメも映画も未観賞だが流行りに乗って使ってみた)
NUMBER GIRLを聴いた興奮も冷めやらぬまま、大トリにASIAN KUNG-FU GENERATION 。ここまでNUMBER GIRLのことにしか触れて来なかったが、実は私的お目当ては特段この2組だったのである。アジカンを語る上でナンバガは欠かせないと言っても過言ではない。まさかNUMBER GIRLを聴いた後に『N.G.S』(ナンバーガールシンドローム)が聴けるとは、なんて日だ!
これこそが、くりかえされる諸行無常なり。