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サレ妻・アグレ妻 4

結局のところ、私よりも元ダンよりも 相手の女の方が 一枚上手だったのかもしれない。私がナイーブすぎたかもしれない。

独身の医者と巡り合い、結婚をするつもりでいた相手の女性に対して、私はひどく気の毒に思えてしまった。電話口で私たち二人が、元ダンをともに糾弾するという態勢になってしまったのだ。

悪いのは私の夫だと。
私もあなたも彼に騙されたと。

と言うことはつまりは
私は女に慰謝料を請求しないということである。

私が元ダンの首根っこをつかんで女性に会いに行ったときもまだ、私はそのことに気づいていなかった。女性に対してより、元ダンに対する怒りがあまりに強かったのである。

私たちは女性と彼女の自宅近くのカフェで落ち合うことになっていた。

私と元ダンは先に到着して、テーブルについて待った。
そこへ女はやって来た。
その恰好は私の目を点にさせた。

どう見ても普通の女性ではない。長身の彼女は、さらにそれを強調するかのようなピンヒールに超~ミニスカート。けばけばしくジャラジャラとブレスレットやらネックレスを付けて派手な化粧をしている。

よくこんな格好の女を連れて元ダンは街を歩けたな

私は呆れかえった。
しかしその時、さらに信じられないことが起こった。

向こうのテーブルの間をすり抜けてやってくる女を見ながら元ダンが言ったのである。


ほら、かっこいいでしょ?


自分の浮気女の自慢を妻である私にしたのである。

本当に信じられない野郎である。頭が異常だとしか思えない。
この一言で私は即断した。

離婚だ。こんな男は、見限ろう。

サレ妻は、カフェの椅子に座ったまま、心のうちだけで密かに、でも確固とアグレ妻と化していた。


そしてどういう結末になったかと言うと、
女が元ダンに慰謝料を請求してきたのである
それも
500万円!
開業医の足元を完全に見られている。

夫はおどおどと私を見て言った。

後でごちゃごちゃ言ってきたら困るから、この金額でいいよね。


自分で出費することなく、ただ父親のあとを継いだ開業医のひとり息子を甘くみてはいけない。(ま、元ダンだけかとは思うけれど)
私も働いて、開業医の元ダンには及びもつかないが、一応収入もあったし、元ダンが自分の口座から、自分の後始末として払いたいならそれでいいと、寛容な私はうなずいてしまった。ここぞというところで私は優しすぎる、と自分で思う。

慰謝料高すぎだろ❕

そしてなんだか納得がいかないのは、一番心理的に被害を被った私である。しかしのちに元ダンは

伊津が止めてくれてよかった。嘘が嘘を呼んで、収拾がつかなくなってきていたんだ。二人に見つかった時はマンションの上から飛び降りようかと思った。

と、しおらしいことを言ってきた。本当に情けない。それでも良識ある大人か。自分の嘘に首を絞められ自業自得である。

さすがの元ダンも私に悪いと思ったのか、私の銀行口座に600万円を振り込んできた。しかし私にはそんなお金より心よりの謝罪が必要であった。私が攻め立てた時に、一度 ごめん と言ったがそれだけである。

それもそのはずである。

元ダンは、浮気に対する反省は、かけらもなかったのである。

彼の反省は浮気をして私に嫌な思いをさせたことではなく、年を偽ったり、独身でもないのにそう言って女にウソをついたことであった。

そこ?!!!!!

そう、そこ。
そこであったことが7年後に判明するのである。

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