サレ妻・アグレ妻　３

サレ妻がアグレ妻と豹変するとき。アグレ妻とはアグレッシブな妻。これは怒り狂ったサレ妻が夫をとことん追い詰めるアグレ妻となった実話である。
あ、言い忘れたが、これは夫の、もとい、今や元ダンの一度目の浮気の話である。

受話器の向こうで着信音が鳴る。
三回目のコールでつながった。

もしもし

低い女の声である。
わたしはひと呼吸おいて言った。

OO美O　さんでいらっしゃいますか？

なるだけ丁寧に穏やかな声で。

相手は誰かわからず、当たり前だが、戸惑っている気配が漂う。
OOOOの妻の伊津と申します。
と私は続けた。
切られるかと思ったが、相手はそのまま受話器を持っている風である。
そして思いがけなく
どういうことですか？
と驚いた声が返って来たのだ。
そして
OOOOさんの？
と畳みかけるように聞いてくる。
これはもはや、切られるどころか、向こうが切らないでくれと言った様子である。

そうです。OOOOの妻です。あなたはうちの夫とお付き合いされてます？

相手が焦ると、こちらは対照的に落ち着いてくる。私はさらに穏やかな声でそう聞いた。

うそでしょう？！

相手はもう叫び声に近くなっている。

だって、独身だって言って。。。

とんでもない。子どもが男の子と女の子、二人います。一人は来春小学生に上がります。

やっぱり。元ダンは女をだまくらかしていたのだ。あの写真でうすうすはわかっていた。

ひとり暮らしなのに、母親が同じマンションに住んでいるからとか言って、私を来させないのが変だなと思ったのよね。

元ダンはそんな言い訳してたんだ。わたしは怒りが込み上げてくる。それにあんたも気づけよ、一人暮らしなら男は速攻連れ込むだろ？と心の中でなじる。

30歳とか言ってたけど、小学生の子供がいるならひょっとして？

30歳ですって？もう37です。

ひぇー

受話器を持ってお互いがのけぞった、と思う。
道理で髪がふさふさしてないといけないはずだ、あの野郎。

結婚しようって言われていたし。

私たちの間で離婚の話など全く出ていません。

ひぇ～とまた二人でのけぞったと思う。

どうやら相手はホステスで、前の同伴出勤の時に、この仕事を辞めろと言われたという。そして結婚しようと。

それって結婚詐欺ですね。

と私は思わず言った。
しかし後に母に言うと、
伊津、結婚詐欺とは、お金をせしめないと詐欺にはならないわよ
と冷静に指摘される。
確かにそうだ。
しかし私はそのときもう頭に血が上っていて、
仕事から戻った元ダンに大声で罵倒した

結婚詐欺！

私は今まで信じてきた自分の夫が、こんな風に誰にも彼にも嘘をつける人格であったことに打ちのめされていた。

しかし元ダンは、何のことやらわからず、のらりくらりしていている。逃げおおせるものかと私が女の名前を出し、電話で話したというと、元ダンの顔からは一瞬にして血の気が引いた。

嘘つき！よくこんな嘘をつけたね。

サレ妻はメリメリと音を立ててアグレ妻へと豹変する

私は元ダンに襲い掛かり、右頬を張り倒した。

元ダンはと言えば、仕返しをしてくるかと思いきや、余りのアグレ妻の様子に、頬に手を当てて震えている。

そしてこのあと起こった事で、アグレ妻はスーパーアグレ妻へとバージョンアップしていくこととなる。